八幡「やはり折本かおりがクラスメイトなのはまちがっている」

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

見たいSSカテゴリーは??

見たいSSカテゴリーは??
  • Add your answer
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 18:36:23.48 ID:+XbOlxFA0
注意

キャラ崩壊あり
ヒロインは折本

――――

【総武高校前】

八幡(3月。来月に控えた新生活の始まりに備え、皆が慌ただしく動き始める時期)

八幡(かく言う俺も先月の終わりごろに受験した総武高校の合格発表のためこうして足を運んでいるわけだが)

ワイワイ ガヤガヤ

八幡(やはりというか人が多い……。いや、受験した時に判ってたことですけどね)

八幡(悲喜こもごも入り混じる、同年代の少年少女らの姿を横目に、自分の受験番号を探す)

八幡「お、あった」

八幡(小さくガッツポーズ)

八幡(大きな感動はなく、ただただ合格したのだという事実が胸の内にすとんと落ちた)

八幡「……書類貰わねえと」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431509773


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 18:42:23.45 ID:+XbOlxFA0
* * *

八幡(受験票と引き換えに入学願書を受け取り、合格者向けの説明会に参加する)

八幡(説明会から解放されて校舎を後にしたら、既に時計の長針は正午を回っていた)

八幡(昼はどうするかな……やっぱサイゼか)

八幡(サイゼは最高。サイゼは至高である。千葉県民として、サイゼ発祥の地に住むものとしてこれは)

折本「――あれ、比企谷?」

八幡「――!?」

八幡(耳に飛び込んできたのは、聞き慣れた声)

八幡「お、折本……」ビクッ

折本「なんで声震えてんの? マジウケる」

八幡「あっはい、そっすね……」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 18:48:01.79 ID:+XbOlxFA0
折本「比企谷も総武受かったんだー」スッ

八幡(いたって普通に隣に立つ折本に、俺は内心穏やかではいられない)

八幡(いやだって俺この人に告白して玉砕してるわけですからね?)

八幡(しかも告白翌日にはクラス全員に知れ渡っているというおまけつきで)

八幡「……も、ってことは、お、折本も受かったのか」

折本「うん、そうそう! 受かると思ってなかったから、マジウケる!」

八幡(いや、ウケないから……ていうか間違っても落ちた奴の前でそんなこと言うなよ……)

折本「ていうか、比企谷も受けてたんだ。クラスメイトなのに知らなかった」

八幡(一応クラスメイトとして認識されていることに驚くが……俺も折本が総武を受けていたとは知らなかったのでお互い様だろう)

八幡(……え、てことはなに。俺の玉砕黒歴史が総武にも広まっちゃうわけ?)

折本「比企谷?」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 18:55:42.84 ID:+XbOlxFA0
八幡「あ、な、なんでもない……」

折本「ふーん」

八幡(自分から振っといてマジで興味なさそうだなこいつ……)

折本「比企谷さ、今暇?」

八幡「ま、まぁ……」

八幡(担任には総武に合格したことを電話で報告したので、今日は登校する必要はない)

折本「じゃあ、ご飯食べ行かない? あたしお腹空いちゃってさぁ」

八幡(え? なんなの? 自分で振った相手と飯食いに行くのが今時のJCのトレンドなの? 死体蹴りかなにか?)

八幡「いや……俺は……用事が……」

八幡(ないけど)

折本「じゃあ決まり~」

八幡(何も言ってないでしょ!? 聞いてた!?)

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 18:59:56.97 ID:+XbOlxFA0
折本「え? 比企谷に用事なんかなさそうじゃん。ウケる」

八幡「いやウケねーから……ていうか聞いててなおそれかよ……」

折本「……」

八幡(なんで黙るの? 俺もしかして口答えしちゃいけない感じでした? マジかよ確かにスクールカースト最下層だけど)

八幡「や、あの……」

折本「なーんだ、普通に受け答えできんじゃん。最初からやればいいのに」バシバシッ

八幡「い、いたっ、たたく、たたくなっ」

八幡(やめて! やめてよ! そういう何気ないスキンシップに騙されて心の傷を負う男子中学生は多いんですよ!?)

八幡(かく言う俺もそれで心の傷を……しかも目の前のこの折本かおりに作られてるんですがそれは……)

八幡(つーか自分のトラウマメーカーと食事にいくとかなんなの? マジで罰ゲームなの?)

折本「~♪」

八幡(こいつ……俺を振ったことを覚えているんだろうか……)

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 19:06:40.56 ID:+XbOlxFA0
折本「で、どこ行く?」

八幡「決めてないのかよ……」

折本「このあたしが比企谷のチョイスを採点してしんぜよう」フンス

八幡(俺はもう既にあなたに0点叩きだされてると思うんですがそれは……)

折本「で?」

八幡「あ、ああ……サイゼ、とか……」

折本「ふーん、サイゼ……」

八幡(だ、ダメなのか? ていうか俺、他に知らないだけなんですけどね!)

折本「ま、いっか。でも高校生になったらアウトだかんね。ウケる」

八幡「そっすか……」

八幡(今後折本とサイゼに行くことはなさそうだし、もう別にどうでもいいが)

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 19:12:25.48 ID:+XbOlxFA0
【サイゼ】

折本「いやー、それにしても比企谷と同じ高校に通うことになるとはねー……」

八幡「……本当ですね」

折本「なにそれ他人事過ぎじゃん。マジウケる」

八幡(こいついつもウケてんな……)

折本「ま、でもさ、おな中同士よろしくってことで」

八幡「……うっす」

折本「だっかっら……、なにそれっ、マジ、ウケる……あははははっ!」

八幡(ひぃ……だれか助けてぇ……)

折本「マジ、比企谷、キョドりすぎっ……! あははははっ!」

八幡(その原因の一端はあなたですからね!!!)

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 19:18:37.29 ID:+XbOlxFA0
折本「はぁー……笑った」

八幡(笑われた)

折本「あ、もうドリア来てんじゃん」

八幡(あなたがひとしきり笑ってる間にね!)

折本「はい、おしぼり」スッ

八幡「あ……おう……」

折本「なにそれ、ウケる」

八幡「……す、スプーン」スッ

折本「あ……ありがと、比企谷」

八幡「うっす……」

折本「~♪」

八幡(……俺が告白したことはまるですっかり頭の中から抜け落ちてしまっているかのような、そんな態度)

八幡(誰が心に壁を作っていようとも、一足に飛び越えてしまうような……)

八幡(折本かおりとは、そんな女子だと、俺は今にして思い出した……)

八幡(心が休まらねえ……)

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 19:24:20.42 ID:+XbOlxFA0
* * *

折本「はー。そろそろ出よっか」

八幡「おう……」

八幡(あれ? こういう時ってやっぱ男子が奢るもんなの? どうなの?)

八幡(でも俺と折本はただのクラスメイトなわけだしな)

八幡(仮に奢ると言ったとしても『は? 何比企谷彼氏気取りなの? ウケる』とかそういうことになるのでは)

八幡(ど、どうする俺……)

折本「比企谷」

八幡「ひゃ、ひゃいっ」

折本「ぷっ……ひゃいって……ひゃいって、なにそれマジウケるんだけど!」ケラケラ

八幡(こいつ……)

折本「会計は別でいいっしょ?」ピラッ

八幡「え、あ……」

折本「~♪」

八幡(……まあ、折本はごくごく当たり前のことを言っただけだよな、うん)

八幡(だが、どことなく負けた気分になるのは……気のせいだろうか)

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 19:35:08.14 ID:+XbOlxFA0
折本「よっし、受験も終わったし遊ぶかぁ……じゃ、比企谷! また学校で!」ビシッ

八幡「お、おう……」

折本「じゃあね」ヒラヒラ

八幡(何の含みもない笑顔で俺に手を振り、折本は駅の方向へと歩き出した)

八幡(……また、とは言うものの、学校で俺と折本が言葉を交わすことはないだろう)

八幡(そもそも一度俺は折本に振られてるわけで。普通に社交辞令だろ。知ってた)

八幡(ていうか社交辞令をくれるだけ有情なのかもしれない。なに? 俺は大きな快楽と一緒に死ぬの?)

八幡(あながち間違いじゃないかもしれん)

八幡「……はぁ」

八幡(なんだか疲れたな。……家で小町が待ってるだろう。帰ろう)

八幡(結局、その後中学の卒業式もつつがなく終わり、春休みも静かに終わった)

八幡(その間、俺と折本が会話を交わすことはなかった――)

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:04:43.21 ID:+XbOlxFA0
八幡(入学式当日がやってきた)

八幡(いつもよりよほど早く家を出てしまったのも、まあ、新生活に対する期待の表れと言いますか)

八幡(つまりそんな感じで、中学であれだけ痛い目を見たというのにやっぱり期待は捨てられずにいるのだろう)

八幡(難儀なものである)ギコギコ

折本「~♪」

八幡「げ」

八幡(ふと横に視線をやると、向こう岸の歩道を折本が歩いている姿が目に入った)

八幡(なに? なんであいつこんな朝早くから出歩いてるの? 新生活に期待しちゃってるわけ?)

八幡(まあ俺も人のことは言えない。気づかれないように行こう……)ギコギコ

折本「……あれ? 比企谷じゃん!」

八幡(一発でバレた。早くない!?)

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:16:13.73 ID:+XbOlxFA0
折本「おーい」ヒラヒラ

八幡(笑顔でこちらに手を振る折本の姿に、俺は何度心を揺さぶられればいいのだろうか)

八幡(あのですね折本さん、あなた私のことをお振りになっているわけですから……)

八幡(あんまりそういう無邪気に距離詰めるようなことされるとまた勘違いしちゃうんですよ!)

折本「気づいてないのかな?」

八幡(気づいてるよ! 独り言でけーな!)

折本「まったく……」

八幡(ちょうど俺たち二人は横断歩道に差し掛かった)

八幡(何をかぶつくさ言いながら折本が横断歩道を渡る姿が見え――)

八幡(――え、なに、こっちくんの? なんでよ。だからそういう態度が男子を惑わせ)

ブロロロロロ

折本「……え?」クルッ

八幡「――っ」ダッ

八幡(信号無視の自動車が近づいている。気づいた時、俺は自転車を投げ出し折本の方へ駆け出していた)

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:22:58.34 ID:+XbOlxFA0
ドンッ キキーッ バタンッ

八幡(初めに、手に衝撃。次いで脚、そして頭)

折本「ひ、比企谷――っ!?」

八幡「……無事か」

折本「う、うんっ! てか、それよりっ、救急車……」アタフタ

八幡「……」

八幡(脚が焼けるように痛いが……脚だけだ。……まあ、折本が無事なようならそれはそれでいい)

八幡(とっさの判断に間違いはなかったであろうことと――)

折本「ひ、比企谷っ、待ってて、すぐ呼ぶから……」グスッ

八幡(いつもケラケラ笑っている折本が不意に見せた涙目の姿に、奇妙な満足感を得て)

八幡(――俺は意識を手放した)

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:30:54.33 ID:+XbOlxFA0
* * *

【病院】

八幡(結果は骨折。全治3週間)

八幡(高校デビューを生贄に捧げ、俺は折本の高校生活スタートダッシュをアドバンス召喚したわけだ)

八幡(まあ、そう考えると意外と悪くないかもしれない。……いや悪いか。だが一番悪いのは信号無視した運転手である)

八幡(入院代やらなんやらかんやら貰えるものは貰ったので良いとするか……)

八幡(しかし病院のベッドってのはいい。インドア派の俺としては天国にも等しい)

八幡(小町に頼んで買ってきてもらったラノベの新刊を手に取り、読み始める)

折本「おっーす!」

八幡(……のはどうやら無理らしい。俺はため息を吐き、急な闖入者に視線をやった)

八幡「なんだよ折本……」

折本「なんだよって何? ウケる!」

八幡「いや、ウケねーから……」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:36:24.04 ID:+XbOlxFA0
八幡(俺が入院して以来、折本はこうやって毎日のように見舞いにやってくる)

八幡(意外とマメな奴だ。……罪悪感を覚えさせているのかもしれない。というか多分そうだろう)

八幡「……はぁ」

折本「人の顔見てため息つくとかマジウケないよ比企谷」

八幡「それは……すいません」

八幡(素直にごめんなさいしないとだめだよね)

折本「ま、いいや。はいこれ」ヒョイッ

八幡(自分の鞄を漁る折本が取りだしたのは、何枚かのプリント)

八幡(俺が出れない授業のノートを、こうしてコピーしてくれているのだ。これは素直にありがたい)

折本「高校の授業って難しいわ……はぁー」

八幡(言いながら、折本はベッド脇の椅子に腰掛ける)

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:41:19.82 ID:+XbOlxFA0
折本「molって何? ミリリットル?」

八幡「知らんがな……」

八幡(折本から受け取ったノートのコピーを流し見る)

八幡(あくまでも板書に忠実に書き写しただけのノートである。でも脇に教師の似顔絵が載ってるのはどうなんですかね)

八幡(決して上手ではないが下手とも言えない絶妙な出来具合の似顔絵の方に意識を持っていかれてしまいそうだ)

折本「でさー……って、比企谷聞いてる?」

八幡「お、おう……」

折本「聞いてなかったでしょ。ウケる!」

八幡「……そうですね」

八幡(ほんとこの子毎日いつでもウケてるな……)

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:48:00.87 ID:+XbOlxFA0
八幡「……なあ、折本」

折本「ん? なぁに?」

八幡(首かしげてきょとんとした顔でこっち見るのやめて! 勘違いしちゃうでしょ!?)

八幡(だが……それはよろしくないのだ。俺にとっても、いわんや折本にとっても)

八幡(こうして放課後折本が俺の病室を訪れることを……当たり前と思ってはいけないのだ)

八幡「……もう、見舞いに来てもらわなくても、いい」

折本「は?」

八幡「……だから、もう来なくていい」

折本「なにそれ、ウケないけど」

八幡「ウケたいわけじゃないからな……」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 20:55:59.78 ID:+XbOlxFA0
折本「じゃあ、なんなの?」

八幡「俺は別に……折本に恩を売りたいとか……」

八幡「気を引きたい、とか……そんなつもりで、やったわけじゃない……」

八幡「だから……折本に毎日、来てもらう義理もない」

八幡「……むしろ、有難迷惑まである」

折本「…………」

八幡(思ったより素直に言葉が出たのはありがたい話だった)

八幡(俺はしたいことをした……それだけだ。そこに、折本からの何がしかの感情が混じることはよろしくない)

八幡(俺の行為は、俺一人に降りかかる結果によって完結するのだ……)

折本「……比企谷、それはマジでウケない」

八幡「だから、俺は別にウケたいわk……」

折本「……」ナミダメ

八幡「け、じゃ……」

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 21:03:33.65 ID:+XbOlxFA0
八幡(そんなん卑怯ですやん)

折本「……ごめん」

八幡(それは……いったい何に対しての謝罪なのだろう)

八幡(ぽつりと呟いた折本はそれきり口を噤んだ)

八幡(したがって、俺もまたこれ以上二の句を継ぐことが出来なくなってしまった)

折本「……」

八幡「……」

折本「……」

八幡「……」

八幡(……結局、面会時間いっぱいまで、折本はそこにいた)

八幡(……明日以降、彼女が見舞いに来ないことを願おう)

八幡(高校生活の最初の最初。向こう3年の学校内での立場が決まりかける時期に、彼女が俺に対して少しでも時間を割くべきではないのだ)

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/13(水) 21:10:43.50 ID:+XbOlxFA0
【翌日】

折本「おっす、比企谷!」ビシィ

八幡「」

折本「なにその顔、ウケる!」ケラケラ

八幡(いや、ウケねーから……。人の話聞いてないの、この子?)

折本「イケるイケる!」

八幡「いや、何が……?」

折本「あ、そういえば比企谷ってあたしとクラス同じだよ。ウケるね」

八幡(え、なにそれ初耳なんですけど。全然ウケる要素ないんですけお)

八幡(過去の所業がつまびらかにされてしまうまである)

折本「はい、これ。今日のノート」ヒョイッ

八幡「あ、うっす……」ニギッ

八幡(……受け取ってしまった……昨日あんなこと言っといてこれかよ)

折本「ん、よかった」ボソッ

八幡(折本の微かな呟きは、聞かなかったことにした――)

75: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 20:59:26.98 ID:TK7Xhahu0
* * *

【比企谷家】

小町「お兄ちゃん、もうそろそろ出ないとダメなんじゃないのー?」

八幡「おー、そうだな……」

八幡(3週間の入院生活もとい最高の読書ライフも終わり、高校への初登校日がやってきた)

八幡(本来ならば自転車通学のところ、脚をやってしまっているので早めに家を出てバスに乗らないといかんのが辛いところだ)

八幡(我が両親に息子を車で送っていくとかいう選択肢はないらしい。ウケる)

八幡(いやウケないから)

76: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 21:04:31.07 ID:TK7Xhahu0
小町「何ぶつくさ言ってんの?」

八幡「いや、何でもない。ちょっと知り合いの口調が移った)

八幡(最終的に、折本は俺が退院するその日まで、ずっと見舞いにやってきた)

八幡(俺は読書していることが多かったので、二、三言葉を交わした後はお互い特に何も言わずに思い思いに過ごす感じだったが)

八幡(何も言われなかったことは喜ぶべきなのか。それとも単に俺のコミュ力が足りないのか。判断に迷うところではあった)

八幡(まあいい……。とにかく、これで俺と折本の縁も自然と解消される筈なのだ)

ガチャッ

八幡「……」

八幡(当たり前ながら、家の前で折本が待っているなどということはない)

八幡(わかっているはずなのに、それでも心のどこかでそんな期待をしてしまう自分に嫌気が差した)

八幡(マジウケる。……おいおいマジで移っちゃってるよ口癖どうすんのこれ)

77: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 21:09:49.23 ID:TK7Xhahu0
* * *

【総武高校】

担任「じゃあ、比企谷君、ついてきて」

八幡「はい」

八幡(ひいこら言いながら初登校を果たし、真っ先に職員室に向かう)

八幡(担任と軽い挨拶を交わし、朝礼に合わせて自分のクラスへ向かうこととなった)

八幡(……これってあれですよね、一人だけ朝礼であいさつするパターンですよね)

八幡(否が応でも目立つパターンだ。孤独を愛する俺には辛い仕打ちである)

八幡(しかも折本がいるんだよなぁ……)

78: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 21:16:04.20 ID:TK7Xhahu0
ガラッ

担任「はーい、席についてー」

八幡(高校になろうとも中学とその様相にさほど差があるわけでもないようだ)

八幡(朝礼前の教室は騒がしく、生徒たちは思い思いに会話を楽しんでいた)

八幡(うん、あれですね。もうグループとか出来始めてるよね、当たり前だね。八幡知ってた)

八幡(まあ俺はどこに属するつもりもない……もといどこに属せるはずもないのでいまさらなのだが)

八幡(折本はどうだろうか。なんとなく、そこだけ気になっていた)

担任「それじゃ、先週も話した通りだけど。今日からこのクラスに新たな仲間が加わります」

八幡(新たな仲間がボクでごめんね)

担任「比企谷君、挨拶して」

八幡「うっす……。えー、あー……」

八幡(クラス中の視線が俺を射抜く。やだ、そんな、見ないでっ! 恥ずかしいのおおおおお!)

80: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 21:24:40.17 ID:TK7Xhahu0
八幡(まあ、なに。大多数に注目されるってのに慣れてないわけですからね)

八幡(……手短に済まそう。そう決意した俺の視界に、見知った顔が映る)

折本「……」ニッコリ ヒラヒラ

八幡(笑顔でこちらに手を振る折本だ)

八幡(だからやめてってば! そういう感じのアクションされると『こいつもしかして……』とかそういう気分になっちゃうでしょ!?)

八幡(そもそも俺はそれで痛い目見てるわけだしさあ。もう勘違いはしないんだからねっ!)

八幡「えっと……比企谷八幡です。よろしく」ペコリ

八幡(まあ、これでいいだろ)

担任「え? それだけ?」

八幡「え……あ」

八幡(担任の無慈悲なツッコミに思わず固まってしまう)

折本「……」ケラケラ

八幡(ちら、と折本に視線をやると、無言で大爆笑していた。……あいつ)

84: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 21:29:19.61 ID:TK7Xhahu0
八幡「み、見ての通り骨折してるんで……よろしくっす」

八幡(何をよろしくすんだよ自分で言ってて訳が分からん)

折本「……」バンバン

八幡(折本はついに机を叩いて笑い始めている)

八幡(ねえそんなに笑うとこあった? ねえ? 前の子怯えてるでしょうが)

担任「えっと……挨拶ありがとう」

八幡(自分から振っといて扱いに困ったようなコメントやめてくれませんか先生……)

担任「それじゃあ比企谷君は……あそこ、折本さんの隣でよろしくね。同じ中学だったらしいし、やりやすいでしょう?」

八幡「」

八幡(多分、今の俺の顔は、鏡で見たらさぞや間抜け面に映ることだろう)

八幡(それだけ、不意打ちの一撃というものはダメージが大きいのである)

85: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 21:35:53.25 ID:TK7Xhahu0
八幡(……足取りは重い。まあ骨折してるし、多少はね? いやそれにしても重い)

八幡(折本との縁はまだまだ切れないらしい……)

八幡(自分の席に辿り着くと、隣の折本からありがたいお言葉を賜った)

折本「比企谷……キョドりすぎ……! ウケるっ……!」

八幡(ウケないから。ほんとこいついつでもウケてるな。逆にウケるから)

折本「脚骨折してるからよろしくとか何をよろしくすんのかわかんないし……っ」ケラケラ

八幡(それは俺も思った)

折本「はぁ……やっぱ面白いわ比企谷」

八幡「それはよかったですね」

八幡(僕の道化ぶりを楽しんでくれたようでよかったですよ)

折本「これから、よろしくね」ニッコリ

八幡「…………、ああ、おう」

八幡(……不意打ちの一撃。そのダメージは計り知れないものがある)

八幡(たとえ相手にそんな気はないのだということを知っていたとしても。それでも、笑顔と共に告げられる言葉のダメージは大きい)

87: ◆Pz./3MOCww 2015/05/14(木) 21:48:32.78 ID:TK7Xhahu0
八幡「……つーかなに、隣だったの」

折本「そうそう、ちょうどこの前席替えがあってさ」

八幡「ほーん……」

八幡(同じ中学の出身が隣同士になる。そういう偶然もあるもんかね)

折本「比企谷いなかったから勝手に隣にした」ケラケラ

八幡(は? 何言ってんのこの人)

折本「いない間に勝手に席決められてるとかウケる」

八幡(いや決めたのあなたですよね、自分でそう言ってましたもんね)

折本「……まあ、余ってたから引き取っただけなんだけどね」

八幡「そ、そっすか」

八幡(別に期待してたわけじゃないけど余ってたときましたか)

八幡(まあ顔も性格もわからん奴の扱いに困るのは当たり前か……。折本が引き取ってくれたのは僥倖ですらある)

八幡(ていうか俺を引き取ってくれるとか折本さんマジ有情。養ってもらいたい女性ランキングの上位に踊りだしつつある)

99: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 21:50:03.62 ID:K1nGBm4C0
>>1にキャラ崩壊ありって書いてるのに再現気にしすぎてるとかウケる
書き溜めないけどとりあえずやるとかマジウケる
100: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 21:54:47.76 ID:K1nGBm4C0
八幡(休み時間である)

八幡(俄かに活気づき始めた教室の雰囲気をよそに、俺は狸寝入り体制を万全に整える)

八幡(時期外れの初登場に加えて骨折という謎の特徴持ちの俺に注目が集まるのは必至)

八幡(ぼっちにとって質問責めは拷問に等しい。朝の自己紹介すらそれに近かったのにマジ無理ほんと無理)

八幡(というわけで俺は机に突っ伏して睡眠を取るフリに入るのであった)

八幡「……」

折本「……でさぁ」ケラケラ

「うんうん」

「えー? マジー?」

八幡(人の得る情報量の8割は視覚によるものというが)

八幡(視界が塞がれている今、俺の耳に鋭敏に飛び込んでくるのは折本の声だった。まあ、隣だし)

101: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 21:59:59.18 ID:K1nGBm4C0
八幡(ケラケラと楽しげに笑う声を耳にして、俺はどこかほっとしていた)

八幡(放課後毎日俺の見舞いに来ているせいで、高校生活のスタートに躓いてやいないかと……そんなことを考えていたから)

八幡(…………)

八幡(他人の心配をするより自分の心配をするべきだった。明らかに俺が躓いています本当にありがとうございました)

八幡(そもそも何様のつもりで俺はこんなことを考えているのだろう。阿呆か。滑稽にもほどがある)

八幡(……彼女に告白し、玉砕し、拭えぬトラウマを植え付けられたことを、俺は決して忘れているわけじゃない)

八幡(…………自分に言い聞かせるようにしながら、俺は強く目を瞑った)

八幡(意識を深く深く落そうとすればするだけ、八幡イヤーは折本の声を拾う。なにこれ意識が折本に向いてるの?)

102: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:04:56.08 ID:K1nGBm4C0
キーンコーンカーンコーン

八幡(次の授業開始を知らせるチャイムが、救いの鐘の音に思えた)

八幡(質問責めから逃れるための狸寝入りだったのに、折本の声ばかり拾って逆に辛い休み時間だ……)

八幡(……いや、待てよ。そもそも質問責めを受けると考えていたのは自意識過剰だったろうか)

八幡(なんかそんな気がする。マジウケる)

八幡「……」スクッ

折本「……比企谷」

八幡「……あ?」

折本「なんで寝たふりしてたの?」

八幡「え……なんでバレてんの……?」

折本「なんでって……中学でもそうだったじゃん。ウケる」ケラケラ

八幡(いやああ恥ずかしいのおおおお! 八幡恥ずかしいよおおおおおお!)

103: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:12:06.74 ID:K1nGBm4C0
* * *

キーンコーンカーンコーン

八幡(いつの間にか昼休みだ)

八幡(折本との会話はほぼゼロに等しい。まあそっちのがありがたいのだが)

八幡(……ああ、そうだ。昼飯買いに行かなくちゃいかんのか)

八幡「よっ、と……」

折本「あれ? 比企谷、どっか行くの?」

八幡「お、おう……購買に」

八幡(まさか着いてくるとか言わねえよな……)

折本「ふーん。そっか」

八幡「あ、はい」

八幡(明らかに自意識過剰です本当にありがとうございました)

八幡(やれやれ……行こ……)

104: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:18:27.25 ID:K1nGBm4C0
八幡(どうも俺のペースが崩れてる気がする……)

八幡(これはまずい。折本の口癖も移ってるしマジウケる。いやウケないから)

八幡(このセルフツッコミも何回目だ)

八幡(思いながら教室に戻ると、中学時代何度も見た光景に出くわしてしまった)

折本「……でね?」ケラケラ

相模「へぇ~」

結衣「そうなんだぁ」フムフム

八幡(俺の椅子に折本が陣取り、その周りに女子がたむろしている)

八幡(マジかよ……俺が居なくなった途端俺の椅子占拠ですか折本さん)

八幡(つーかお前自分の椅子開いてんじゃねえか! だからそういうのはダメだって言ってるでしょう!?)

八幡(女子としては何となく座っただけでも、男子は勘違いしちゃうものなんですよ!?)

八幡(……まぁ、俺はもうしないんだけどな!)

105: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:24:06.92 ID:K1nGBm4C0
八幡(仕方がない……もう少し校内を回って時間を潰すとするか……)

折本「あ」チラッ

八幡(教室を後にしようと踵を返したとき、出入り口に目を向けた折本と視線がかち合った)

折本「……」スクッ

八幡(そして椅子から立ち上がり、再び俺を見た。え? なに? 座っていいよって?)

八幡(でも折本さん、女子が駄弁ってる真ん中に突っ込むだけの勇気、俺は持ち合わせていないんですよねえ……)

八幡(軽く頭を下げ、もう一度踵を返すが……)

折本「ごめんごめん比企谷、退いたから座りなって」

八幡(いつの間にか背後に立っていた折本に機先を制されてしまった。瞬間移動か何かですか折本さんマジパないッスね)

106: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:34:00.39 ID:K1nGBm4C0
八幡「いや……流石にあそこに行くのは無理」

折本「なに? 照れてんの? ウケる」

八幡「いやウケないから。……つーか俺が行っても空気悪くするだけだろ」

八幡(これは真理である。目の腐った陰気な男子が女子三人の中に飛び込んでも見ろ)

八幡(何こいつキモっ、とか、そんな感想を抱かれて終わりだ。今まで楽しかったはずの女子トークも盛り下がること間違いなし)

八幡(五月蠅い女子の群れには比企谷菌を投入しよう! ……言ってて泣きたくなってきたな。やめよう)

折本「……そんなことは、ないと思うけど」

八幡「ある。……お前が一番わかってるだろ、中学同じだったんだから」

折本「……」

八幡(折本は無言である。勝ったッ! 第3部完!)

107: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:43:42.30 ID:K1nGBm4C0
八幡「じゃあな」クルッ

折本「待った」グイッ

八幡「ぐえっ」

八幡(襟をつかむな、襟を! 転びそうになっちゃったでしょ!?)

折本「その脚で歩き回るのは……よくないと思う」

八幡「それは正論だが……今転びそうになったぞ俺……」

折本「あ、ごめん……。でも、ほら、あの……騙されたと思ってさ」

八幡「それって結局事態が良い方向に転がる文句ではないよな……」

折本「でも、脚は……あたしにも責任が……」

八幡「ない」

折本「比企谷」

八幡「それはない。……ただまあ、脚に悪いのは確かだし、座るわ」

折本「うん……」

八幡(……やっぱり、気にしてたか)

八幡(だが……あの行為の結果を全て背負い込むのは俺だ。俺だけでなくてはならないのだ)

108: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:51:22.71 ID:K1nGBm4C0
相模「……あ、話終わった?」

結衣「えっと、比企谷君……だったよね?」

八幡(俺の席周辺でたむろしていたのは、活発そうな見た目の女子二人)

八幡(名前は知らない。ていうか俺このクラスの奴折本しか知らないな)

八幡「比企谷八幡です。どうも」ペコリ

折本「クラスメイトなのに他人行儀過ぎ……! マジウケる……!」プクク

八幡「お前ほんといつでもウケてるな……」

八幡(ついさっきまでのしおらしモードはどこいっちゃったんですかねぇ)

109: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 22:58:58.92 ID:K1nGBm4C0
結衣「あたし、由比ヶ浜結衣! よろしくね!」

八幡「あ、はい……」

八幡(何この人めっちゃグイグイ来るんですけお。たすてけ)

結衣「かおりんとおな中なんだよね?」

八幡「へぁ?」

折本「何その声。ウケる!」バシバシッ

八幡「た、叩くな……!」

結衣「あ、そっか。ほら、かおりんって、折本かおりだから、かおりん!」

八幡(なるほど、と合点がいくと同時、折本が渾名で呼び合う友人を得ていたことに改めて安堵する)

八幡(いや、だから……俺はいったい何様なんだ。マジウケる)

110: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 23:02:41.90 ID:K1nGBm4C0
結衣「比企谷君……は他人行儀だから、ハッチーって呼んでいいかな?」

八幡(え? なに? ハッチー? みなしごですか?)

折本「ハッチー! あっははは、結衣、それある!」グッ

結衣「あるかなっ?」

折本「それイケる!」グッ

八幡(え? なにがイケるんですか折本さん?)

相模「ふーん……? あぁ、ウチは相模南ね」ヒラヒラ

八幡「あぁ、はい……」

相模「……」チラッ

八幡(……どことなく、彼女の視線には良からぬ何かを感じてしまった。具体的に、何か、とは言えないのだけれども)

折本「でもっ、ハッチーとか……比企谷にしては可愛すぎでしょ……ウケる……っ!」ケラケラ

八幡(……しかしこいついつまで笑ってんだ。つーか比企谷にしてはってなに)

118: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 23:45:27.98 ID:K1nGBm4C0
* * *

八幡(やっと放課後だ)

八幡(これからこの脚を引きずって家に帰らねばならないと考えるとマジウケる)

八幡「いや、だからウケないから……」

折本「え?」チラッ

八幡「……え?」

八幡(口に出てたか……本格的にまずい)

折本「なに? 比企谷どしたの?」

八幡「いや、なんでもねえよ……」

折本「そっか」

八幡「おう……」

119: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 23:50:09.71 ID:K1nGBm4C0
八幡「……」スクッ

折本「比企谷ってバス通?」

八幡「まあ、今んとこは」

折本「そっか。……気を付けて」

八幡「…………」

八幡(……何の気はなさそうな……しかしそれでいてやや愁いを帯びた折本の表情に一瞬気を取られた)

八幡(やばいよ! やばいよ八幡! 最近のハッチーちょっとまずいよ!)

折本「……じゃね!」

八幡「あ、おう……」

八幡(手を振り教室を後にする折本の背を見送りつつ、俺は嘆息した)

八幡(……どうもペースを乱されっぱなしな気がしてならない)

120: ◆Pz./3MOCww 2015/05/15(金) 23:58:52.73 ID:K1nGBm4C0
八幡(あと二、三か月もすれば脚は治るだろうか)

八幡(治って夏とかマジウケる。体育を合法的にサボれるのはありがたいが……)

八幡(ってまた移ってるし。折本の見舞いがどれだけ尾を引いているんだか……)

八幡「帰ろう……」

八幡(……今のままでは不味いことになると、胸の内で警鐘を鳴らす俺がいた)

八幡(ここ最近の俺は明らかに、他者への……ひいては女子への警戒レベルを大幅に引き下げている)

八幡(……痛い目に遭ったにも拘らず、また同じ轍を踏もうとする者のなんと愚かしいことか……)

121: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 00:09:38.61 ID:iz4CvGnB0
* * *

【翌日】

八幡(心を入れ替えよう。……誰とも関わらず、孤高の誇りあるぼっちとして今を生きよう)

八幡(誰も傷つかず、俺はしがらみから解き放たれる、最高の生き方だ)

八幡(ぼっち最高。ぼっちは至高。そうと決まれば気分は好い)

八幡(……そんなことを考えてるうちにバスが来た)

プシュー

八幡「……」

八幡(段差登るのも結構一苦労だな……)

八幡(バスの乗客はそこまで多くない。適当な席に腰かけて……)

トントン

八幡(肩を叩かれてる気がするが気のせいだろう。バス発進したし、当たっちゃっただけだよね)

122: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 00:19:44.99 ID:iz4CvGnB0
トントン

八幡(あー、これ、この接触が連続してるのは明らかにわざとですね)

八幡(俺が前の席に座ったのがそんなに嫌なんですかね)

八幡(こうなったらハッチー108の特技のひとつ、狸寝入りを――)

折本「――比企谷、無視とかマジウケないんだけど?」ニュッ

八幡「」

折本「ぷっ、その顔ウケる!」

八幡(なんでお前がここにいるんだ……)

折本「っとと……おいっす、比企谷」ビシィ

八幡「……あ、ああ」

折本「なにそれ、挨拶?」ケラケラ

八幡(ああ……まったく。これは本当にウケないな……)

135: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 08:55:33.10 ID:iz4CvGnB0
八幡「……お前、なんで……」

折本「え? ああ、なんでバス通かって?」

八幡「……」

折本「どの通学方法が一番楽か試そうと思ってさぁ」

八幡「はぁ?」

折本「徒歩、バス通、チャリ通……一応全部経験しておこうと思って!」

八幡(素直に笑う折本の姿に、俺はこれ以上言葉を続けるのはやめにした)

八幡(そもそも俺はまともに話してないって? 事実ですね、そうですね)

136: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 09:01:10.67 ID:iz4CvGnB0
八幡(その論理は穴だらけ……むしろ穴しかないまである)

折本「~♪」

八幡(だが……あえて突っ込むこともないだろう……)

八幡(……明日以降はバスの時間をずらそう)

折本「あ、そうだ比企谷」

八幡「なんだ」

折本「……比企谷って、いつもこの時間に乗ってんの?」

八幡「……まぁ」

折本「そっか」

八幡(……嘘は言ってない。今日までは、この時間だ)

137: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 09:07:54.10 ID:iz4CvGnB0
八幡(それから特に会話はなく。俺はぼけーっと窓の外を見つめていた)

八幡(ゆったりと流れ去っていく景色をぼんやり眺めるのは好きだ)

キキーッ

八幡(バスが停留所で停まる。学校まではあと少しか……)

結衣「……あれ、かおりんとハッチーだ! やっはろー!」

八幡(……バスに乗ってきたのは、昨日会話した……えっと、誰だっけ……ゆいなんとかさん)

八幡(頭の中は軽そうだが体の一部が非常に重そうだという印象しかなかった)

八幡(ていうか俺のあだ名はもうハッチーで確定なの? マジウケる)

138: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 09:13:55.95 ID:iz4CvGnB0
折本「おいっす、結衣!」ビシィ

結衣「おいっす!」ビシィ

八幡(何でこの人たち敬礼してんの? 軍人か何かなの?)

八幡(ゆいなんとかさんは折本の席の側に立ち、世間話を始める構えらしかった)

八幡(……こういう、知り合いの何気ない会話を耳にしてしまうポジションは辛いものがあるよなあ)

八幡(意識は外に向けておこう)

結衣「それにしても、かおりんがバス通してるとは思わなかったよ」

折本「ちょっといろいろ試してみようと思ってさ~。チャリのが楽なのか、バスのが楽なのか」

結衣「あー、かおりんどっちも選べるもんね、いいなぁ」

折本「まね!」

八幡(ダメだ、意識しないようにすればするほど耳にくるわ。ハッチーイヤーは地獄耳)

139: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 09:20:43.26 ID:iz4CvGnB0
結衣「あ、それに。ハッチーもバス通だったんだね」

八幡(え、なに、俺に会話飛んでくるの? なんでだよ折本しっかり引き止めといてよ)

折本「比企谷?」

八幡「あ、おう……まあ、普段は、チャリだけど」

結衣「あ、ああ、そっか……ごめん」チラッ

八幡「いや、謝られることではないから……」

八幡(ちら、と俺の脚に目を向けたゆいなんとかさんが伏し目がちに頭を下げる)

八幡(そんなに気を使われると逆に厳しいからね! 覚えておいてね!)

折本「……」

八幡(あと折本、お前はなんでそんな沈んだ顔してんだ。いつもみたいにウケるとか言えよ……)

140: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 09:31:38.09 ID:iz4CvGnB0
結衣「何かあったら言ってね、ハッチー。できる範囲で力になるから」

八幡(何かあったら。できる範囲で。二重の予防線を張るゆいなんとかさんはゆるほわ系の雰囲気ながら策士なのかもしれない)

八幡(実際に面と向かって『手伝ってほしい』とは言い辛いし)

八幡(できる範囲でという予防線が逃げの余地を生む)

八幡(……だが、俺がその申し出に首肯することはない。いやまあ、首肯させてもらえない可能性もあるんだけど)

八幡「……まぁ、自分の不始末だから。大丈夫」

結衣「そ、そっか。ならいいんだけど……」

八幡(ゆいなんとかさんに言っている実、この言葉は折本に向けたものだ)

八幡(……病室での言葉は折本に届かなかったのだろうか)

折本「…………」

八幡(……だからどうして、そんな泣きそうな顔をするんだよ……俺が悪いみたいじゃねえか……あ、悪いか)

141: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 09:39:17.10 ID:iz4CvGnB0
結衣「か、かおりん?」

折本「あ、いや……ごめん。あはは、ぼけっとしてた。マジウケる……」

結衣「……?」

八幡「…………」

折本「……比企谷」

八幡「なんだよ……」

折本「ごめん」

八幡(それは何に対する謝罪なのか。……俺には折本の心を窺い知ることはできない)

八幡(ただ……泣きそうな顔でそんなことを言われると、心がざわつくのだけは確かだ)

八幡(男が女子の涙に弱いのは不変の真理である。それがたとえ、孤高のスーパーぼっちであったとしても)

八幡(折本、別に泣いてはいないけど)

147: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 12:33:04.90 ID:iz4CvGnB0
* * *

【教室】

八幡(バスでの会話も結局そこで途切れた)

八幡(俺が口を開くたびに会話途切れてる気がする)

八幡(その姿はさながら会話カッター八幡。なにそれちょっとかっこよくない?)

折本「……」

八幡(ただ、教室でもその沈黙は続いている)

八幡(折本はいつものようにウケる気分じゃないらしい。それは俺も同じだが)

八幡(……居づらい。本来沈黙とは俺がこよなく愛する状態ではなかったか)

148: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 12:41:12.53 ID:iz4CvGnB0
八幡(時刻は正午過ぎ。昼休み)

八幡(俺はイヤホンを装着し、腕を枕にハッチー108の特技が一、狸寝入りを敢行することに決めた)

八幡(耳が折本の声を拾わないから、目が折本の姿を拾おうとする。とくれば視覚情報をシャットアウトするほかない)

八幡(……いや、意識しすぎでしょ。思春期の中学生男子かよ)

八幡(…………このセルフツッコミは自分の心にクリーンヒットするな、やめよう)

八幡(自戒しなければならない。令呪をもって命ずる。自戒せよ、八幡)

相模「あ~、超お腹減った」

結衣「だねぇ」

八幡(……折本の側にゆいなんとかさんともう一人……誰だっけ? まあ、昨日の女子が集まってきたようだ)

八幡(……視界情報がない分、耳が超集音してるじゃないですか! 裏目裏目過ぎィ!)

149: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 12:58:27.21 ID:iz4CvGnB0
折本「ん、食べよっか」

結衣「だ、だね。うん……」

相模「かおりちゃん、なんか大人しくない? どうしたの?」

結衣「い、色々あるんじゃないかなぁ。ほら、将来のこととか考えるとさ!」

八幡(いやその話題の逸らし方は無理あるでしょゆいなんとかさん……努力は買うけど)

相模「ふーん? でも、ウチら高校入学したばっかなのに、将来のこと考えるのとかまだ早くない?」

八幡(いけません、いけませんよ……えーと、なんとかさん。高校入学はゴールではないのです)

八幡(大学入学もゴールではなく、同時に就職もゴールではない。てことはつまり人生にゴールはないの?)

八幡(終わりのないエンドレスワルツを踊り続けなきゃいけないの? マジかよぐう辛い)

折本「まぁ……色々考えるってのは、あるかなぁ」

相模「そうなんだ」

150: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 13:05:52.72 ID:iz4CvGnB0
折本「そ。……さ、食べよ食べよっ」

結衣「う、うん、そうだね。今日あたし、唐揚げあるから、おかず交換しよ?」

折本「唐揚げ! それイケる!」

相模「じゃあウチからは春巻きっと」

結衣「ありがとさがみん!」

折本「あたしはコロッケ」

相模「サンキューかおりちゃん」

八幡(折本の声が比較的明るくなったことにどこかほっとする俺がいて)

八幡(そんなことを考えてしまう自分がいることにほとほと嫌気がさした)

152: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 13:21:42.66 ID:iz4CvGnB0
八幡(女子の会話というものはとかく姦しい)

八幡(女が三人で姦しいという文字になるのは正鵠を射ている)

八幡(この字考えた奴スゲーなまじで。この文字が生み出された時から女子ってまるで進歩してないじゃん)

八幡(……生まれてこの方一歩も前に進んでないどころか後ろに下がっている俺が何かを言えた義理ではないけれど)

相模「そういえばさ、かおりちゃんって、この……ひき、ひき……ヒキタニ? とおな中だったんでしょ?」

結衣「あ」

折本「え? あ、あー、まあね」

八幡(話題がなくなったなら黙っていりゃいいものを。女子ってのはどうして話題を無理くり見つけてまで会話しようとするんですかね)

八幡(なに? 会話続けないと死んじゃう病にかかってるの? 止まると死んじゃうマグロの一種?)

八幡(……女子にマグロとか不味いな。やめよう)

153: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 13:27:06.92 ID:iz4CvGnB0
相模「昨日の様子だと結構親しげだったけど、どういう関係なの?」

結衣「さ、さがみん……」

相模「結衣ちゃんも気になるでしょ? ねぇねぇかおりちゃん」

折本「あ、あはは……」

八幡(俺の視界は闇に包まれているが、なんとかさんの見せる表情は容易に想像がつく)

八幡(あくまで興味本位で。自分の欲求を満たすためだけに。無邪気に問いかけるのだ)

八幡(俺と折本の背後関係を知らないし、ゆいなんとかさんみたいに俺と折本の気まずさを実際目の当たりにしたわけではないから)

八幡(彼女の態度、それ自体を責めるのはお門違いというものである)

154: ◆Pz./3MOCww 2015/05/16(土) 13:33:52.66 ID:iz4CvGnB0
八幡(……いや、むしろこれはありがたいことかもしれなかった)

八幡(俺の玉砕話をダシにすれば、折本はなんとかさんとの間に共通の話題を持つことが出来る)

八幡(人の不幸は蜜の味。他者の失敗談をあげつらい、笑いに昇華させるのは現役高校生が持つパッシブスキルだから)

八幡(折本となんとかさんの話が弾み、より仲が深まれば)

八幡(折本が俺に割く時間は減る。俺が孤独でいる時間は増える)

八幡(やるじゃないかなんとかさん。その方向性でどうですか)

Similar Posts:


PAGE TOP