八幡「一色が死んだって……?」」

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

見たいSSカテゴリーは??

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1: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:25:02.33 ID:0YPhPQxIo
その人の指がわたしの首にかかる。

苦しい。息ができない。

その人の目は快楽に酔っている。ああ、この人はわたしが憎いんじゃない。ただ、愉しんでいるんだ。

わたしを苦しめることを。

わたしの命を奪うことを。

その対象は別にわたしじゃなくてもいい。

誰でも、よかった。

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2: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:26:03.21 ID:0YPhPQxIo
――

――――

こんにちは。初っ端から殺されちゃったいろはちゃんです。

じゃあ何でいま話しているんだって? そんな細かいところは気にしないでくださいよ。

以下はこのお話を読むにあたっての注意点です。

グロあり。鬱あり。

とりあえずマイナスなものは全部盛り込んであります。

それでも大丈夫だという方のみ、お読みください。

それと、このお話はいくつかの『ルール』を破ったお話ですので、その辺もご了承ください。

それでは続きをどうぞ?♪

3: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:26:37.32 ID:0YPhPQxIo
――

――――

八幡「どういうことだよ……!?」

平塚「どうもこうも、そのままだ。この近くの公園で遺体が発見された」

結衣「そんな……いろはちゃんが……!」

八幡「冗談……ですか?」

平塚「そう言いたいところだが、事実だ。君たちも今日は解散してくれ。明日は恐らく休校だろうが、連絡を待つように」

八幡「ちょっと待ってください。そんなこと急に言われても……」

平塚「私たちも寝耳に水なんだ。このあとすぐに職員会議があるから、ここでゆっくりもしてられない」

八幡「そもそも一色はなんで……」

平塚「……殺された可能性が高い」

八幡「えっ?」

4: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:27:28.48 ID:0YPhPQxIo
平塚「遺体が発見されたのは今朝の話だ。警察が発表していないとは言え、話はもう学校にまで届いている」

八幡「発表していない……?」

平塚「遺体が酷く損傷していたから、身元の確認が今もまだできていないらしい。しかし一色の行方が昨晩から今に至るまでわかっていない。言いたいことはわかるな?」

結衣「そんしょー……?」

八幡「……聞かない方がいい。何となく想像できた」

平塚「とりあえずいま君たちに話せるのはこのくらいだ。比企谷、君は大丈夫だろうが、雪ノ下と由比ヶ浜は保護者に迎えに来てもらうように」

八幡「…………」

結衣「……なに、これ…………」

雪乃「…………」

5: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:27:55.36 ID:0YPhPQxIo
結衣「嘘……嘘だよね……」

八幡「…………」

結衣「ねぇヒッキー、嘘だって言ってよ!」

八幡「わりぃ……。俺も今は何も言えん。なにも、よく、わからないんだ」

結衣「……ごめん」

八幡「いや、由比ヶ浜が謝ることじゃない」

雪乃「…………」

6: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:28:22.45 ID:0YPhPQxIo
結衣「……ゆきのん?」

雪乃「な、なにかしら……?」

結衣「大丈夫……?」

八幡「…………」

雪乃「え、ええ……。少し気分が……ね。あんな話を唐突に聞かされたから……」

結衣「そう、だよね……」

八幡「今はとりあえず何も考えない方がいいだろ。ほら、さっさと部室出るぞ」

7: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:28:56.53 ID:0YPhPQxIo
結衣「いろはちゃんが……」

八幡「それ以上言うな。考えたって仕方ない」

結衣「だってこんなの突然すぎるよ! 人が死んじゃったんだよ!
? ついこの間まで一緒にいた人が!」

八幡「…………」

雪乃「…………」

八幡「雪ノ下は、どう思う?」

雪乃「……えっ?」

八幡「話を聞く限りだとまともな死に方だとは思えない。どうして一色がそんな……?」

雪乃「……わからないわ。そんな恨みを買うようなことがあったのかしら……」

8: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:29:23.47 ID:0YPhPQxIo
結衣「どうして二人ともそんなに冷静でいられるの……?」

八幡「……正直、実感がわかない」

結衣「……えっ?」

八幡「いきなり死んだなんて言われて、それで納得なんてできない。受け入れられない」

雪乃「……そうね、私も同じ感想だわ」

八幡「まだ身元の特定はできていないなら、一色が生きている可能性はまだ残っているわけだ。あいつがそう簡単に死ぬようなやつか?」

結衣「…………」

八幡「……まぁ、これもただの現実逃避なんだろうけどな」

9: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:29:49.33 ID:0YPhPQxIo
結衣「小町ちゃんは大丈夫なのかな……?」

八幡「……まぁ、熱出して寝込んでるしな。家から出ていないから安心だ」

結衣「えっ、そうなの?」

八幡「ああ、朝具合悪そうで熱測ったら普通に熱があった」

結衣「そうなんだ……。お大事に」

八幡「おう。……でも、ある意味タイミング良いのかもしれん」

結衣「どうして?」

八幡「まだ犯人は捕まってないんだろ。こんなタイミングで家の外に出せねぇよ」

結衣「あはは……」

雪乃「…………」

雪乃「…………」チラッ

八幡「?」

10: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:30:16.40 ID:0YPhPQxIo
数日後

ザワザワ

八幡「まぁ、こうなるよな」

葉山「比企谷」

八幡「ん……?」

葉山「君も聞いたか?」

八幡「……一応な」

葉山「そうか……」

八幡「…………」

葉山「君は」

八幡「?」

葉山「君は、誰が犯人だと思う?」

11: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:30:45.82 ID:0YPhPQxIo
八幡「……は?」

葉山「いろはを殺した犯人は、誰だと思う?」

八幡「そんなの俺が知るかよ……。てかまだ死んだとは限らないだろ」

葉山「俺だってそう思いたいさ。でも、状況的にそう考えざるを得ないだろ」

八幡「…………」

葉山「俺は、正直身内が犯人だと思う」

八幡「やめろ」

葉山「!」

八幡「探偵ごっこがしたいなら他でやれ。戸部とか」

葉山「別にそういうつもりじゃない」

12: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:32:08.11 ID:0YPhPQxIo
八幡「それに俺は別に一色のことなんてよく知らん。俺の知っていることはお前も知ってる」

葉山「俺はそうとは思わない。いろはが君にしか見せなかった側面はいくつもあるはずだ」

八幡「…………」

葉山「……まぁ、もしも何の関係もない異常者が犯人なら、こんなの杞憂だろうけど」

八幡「だから俺には関係な――」

葉山「俺の予想通りだったら、雪ノ下さんたちに危害が及ぶかもしれないんだぞ」

八幡「なんでそこであいつらの名前が出るんだよ」

葉山「……俺の仮説を聞いてくれないか?」

八幡「心当たりがあるのか?」

葉山「もし犯人が本当にイカれているなら俺には予測もできない。でもまだ俺に予測がつく範囲でのなら」

八幡「……聞くだけな」

13: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:33:06.99 ID:0YPhPQxIo
葉山「俺はまだ詳しい状況を知らない。だから動機から探るしかない」

八幡「まぁ妥当だな」

葉山「いろはが狙われた理由として考えられるのは、誰かから恨みを買ったというのが一番あり得そうだと思う」

八幡「それ以外はあまり考えられなさそうだしな」

葉山「それでだ。いろはが恨みを買った場合、それは誰のものだろう」

八幡「知るかよ、んなもん」

葉山「いや、君も知っている範囲で思いつくよ」

八幡「……?」

14: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:33:55.43 ID:0YPhPQxIo
葉山「君といろはが関わったことを思い返せば、そこまで難しいことじゃないはずだ」

八幡「俺と一色……、あっ」

葉山「わかったかい?」

八幡「クリスマス会か……?」

葉山「その通りだよ」

八幡「なんでそこでそれが出てくるんだよ」

葉山「あとから聞いたけど、奉仕部三人で海総の生徒会をコテンパンにしたらしいな」

八幡「その恨みで一色が? そして雪ノ下たちも?」

葉山「……そうだ」

八幡「バカバカしい。聞いた俺がバカだった」

15: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:34:49.77 ID:0YPhPQxIo
葉山「そこまでかい?」

八幡「そうだろ。その程度で人を殺すような奴が海総に入るわけがない」

葉山「頭の良さと異常性は必ずしも一致するとは限らない」

八幡「いや、完全に一致しないまでもある程度はそうだ。人殺しなんてすれば自分が損しかしないことはわかるはずだ」

葉山「それはまともな思考での話だ。……比企谷」

八幡「……なんだよ」

葉山「君は、聞いたのか? その、遺体の状態とかは」

八幡「一応、いろいろあれだったらしいってのは」

葉山「身元の確認が未だにできていないということは、それくらいに原型を留めないくらいに……」

八幡「…………」

葉山「そんな相手に常識が通用するわけがないと俺は思う」

16: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:35:21.24 ID:0YPhPQxIo
葉山「もう三つ、仮説がある。まずは、色恋沙汰だ」

八幡「お前、自分で言ってて恥ずかしくねぇの?」

葉山「俺は真面目だよ。君も知っての通りいろははモテる。男子から告白されるのもよくあったらしい」

八幡「……つまり、フラれた腹いせに?」

葉山「あるいは、その男子に気がある女子の嫉妬か」

八幡「あいつはいろんなところに敵がいるんだな……」

葉山「二つ目。この場合はどうしようもないが」

八幡「…………」

葉山「誰でもよかった場合だ」

17: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:35:57.06 ID:0YPhPQxIo
葉山「動機からでしか推測できない以上、これだとどうしようもない」

八幡「それなら誰でも犯人になり得るからな」

葉山「そして三つ目は……」

八幡「…………あっ」

葉山「どうかしたのか?」

八幡「いや、ちょっとな。その話はまた今度だ」

葉山「……あぁ、なるほど。そうだ。ヒキタニくん」

八幡「あ?」

葉山「君も、気をつけろよ」

八幡「俺なんかわざわざ殺す価値もねぇよ」スタスタ

葉山「……三つ目は、君に好意を抱いている人間が犯人の可能性だよ」ボソリ

18: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:36:25.04 ID:0YPhPQxIo
結衣「あ、あれ、ヒッキー? なんで? 隼人くんと話してたんじゃないの?」

八幡「なんかチラチラこっちの方を見てたろ。あんなことされたら気になるっつーの」

結衣「えっ!? べっ別にヒッキーのことなんか見てないし!」

八幡「……で、どうしたんだよ。いつもなら俺のことなんか待たないのに」

結衣「うん……ちょっとね……」

八幡「…………」

結衣「いろはちゃん、良い子だったのに。なんで……」

八幡「……さっさと帰って休め」

結衣「うん、そうする……」

八幡「それと、俺よりも雪ノ下にそういうことは話した方がいいぞ。あいつの方がよっぽどちゃんと応えるし」

19: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:36:59.36 ID:0YPhPQxIo
結衣「ゆきのんは……」

八幡「?」

結衣「ううん! なんでもない!」

八幡「お、おう……?」

結衣「じゃあまた明日ね、ありがと」

八幡「ああ」

八幡「……さて、俺も帰るか」

20: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:37:25.70 ID:0YPhPQxIo
八幡「…………」スタスタ

めぐり「あっ」

八幡「あっ」

めぐり「こんにちは」

八幡「うす」

めぐり「……一色さんのことは」

八幡「…………」

めぐり「そっか。……どうして、こんなことになっちゃったんだろうね」

八幡「…………」

めぐり「私、許せないよ……。犯人が……!」

めぐり「たとえ誰でも、許せない……!」ポロポロ

21: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:38:10.39 ID:0YPhPQxIo
八幡「……泣かないでください。城廻先輩」ナデナデ

めぐり「ひき……がやくん……?」ポロポロ

八幡「……はっ! あ、すいませんでした」サッ

めぐり「……ありがとう。少しだけ気が楽になった」

八幡「犯人……早く捕まるといいですね……」

めぐり「うん、本当に……」

雪乃「…………」

 

23: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:39:46.17 ID:0YPhPQxIo
次の日

八幡「嘘……だろ……?」

結衣「今度はめぐり先輩が……?」

平塚「まだ行方不明だ。しかし、一色の件を考えると……」

結衣「……だ」

結衣「……やだ」

八幡「由比ヶ浜?」

結衣「もう嫌だよこんなの! なんであたしの好きな人ばっかり!!」

平塚「落ち着け由比ヶ浜!」

結衣「どうして!? どうしてこんなことができるの!?」

雪乃「…………」

 

24: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:40:13.67 ID:0YPhPQxIo
――

――――

葉山「……生徒会長が二人とも、なんて」

八幡「なぜ俺のところに来る。事件のせいで下校になったんだから帰らせてくれよ」

葉山「その前に俺の話を聞いてくれないか?」

八幡「また探偵ごっこかよ……」

葉山「だが、君だっておかしいと思っているはずだ」

八幡「はっ?」

葉山「どうして、君の周りの人間が狙われているのか」

八幡「……!」

葉山「君は自称他称ボッチなんだろう? そんなそもそも人との関わりが少ない君の知り合いが二人も殺されたなんて、偶然だと思えるのか?」

25: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:40:42.09 ID:0YPhPQxIo
八幡「つまり、俺に近しい人間が狙われるってことか?」

八幡「……バカバカしい。そんなことをして何のメリットがある。結論ありきで過程を捻じ曲げるのはやめろ」

葉山「なら、他に何があると言うんだ」

八幡「順当に考えれば生徒会に恨みがある人間の犯行だ。逆にそれ以外考えられない」

葉山「本気で言っているのか?」

八幡「少なくともお前のよりは信憑性があるだろ。俺は帰る。じゃあな」

葉山「待てよ! 俺の考えが正しかったら――」

八幡「じゃあ俺のせいだと?」

葉山「!」

八幡「お前の言っていることはそういうことだ」

葉山「そんなつもりじゃ……」

八幡「そう聞こえんだよ。もしかしたらそうなのかもしれねぇ。それでも、言われて気分のいいものじゃない」

葉山「……すまない」

八幡「…………」

26: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:41:12.67 ID:0YPhPQxIo
八幡「…………」スタスタ

結衣「…………」

八幡「……何してんの?」

結衣「一人で、帰りたくなくて……」

八幡「なら雪ノ下と帰ればいいだろ。こんなとこで誰かを待ってるんじゃなくて」

結衣「あたしはヒッキーを待ってたんだよ」

八幡「は?」

結衣「あっ、いや、別にヒッキーがどうとかじゃなくてねっ!」アタフタ

八幡「い、いや、知ってるっつーの」

結衣「……じゃなくて、聞いてほしいことがあるの」

27: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:41:38.90 ID:0YPhPQxIo
結衣「先に言っておくけど、別にゆきのんのことが嫌いになったとかそういうわけじゃないんだ」

八幡「はぁ……」

結衣「ただ、最近のゆきのん、ちょっとこわい……」

八幡「こわい?」

結衣「うん。いろはちゃんのことがあってからずっと」

結衣「無口でいることが多くなって、話しかけてもどこかそっけなくて。何を考えているのかも全然わからなくなっちゃった」

結衣「嬉しいのか、悲しいのか、怒っているのか、そういうのが全然わかんない」

八幡「雪ノ下が……か」

28: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:42:08.49 ID:0YPhPQxIo
結衣「あたしが話してって言っても、誤魔化されだけで結局何も教えてくれない」

結衣「やっと仲良くなれたと思ったのに、こんなのってあんまりだよ……!」

八幡「…………」

結衣「それに、もしかしたら……」

八幡「?」

結衣「……ううん。でもね、ヒッキーはいつものヒッキーだから、なんか話してて落ち着くんだ」

結衣「みんな、変わっちゃったから。いつも通りのヒッキーを見てると嫌なことも忘れられて」

八幡「いつも通り……」

結衣「ヒッキー?」

八幡「俺としては結構ショックを受けているつもりだったからそんな風に言われるとは思ってなかった」

結衣「それはさすがにわかるよ。でも、大きくはブレないというか」

八幡「……かもな」

29: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:42:34.58 ID:0YPhPQxIo
――

――――

八幡「ただいまー」

八幡「って、誰もいないか」

八幡「いや、小町は家だっけ」

ガチャッ

八幡「……寝てるな」

バタン

八幡「……こうなると小町はもう家から出せねぇよな」

八幡「はぁ……」

八幡「……」

八幡「…………」

八幡「……一色が死んで、城廻先輩が行方不明」

八幡「なら次は……?」

30: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:43:01.50 ID:0YPhPQxIo
――

――――

ピリリリリ

八幡「……電話?」

八幡「てかいつのまに寝てたんだ俺は……」

ガチャッ

八幡「もしもし」

八幡「はい……。はい」

八幡「はい……。……はっ?」

八幡「いま、なんて……?」

八幡「……っ」

八幡「由比ヶ浜が……!?」

31: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:43:27.62 ID:0YPhPQxIo
――

――――

ピリリリリ

八幡「……もしもし、比企谷です」

葉山『葉山です』

八幡「……!?」

葉山『……すまない。こんなタイミングに』

八幡「ならわざわざ電話してくんじゃねぇよ……! 人が死んでるのに、悲しいとかそういうのはねぇのかよ……!」

葉山『……あのな、比企谷』

葉山『俺だって悲しいに決まってるだろ……!』

八幡「……!」

葉山『同じ部活の後輩に友人が殺されたんだぞ……。悲しいし、それ以上に悔しいんだ……』

八幡「…………」

32: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:44:04.66 ID:0YPhPQxIo
葉山『俺がもっと早く動けていれば、気付けていれば、結衣のことだって助けられたかもしれない……!』

葉山『何もできなかった自分に腹が立って仕方がない……!』

八幡「……なら、自分一人でやれよ。俺を巻き込むな」

葉山『いや、君の力は必要だ』

八幡「なんでだよ」

葉山『いろは、城廻先輩、そして結衣。この三人の共通点は主に君と面識のある女子だということだ』

八幡「…………」

葉山『つまり、この一連の事件は君の周りで起こっているも同然なんだ。だから、君の協力なしには犯人を見つけることはできない』

八幡「…………」

葉山『……ダメか?』

八幡「……わかった」

葉山『……!』

八幡「このままだと小町や戸塚が危ないかもしれないからな」

葉山『……相変わらずだな』クスッ

八幡「うっせーよ」

33: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:44:39.01 ID:0YPhPQxIo
葉山『親のつてで事件の状況を聞いた』

八幡「状況?」

葉山『そうだ。具体的な話の中身はしらなかったから。……ヒキタニくんはそういう、グロテスク系は苦手か?』

八幡「まぁ、それなりには耐性はあるが」

葉山『じゃあ……いや、それでも心して聞いてくれ』

葉山『城廻先輩はまだ行方不明だからわからないが、いろはと結衣の遺体は発見された』

葉山『まずはいろはから。……恐らくこれが一番ひどく、むごい』

葉山『公園に大きめのバケツが数個あり、そこにいくつかに分けられて入っていたそうだ』

八幡「バケツ……? 入っていた……?」

葉山『そう。そしてその中には固形といえるものがほとんど入っていなかった』

葉山『赤黒く変色したドロドロとした流体がその中には入っていた』

八幡「流体?」

葉山『皮膚や肉、内臓から骨に至るまで人間の身体一体分が全て粉々にすり潰されてバケツの中に入っていたんだ』

107: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/02(月) 01:43:07.08 ID:WcSwUry3o
>>34
訂正

八幡「うっ……」

葉山『大丈夫か? 俺も最初聞いた時は耐えきれずに吐いた』

八幡「……いや、そのまま続けてくれ」

葉山『……。それで、次は結衣の方だ。こっちはさっきほどではないが、それでもやはり酷い』

八幡「…………」

葉山『結衣の遺体は家の前にあって、外見上は損傷がなかったそうだ』

八幡「外見上は……?」

葉山『しかし結衣の遺体は女子高生にしてはあまりにも軽かったらしい』

八幡「どういうことだよ……!?」

葉山『身体の中身が抉り取られて、代わりに綿が詰められていた……と、資料には書いてあった』

八幡「なんだよそれ……、完全に頭がイカれてんじゃねぇか……っ」

葉山『……同感だ』

八幡「くそ……」

葉山『これで終わるとは思えない。比企谷、次の心当たりはないか?』

八幡「俺の知り合いでってことか……。材……はないな。相模……もないか。……っ!!」

葉山『どうした?』

八幡「……つか」

葉山『?』

八幡「戸塚だ!」

葉山『!』

八幡「次は……戸塚かもしれない……!」

35: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:45:56.12 ID:0YPhPQxIo
八幡『わり、切る!』プツッ

葉山「あっ」ツーツー

葉山「……まぁ、そう考えるのが自然か」

葉山「優美子たちにも言って……」

葉山「……いや、巻き込むわけにもいかないか」

葉山「それにまだ確証はないし、犯人が今日動くとも限らない」

プルルルル

葉山「!」

ガチャッ

葉山「もしもし、葉山です」

八幡『まずい! 携帯に出ないし家に電話したら外に出たらしい!』

葉山「なんでこんなタイミングで……!」

八幡『親も外に出すつもりはなくて、でも家にいないことにも気づいてなかったんだ!』

葉山「事件に巻き込まれた……!?」

八幡『葉山、今外に出られるか!?』

葉山「あ、ああ!」

八幡『……なぁ』

葉山「なんだ?」

八幡『一色が最初に見つかったのは、総武高の近くの公園だったよな?』

葉山「ああ、そうだな」

八幡『もしかしたらその近くにいる可能性はないか?』

36: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:46:22.42 ID:0YPhPQxIo
――

――――

葉山「…………」タッタッタッ

葉山「…………」タッタッタッ

葉山「比企谷、先に着いてたのか」

八幡「しっ」

葉山「! まさか――」

八幡「そのまさかだ」

葉山「……! 戸塚……、早く助け――」

八幡「待てよ」

葉山「はっ?」

八幡「戸塚が話をしてる。その相手を見てみろ」

葉山「話……?」

37: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/30(金) 10:46:50.33 ID:0YPhPQxIo
戸塚「……えっ?」

戸塚「どうして……」

戸塚「どうして……、なんで……」

??「…………!」

葉山「……っ!」

葉山「やはり、そうか……」

葉山「くそ……、そうじゃなければと何度も思ったが……」

八幡「あいつが……」

八幡「……犯人」

83: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:09:08.59 ID:E3XIjx/do
雪乃「…………」

戸塚「雪ノ下さんが……なんで……」

葉山「まずい! 雪ノ下さんを止めないと!」

八幡「だから待てって」ガシッ

葉山「なんでだ! 戸塚が危ないんだぞ!」

八幡「一色たちの殺され方を忘れたのかよ。今の雪ノ下は正常じゃねぇ。何をするかわかったもんじゃない」

葉山「そうだな……。でも――」

八幡「だからまずは俺が出て雪ノ下の注意を引く。即殺すようなことはしないはずだ」

八幡「注意が俺に行ったところでお前が後ろから羽交い締めするなりして雪ノ下を動けなくしてくれ」

葉山「……なるほど。たしかにその方が確実性がある」

八幡「……雪ノ下が動いた。俺は出る。葉山、あとは頼んだ」

葉山「わかった」

84: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:09:42.32 ID:E3XIjx/do
雪乃「戸塚くん。あなたは――」

八幡「そこまでだ、雪ノ下!」

雪乃「!」

戸塚「八幡!」

八幡「大丈夫か! 戸塚!?」

戸塚「う、うん……。でも、なんで雪ノ下さんが……?」

雪乃「……正直、信じられないわ」

雪乃「あなたが、こんな……」

雪乃「でも、それも……、キャッ!?」ガシッッ

葉山「動かないで、雪ノ下さん!」

雪乃「葉山くん!? どうしてあなたが……、はっ!」

八幡「よくやった、葉山」

雪乃「待って、葉山くん! これは――」

85: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:10:15.65 ID:E3XIjx/do

八幡「お前が馬鹿で、本当に助かった」

 

86: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:10:42.36 ID:E3XIjx/do
雪乃「キャッ……」バチッ

葉山「……えっ?」

八幡「…………」ブゥン、バチバチッ

葉山「ひき……がや……?」

八幡「ありがとな、葉山」スッ

葉山「ぐっ!」バチッ

八幡「……」

八幡「……ふぅ」

87: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:11:16.91 ID:E3XIjx/do
――

――――

雪乃「う……ん……ここは……」

八幡「目が覚めたか」

雪乃「……!」グッグッ

八幡「わりぃな。動けないように縄で縛らせてもらった」

雪乃「痛……っ」ズキッ

八幡「スタンガン使ったから当たったところは痛いぞ」

雪乃「……比企谷くん、あなたが…………」

八幡「正解。全員な」

雪乃「一色さんも、城廻さんも、……そして、由比ヶ浜さんも……!」ギリッ

八幡「いつから俺を疑ってたんだ?」

雪乃「最初から容疑者の一人ではあったわ。でも、あなたがこんなことするなんて……」

雪乃「……信じたく、なかった」

八幡「俺がもっと優しくて模範的な人間だと思っていたのか」

雪乃「いえ、あなたはまともではない。それでも一人間としての倫理観くらいは持っていると思っていた……」

雪乃「そう信じたかったのね……」

八幡「それがお前の敗因だ。雪ノ下」

88: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:11:57.54 ID:E3XIjx/do
雪乃「……どうして、こんなことを?」

八幡「これは俺の友達の知り合いの話だ」

八幡「ある所にとても純粋な男の子がいた。虫一匹殺せないくらいに優しい子がな」

八幡「その子はある日、親を強盗に無残に殺された。一生癒えない傷をその犯人から受けたんだ」

八幡「憎悪と後悔がその子から消えることはなかった。そうしてその子は狂気の中で生きるようになった」

八幡「復讐という執念に憑りつかれて」

八幡「……なんて話はどうだ、傑作だろ」

雪乃「それが……原因……? でも由比ヶ浜さんたちを殺す理由なんて……」

八幡「さぁてな。それにしても、見事に罠にハマってくれて面白かったぜ」

八幡「さすがのお前も、あの葉山が来るとは思わなかっただろ? お前を殺すための策に葉山が出てくるなんて」

八幡「俺が戸塚を呼び出したのをお前は盗み聞きしているつもりだったんだろうな」

雪乃「……それすらも見越していたの。そこから私はもうおびき寄せられていたわけね」

八幡「その通り。いつものお前で相手が俺じゃなかったらこんな単純な罠、気づいていたんだろうがな」

89: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:12:28.21 ID:E3XIjx/do
雪乃「……! そう言えば戸塚くんは!? 姿が見えないのだけれど」

八幡「ああ、もう死んだよ」

雪乃「死……!」

八幡「戸塚は良かったぞ。最後の最後まで俺がこんな人間だったのを信じられない様子でな。ひたすら叫ぶんだよ」

八幡「『八幡、帰ってきて。元に戻って』って」

八幡「そうやって泣き叫ぶのは、聞いていてかなりそそるものがあったぞ。おまえにも聞かせてやりたかったくらいだ」

雪乃「あなたは……!」

雪乃「あなたはどうしてそんなひどいことができるのっ!?」

八幡「ひどい、ねぇ」

雪乃「あなたのしていることなんて人として最低のことだわ!!」

90: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:13:27.83 ID:E3XIjx/do
八幡「まぁ。んなことどうだっていいんだけどな」

ピーンポーン

八幡「誰か来たのか」

雪乃「! すぅー……」

八幡「大声あげても構わんが叫んでも外には聞こえねぇぞ」

雪乃「えっ……」

八幡「いろいろやって相当な音じゃないと外に漏れないようにしてんだよ。んなことしても疲れるだけだ」

ガチャッ

八幡「じゃあ」

キィーバタン

雪乃「…………」

91: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:13:57.72 ID:E3XIjx/do
インターホンガチャッ

八幡「はい」

??『比企谷さんのお宅ですか? 少しお話を聞きたいのですが』

八幡「警察か何かですか?」

??『そこですぐに警察って単語が出てくるとはね』

八幡「……?」

??『じゃあね、比企谷くん。聞き方を変えるよ』

??『私の妹はまだ生きてる?』

92: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:16:08.04 ID:E3XIjx/do
八幡「……雪ノ下さん」

陽乃『そんなことは聞いてないよ。質問に答えなさい』

八幡「生きてるも何も、身体中穴だらけで息なんてしていませんよ」

陽乃『……っっ!』

八幡「嘘ですよ。まだ元気です」

陽乃『……』ホッ

八幡「それも嘘です」

陽乃『……比企谷くん。今ならまだ入院くらいで許してあげる。その代わりに雪乃ちゃんを解放しなさい』

八幡「ずいぶんと上からですね」

陽乃『うちが本気を出したら君の家なんてすぐにつぶせるんだよ。そうしたら君の親や妹も悲しむでしょ?』

八幡「……ええ」チラッ

八幡「…………」

八幡「……そうですね」

93: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:16:35.27 ID:E3XIjx/do
八幡「……雪ノ下さん」

陽乃『なに?』

八幡「雪ノ下さんは俺を信じずに疑ったんですね。その判断は正しいと思います」

八幡「でも、なのに一人で来たのはなぜですか?」

陽乃『そんなの、どうでもいいでしょ』

陽乃『それに一人で来ているわけではないから。今だってボディーガードがすぐに後ろにいるよ。インターホン越しの君には見えないだろうけどね』

94: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:17:02.63 ID:E3XIjx/do
八幡『……思い込みって怖いと思いませんか』

陽乃「……?」

八幡『本当に大切なものを見失わせてしまうんです』

陽乃「何を言って…」

ガチャッ

八幡「つまり――」

陽乃(玄関から外に……?)

八幡「――こういうことですよ」

バチンッ

陽乃「キャッ……!?」ドサッ

八幡「……一人で来てるのはバレバレでしたよ、雪ノ下さん」

八幡「あとは……」

95: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:20:11.92 ID:E3XIjx/do
「誰かーーーーーーっ!!!」

もう何度叫んだことだろう。この部屋の外からの反応は皆無と言ってもいい。比企谷くんの言う通り、外には声がもれないのかもしれない。

喉が枯れ、疲労で身体が重くなったのを感じ、ため息が漏れる。

これから私はどうなるのだろう。やはり他の人たちと同じように殺されてしまうのだろうか。

真っ赤な血で汚れた自分の姿が脳裏に浮かぶ。その凄惨な光景に思わず背筋が震えた。

嫌だ、死にたくない。こんなわけのわからない理由で、わけのわからない状況で死にたくない。まだ生きていたい。

「いや……こんなの、いや……」

自分の心を支配する絶望に耐えきれず嗚咽する。どうして、こんなことに……?

これが天罰だとしたらそれは何の罪の贖いなのだろう。そんな罰に値する悪行を私がしたというのだろうか。いや、そんなはずはない。

この世に神様なんていない。あるのは残酷な現実だけだ。そんなのわかっていても、それでも現状を呪わずにはいられなかった。

「誰か……助けて……」

その声に応える者はいない。この部屋には私一人しか……。

「……先輩」

96: ◆.6GznXWe75C2 2015/10/31(土) 22:21:02.63 ID:E3XIjx/do
「……えっ?」

その瞬間、自分の耳を疑った。もう二度と聞くことのないその声を、その言葉を耳にするなんて、信じられなかった。

「雪ノ下先輩、大丈夫ですか?」

「その声……、まさか……」

震える声で問う。ずっと前にこの世から去っていたと思っていた相手に。

「一色……さん……?」

「はい、助けに来ました」

顔の向きを変えるとそこには確かに、現総武高生徒会長、一色いろはの姿があった。

144: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:09:12.17 ID:ky/UrQ54o
「とりあえずこの縄を切りますね」

どこから取り出したのか小さなナイフで縄を切り始めた。よく見ると着ている制服がどこか薄く汚れているように見える。

「ん……ちょっと切りづらいな……」

「どうしてあなたがここに……。死んだのでは……?」

理解不能な存在に恐れ震える。一色さんはだって……、えっ?

「先輩はわたしを殺し損ねたんです。わたしを殺そうとして、そこから逃げてずっと隠れていたんです」

「でも死体は……」

「……雪ノ下先輩、あの人が何をしたのか知っていますか?」

「城廻先輩と由比ヶ浜さんと戸塚くんを……」

「……それだけではありません」

「えっ?」

「その前に三人、先輩は殺しているんです」

「……!?」

一色さんの衝撃的な一言に言葉を失った。

「それは、先輩の両親……」

「……そして、妹の小町さんです」

そう言うのと私を縛っていた縄が切れたのはほぼ同時だった。

145: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:10:48.69 ID:ky/UrQ54o
――

――――

「さてと、マッ缶は……」

喉の潤いを求めて冷蔵庫を開くと、目的の黄色い缶よりも先に人の顔が目に入った。

「相変わらず小町は可愛いな」

「ああ、本当に。世界一可愛い」

血が通わなくなって真っ白になった肌と生気のない表情がその美しさをさらに際立たせている。

冷たい頬にそっと触れる。そのやわらかさや新鮮さは生きていた時のそのままだ。

小町の身体は全てこの冷蔵庫の中に入っている。顔も、手も、足も。さすがにそのままでは入らないから切ってバラバラにしたのだが。

原型を留められないのはやるせなかったが、こうしないと腐ってもっと酷いことになるとある本に書いてあった。

146: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:11:19.99 ID:ky/UrQ54o
「嘘……あのシスコンを取ったら何も残らないような男が自分の妹を手にかけるなんて……」

「それはどうでしょうか?」

すると、一色さんが一言はさんだ。

「好きだから殺したい。先輩はそんな風に考えているように見えました」

「見えたって……」

「さっきも言いましたけど、わたし先輩に殺されかけたんです。でも、その時に感じたのは憎悪とかそういうのじゃなくて……」

言葉が止まる。意味が合致する言葉を探しているのだろう、と私は思った。

「……歪んだ、愛情?」

「……理解できないわね」

好きだから傷つける。好きだから命を奪う。そんなの、まともな考えじゃない。本当に好きならば大切に思うべきだ。

そんな考えは自らの破壊衝動を正当化したいだけで、子どものそれと変わらない。

「それに……」

「?」

「……いえ、なんでもありません」

147: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:11:53.46 ID:ky/UrQ54o
「話を戻しますね。三人分の死体を家の中に置いておけなかったから、母親のは外に処分したんです。それが誰なのかわからないくらいにグチャグチャにして」

処分、という言い方に苛立ちを覚えた。それではまるで人をモノのように扱っているのと同義だ。そこには歪んだ愛情すらも有り得ない。

「先輩の家から逃げた私がそのまま家に帰ったら、それは身元不明として発見されたでしょう。でも、ここで先輩にとって誤算が起きた」

「……あなたは家に帰らなかった」

「その通りです。わたしが行方不明になることによって、『一色いろは』は死んだことになった」

確かに。今にして考えてみれば比企谷くんは、一色さんが死んだ可能性よりも生きている可能性について言及していた。それは他の誰よりも一色さんが死んでいないことを知っていたからだったのだ。

でも、一つだけ理解できないことがある。

「……でも、どうしてそんなことを?」

「それは……」

そう聞くと視線を逸らし口ごもった。逃げられたのなら警察などに通報するなり、やるべきことはあったのに。

そうすれば、他の犠牲者も出ずに済んだかもしれないのに。

148: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:12:28.54 ID:ky/UrQ54o
「……少年法って知っていますよね」

「え、ええ……」

「いま捕まえられても何年かしたらまた先輩は刑務所、いえ、少年院ですね、そこから出てきてしまうかもしれません」

「自分の母親を粉々にするような人ですよ。出てきた後にまた狙われかねないじゃないですか」

ふと一色さんの手に目を移すと微かに震えているのに気づいた。その様子から次に口から出る言葉があまり良くないことが予想づいた。

「……だから、殺すんです」

時間が、止まる。

「わたしが、先輩を」

149: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:12:58.44 ID:ky/UrQ54o
思考が止まる。この後輩は何を言っているのだろう。

「とは言っても直接はやりませんよ。あくまでも私の手が汚れないように、先輩の自滅になるようにやります」

「……それ、本気で言っているのかしら」

「本気も本気です。だからこの数日間ずっと方法と機をうかがってたんです。……まさかわたしが逃げたのにも関わらずこんな短期間で他にも犠牲者が出るなんて思いもしませんでしたが」

狂っている。

この子も、比企谷くんほどではないにしろ、頭のどこかがおかしい。……それとも、比企谷くんに殺されかけたという経験が倫理観を取り払ってしまったのだろうか。

しかし助けてもらった私はそこに文句を言える立場ではない。それに、もうこんな狂気が渦巻く世界に関わりたくもない。

「……そう」

だから肯定とも否定とも取れる返事をした。早くこの場から逃げてしまいたかった。

150: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:13:46.18 ID:ky/UrQ54o
「今から先輩を殺しに行きます。雪ノ下先輩はいてもちょっとあれなんで、今のうちに逃げてください」

「逃げるってどうやって?」

「そこですよ」

一色さんは部屋の端を指す。そこには薄暗さのせいで気づかなかったが比企谷くんが使ったのとはまた別のドアがあった。

「そっちなら先輩はいませんから」

「あなたはこれから――」

「殺します。……邪魔、しないですよね?」

冗談でも口にできないようなことを平然と私に言う彼女の目は、ついさっき私に手をかけようとした彼の目によく似ていた。

「あなたがそのつもりなら、私はもう何も言わないわ」

151: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:14:17.85 ID:ky/UrQ54o
ドアを開くと、その先にあったのはただの廊下だった。灯りが一つしかついていないせいで、ここもさっきの部屋ほどではないが薄暗い。

すぐそこに彼がいるのではないだろうかという恐怖に駆られながら、出口を求める欲が足を進める。

角を曲がるとまたその先にはドアが見えた。しかし今までのとは違い向こう側が透けて見える代物で、ドアの向こう側からは白く明るい光が漏れていた。

「外……出られる……」

これでこの地獄から逃げられる。そう確信した私の歩みは加速し、安堵から笑みすらもれた。

ドアノブに手をかける。生きたい。逃げたい。その思いがノブを握る力を強めた。そして高鳴る鼓動を抑え込みながらドアを開いた。

「えっ?」

まず私の目に入り込んできた色は、赤だった。

赤。

赤。

――真っ赤な、血の色。

152: ◆.6GznXWe75C2 2015/11/11(水) 00:14:43.88 ID:ky/UrQ54o
――

――――

「一色、こんなところにいたのか。探したぞ」

「……先輩」

「一体今までどこにいたんだ?」

「別に先輩が知る必要はありませんよ」

「はっ?」

「だって先輩はこれから――」

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