雪乃「LINE?」結衣「そう!みんなでやろうよ!」

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

アンケートへの回答ありがとうございました。

今後のまとめ記事の参考にさせて頂きます。

要望等あればいつでもご連絡ください。

1: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/03(日) 22:18:48.46 ID:PBXTznL70


4: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/03(日) 22:43:04.59 ID:PBXTznL70

今回の話は前回みたいに軽い話じゃなく、地の文ありの真面目な話にする予定です。

今までのと違って書き溜めが途中までしかないせいで更新遅くなりそう。

多分僕の最後の作品になりそうだから完結までゆっくりとお付き合いよろしく。

 

8: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/03(日) 23:00:26.21 ID:PBXTznL70

人との繋がりとは空虚なものである。

本音を隠して言葉を交わし、表情を隠してLINEを使う。

本当の気持ちだけを言い続ければ人との関係などすぐに壊れてしまうだろう。だが、それを乗り越えてこその友情ではないのだろうか。

俺の周りの会話は一切の本音が感じられないものばかりだ。本音を語っているものなどほんの一握りすらいない。

それでも人は繋がりを求める。たとえ空虚なものだとしても、人と繋がることで自分が世界に参加しているのだと、必要とされているのだと思いこんで自分の存在を認めるために。

だから自宅で、駅のホームで、そして学校でLINEの通知が来るのを今か今かと待ちわびるのだ。

ならば、LINEなどせず学校でもおしゃべりなんてしないぼっこそが、自らの力だけで自己を確立できる強者ではないだろうか。

結論を言おう。

学校でくらいLINEの通知切りやがれ。うるせえんだよ。

 

9: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/03(日) 23:04:27.03 ID:PBXTznL70

いつもの通り暇な奉仕部。

ただでさえやることのない部活動にも関わらず、依頼者の来るわけもない冬休みにまで真面目に活動をしているのだから恐れ入る。

それにちゃんと出席する俺も大概だがな。

俺はこの暇な時間を有効活用して、冬休みの国語の課題である作文を書いている。

俺の作文の題名は『最近の携帯電話の利用状況について』だ。

ホントなんなの、あのLINEの通知。授業の度に一々切るなら最初から切っとけばいいのに。ピコンピコン鳴らしてウルトラマンかよ。

と、そんな風にLINEについて思考を巡らせていたまさにその時に、由比ヶ浜がLINEの話題を持ち出してきた。

俺は驚きのあまり、視線を雪ノ下と由比ヶ浜に向けてしまう。

由比ヶ浜は俺が視線を向けたのを会話に興味を持ったとでも勘違いしたのか、声をさきほどよりも大きくしながら俺たちに話しかけてきた。

結衣「ヒッキーもゆきのんもやろうよ!メールよりも手軽だし、楽しいよ!」

八幡「……けどLINEってあれだろ?個人情報だったり電話帳に登録してる番号立だったりが流出するんだろ?」

結衣「そ、それは前の話だし!ちゃんと何かをオフにすれば大丈夫ってネットで見たもん!」

雪乃「あなたは流出して困るほど電話番号を登録していないでしょう。なにせ登録させてくれる相手がいないのだから」

由比ヶ浜の安心できない説明のフォローかは分からないが、雪ノ下がさも俺の携帯電話が誰の電話番号も入っていないかのような口調で毒舌を浴びせてくる。

ばっかお前、この中にはあの小町と戸塚の電話番号が入ってるんだぞ!それだけでもう国宝級だろうが!

そんな思いを視線に込めてぶつけてみるが、雪ノ下はもはやこちらを見てすらいなかった。

由比ヶ浜の話を吟味しているのか白く細い指を顎に当て何かを考えている。

すげえな、こんなよくあるポーズでさえ雪ノ下がすると絵画みたいになるのか……。

 

10: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/03(日) 23:05:59.37 ID:PBXTznL70

雪乃「比企谷君、その気持ちの悪い視線を私に向けるのはやめてくれないかしら。セクハラよ」

八幡「見てるだけでセクハラとか自意識過剰すぎんだろ」

結衣「見てたことは否定しないんだ……」

由比ヶ浜が俺の言葉の揚げ足を取りに来る。なんだよお前、そんな頭の良いことできるのか。びっくりだよ。

雪乃「……その男の処遇についてはこの後話し合うとして」

八幡「ねえ、なんで見てただけで刑に処されなきゃならないの?この部室じゃお前が法律なの?」

雪乃「LINEを始めるというのはいいかもしれないわね」

八幡「俺の言葉は無視か……って、は?お前今LINEやるって言った?」

雪乃「正確には始めるのはいいかもしれない、よ。やるとは一言も言っていないわ。あなたは国語が唯一の取り柄なのだから、ちゃんとセリフから正しい意味を読み取りなさい」

八幡「国語だけが取り柄とか悲しすぎんだろ」

俺にだって他にもいいとこあるよ?例えばプリキュア全員言えるとか。あれ、これいいとこなの?

 

12: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/03(日) 23:16:42.61 ID:PBXTznL70

結衣「どうせならやろうよ!ゆきのん!」

雪ノ下がLINEを始めることに対して前向きな態度を見せたことで、由比ヶ浜がこれでもかというほど雪ノ下に迫っている。

物理的にも精神的にも圧され始めた雪ノ下を見かねて、俺は軽く助け船を出すことにした。

八幡「お前がLINEをやってみたがるなんて意外だな。なんか理由でもあるのか?」

雪乃「別に大した理由ではないわ。業務連絡をするのが簡単になるからというだけよ」

ああ……こいつなら考えそうなことだ。

俺は雪ノ下の電話番号とメアドを知らない。同じように雪ノ下も俺の電話番号とメアドを知らない。

必然的に俺が部活を私用で休んだり、逆に部活が中止になった時なんかは由比ヶ浜との連絡が命綱だ。だからここが上手くいかないと面倒なことになる。

休むことを伝えるタイミングを逃し雪ノ下にボロクソに言われたり、中止になったことを知らず部活があると思い込んで部室前で待ちぼうけをくらったりしてしまうのだ。

待ちぼうけは辛かった……。辛すぎて帰りに平塚先生をラーメンに誘っちゃったレベル。

誘われて喜んでる平塚先生可愛かったけどね。

 

19: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 21:13:08.27 ID:0m+TA8nn0

八幡「なるほどな……確かに業務連絡としてならいいかもしれん」

俺の言葉を聞いていよいよ由比ヶ浜のテンションがMAXを迎える。

ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ由比ヶ浜。そんな彼女のとある部位に目が吸い込まれてしまい気付いたら俺の心もぴょんぴょんしている。

雪乃「…………」

あ、やばい。ゴミを見るような目で見られてる。

俺は咳払いをしてから、ケータイを取り出して早速アプリをインストールする。

どうやら俺の心がぴょんぴょんしていたことを由比ヶ浜は気付いていなかったらしい。LINEを始めようとしている俺を見て純粋に喜んでいた。

なんだろうこの罪悪感……。

 

20: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 21:35:39.23 ID:0m+TA8nn0

八幡「インストール終わったぞ。これからなにすんの?アンインストール?」

結衣「早いよ!えっと……あ、あたしガラケーだからよく分かんない……」

えー、なにこのグダグダ感。出だしから躓くとかもう不安しかないんだけど。アンインストールしちゃだめなの?

八幡「ま、聞かなくても大体分かるけどな」

結衣「ならなんで聞いたし!ヒッキーキモい!」

八幡「キモくはないだろ……」

キモくないよね?あんまりキモいキモい言われると本気で不安になってくるだが……俺はイケメンなはず。よし。

心のバランスを取りながら適当に登録を終わらせていく。登録が終わって『ホーム画面』とやらにくると熊みたいな生き物が一人で座り込んでいた。

友だちがまだいないことを表すためにこのイラストを使用してるのは分かるが、まるで将来の自分を見ているようで複雑な気持ちになる。

 

21: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 21:40:52.22 ID:0m+TA8nn0

結衣「ゆきのんはどんな感じ?」

由比ヶ浜が視線を向けると、雪ノ下はすでにケータイをしまうところだった。

雪乃「終わったわ」

結衣「早っ!」

なんで登録ですらそんな高速でできるんだよ。お前だけ常時精神と時の部屋状態なの?クロックアップしてるの?

俺も少し急いで、『知り合いかも?』の欄から由比ヶ浜のアカウントを探す。

探すまでもなく、星やら丸やらで名前を装飾している由比ヶ浜のアカウントを見つけた。一瞬の躊躇ののち、俺は友だちに追加する。

ふう、任務終了だ。これで業務連絡も楽になる。

八幡「友だち申請しといたぞ。あとはお前のケータイでやるんだろ?」

結衣「うん!ゆきのんもあたしに申請してくれた?」

雪乃「してあるわよ」

結衣「やったー!じゃあ早速……?」

あれ、ケータイの画面を見た途端フリーズしちゃったけど大丈夫なのこの人。

彼女が何を考え込んでいるのかさっぱり分からないため、雪ノ下に視線を送る。が、こちらを一度見ただけで何のリアクションも起こさずまた由比ヶ浜へと視線を戻した。

あいつが何も言わないってことは、心当たりがないか俺と目を合わせたくないかのどちらかだな。ちなみに確率としては後者の方が圧倒的に高い。

 

23: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 21:45:24.90 ID:0m+TA8nn0

結衣「あのさ……この『HH』と『YY』っていうのがヒッキーとゆきのん?」

八幡「ああ」

雪乃「そうよ」

結衣「なんでイニシャルなの!?名前入れようよ!」

八幡「ネットに本名入れるとかあり得ないだろ」

今やどこから個人情報が漏れるか分からない時代なのだ。ならばどこにも個人情報など入れないのがもっとも手っ取り早い対策だろう。

雪ノ下も似たような理由でイニシャルにしたのだろうが、俺と同じことをしてしまったのがよほど悔しかったのか、先ほどからこちらをチラチラと睨みつけている。

まあ女の子にチラチラ見られて恐怖するのは慣れている。見られる度に俺のことを笑っているんじゃないかとよく恐怖したものだ。今でもするけど。

結衣「本名じゃなくていいからさ、せめて友達が見てすぐ分かるような名前にしようよ!」

八幡「俺友達いないから無理だわ」

雪乃「わ、私は……いないことはないけれど、その、と……友達は私のことだと分かってくれているから問題ないわ」

結衣「ゆきのん……」

はい、始まりました。奉仕部恒例ガチユリ。こうなるともう俺は背景に徹するしかない。

おい誰だ、お前はいつでも背景だろって言ったのは。あんまり本当のこと言うなよ。

結衣「って、そうじゃない!」

俺が背景と心を一つにしようとした瞬間、ガチユリからギリギリのところで逃げ出した由比ヶ浜が再び抗議の声を上げた。

結衣「ゆきのんが可愛くて忘れそうになったけど、そうじゃないよ!名前もっとまともなのにしようよ!」

 

24: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 21:58:42.44 ID:0m+TA8nn0

雪乃「そう言われても……」

結衣「あ、じゃあ『ヒッキー』と『ゆきのん』で登録しよう!」

八幡「仕方ない、本名で入れるか……」

雪乃「そうするしかないわね」

結衣「あ、あれ?」

困惑する由比ヶ浜を放置して、設定画面に移る。名前の変え方を教わったわけではないが、適当にポチポチしていくだけでなんとか変えることができた。

『HH』結構気に入ってたんだけどな……。ジャンプで長期間休載してそうな名前じゃん?

八幡「ほら。これでもういいだろ」

由比ヶ浜はケータイを見ながら満足げに頷き、幸せそうな笑顔を浮かべていた。

どうしてこいつはこんな小さなことでここまで笑顔になれるのだろうか。

彼女の純粋さをこうやって近くで見ると、自分が何者よりも汚れているのではないかという焦りに襲われる。

ケータイを乱暴にカバンに突っ込むことで気持ちを紛らわせる。どうやら二人とも俺の異変には気づいていないようだ。なんせいつも変だからな。

八幡「よし、これで部活も休みやすくなったな。帰るか」

結衣「まだ帰らないし!LINEって面白いゲームとかあったりするし、もっといろいろ教えたいの!」

八幡「……お前ガラケーだろうが」

結衣「うっ……」

痛いところを突かれてなにも言葉が出なくなっている由比ヶ浜を見てため息をつきながら、雪ノ下がゆっくりと口を開く。

 

25: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 22:01:11.01 ID:0m+TA8nn0

雪乃「比企谷君の思い通りになってしまうのはとても癪ではあるけれど、もういい時間になっているし、今日はここで終わりにしましょうか」

外を見れば朱色の光が空を彩っている。日没の早い時期とはいえ冬休みの活動ということを鑑みればちょうどいいはずだ。

八幡「なんでそんなことで癪に思っちゃうんだよ……まあ終わりなら先行くわ」

結衣「バイバーイ!帰ったらLINE見てね!」

雪乃「また明日」

二人からの別れの挨拶を背中で受けながらゆっくりとドアを閉めた。

廊下を歩き校舎を出る。季節は完全に冬。鮮やかな色に染め上げられた空を見ながら、白い息を吐き出してみる。

今まで誰とも関わらなかった俺が、奉仕部に入ってから随分と変わったと思う。今日LINEなんてものを始めたのがいい例だ。

昔の俺ならたとえ業務連絡のためだろうとこんなものを使うことを認めなかっただろう。理由なんてない、生理的に無理だと感じたはずだ。

けれど俺は今回それを許容した。これはいい変化なんだろうか。

きっとそれが分かるのはもっと色んなものを失って、色んなものを手に入れてからだと思う。

それならば、答えの出ない問題に頭を悩ますのはやめよう。

せめて今だけはこの時を。

 

29: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 22:29:39.31 ID:0m+TA8nn0

?こうして彼と彼女らは繋がっていく 終

次からようやくLINEが始まります。
LINEの会話は【】で示します。

今日はとりあえず短編(少し本編に関係する)を投下して終わり。

ちなみに短編の方は地の文ないです。

 

30: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 22:41:54.82 ID:0m+TA8nn0

文字化けしてた。

1こうして彼と彼女らは繋がっていく

です

 

31: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 22:48:41.33 ID:0m+TA8nn0

「へたれ」

八幡(あれから悩みを抱えながら俺は家まで帰宅した)

八幡(え?俺の変化について?ああ、そんなの別にどうでもいい。もっと重要なことがある)

八幡(『知り合いかも』の欄に戸塚と小町がいるんだがどうしよう……)

八幡(いやね?さっき奉仕部で見たときにそりゃ見つけてましたよ。すぐさま友だち登録しようと思いましたよ?)

八幡(しかし、申請して迷惑に思われたらと思うと……)

八幡(そんなことあるはずがないとは分かってる。だが俺の人間関係に対するトラウマがその不安を拭い去ることを許してくれない)

八幡(そんなこんなでもう数時間悩み続けている)

八幡「……腹減った」

八幡(もうそろそろ晩ご飯……悩むのは食べ終わってからでいいか。じやあそろそろ一階に……)

ピコン

八幡(……ああ、俺のケータイから鳴ったのか。初めてだから一瞬気づかなかったわ)

八幡(まあどうせ由比ヶ浜だろ。由比ヶ浜しか登録してないんだから……!?)

八幡(と、戸塚……だと……!?)

to:戸塚彩加

戸塚【やっはろー!】

戸塚【八幡もLINE始めたんだね!】

戸塚【嬉しくて友だちに追加しちゃったけど迷惑じゃなかったかな?】

八幡(……これが天使か)

八幡【そんなわけないだろ】

戸塚【良かった(´▽`)】

戸塚【LINEでもよろしくね!】

八幡【ああ、末永くよろしく】

 

32: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/04(月) 22:49:40.35 ID:0m+TA8nn0

今日はここまで。

おやすみー

 

38: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/05(火) 22:34:16.01 ID:C89s8Gfo0

翌朝。

凍てつくような寒さが俺とあいつとの絆を強くする。

オフにし忘れた目覚まし時計が俺からあいつを引きはがそうとするが、俺の強靭な意志の前では鳴り響く騒音ですらひれ伏すしかない。

俺とお前はずっと一緒だ……。

絶対に離さないぜ……布団。

小町「お兄ちゃん目覚まし時計早く止めて!うるさい!」

八幡「……はい」

相思相愛な俺と布団の絆は妹によっていともたやすく引き裂かれてしまった。

まあ俺は布団より小町を愛してるから特に問題はないんだが。

八幡「さみぃ……」

部活は午後からだから別に寝ててもいいのだが、俺は布団を少し押しのけなんとなくケータイへと手を伸ばした。

 

40: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/05(火) 22:51:38.88 ID:C89s8Gfo0

俺の初LINE、つまり戸塚とのLINEは戸塚が早く寝るタイプだったため十時前には終わってしまった。

一瞬、寝たふりされてメールを返してもらえなかったトラウマが脳裏をよぎったりもしたが、戸塚が早く寝るのはテニスの練習のためらしい。あまり遅くまで起きていると翌日の練習が辛いんだとか。

戸塚とのLINEが終わったのをきっかけに寝てしまったので、今日は睡眠時間がかなり長い。毎日悩まされている眠気も今日は影を見せない。

いつもより冴えた頭で戸塚がテニスをしている妄想をしようと思ったが、その前にケータイの画面に視線を写す。ロック画面にはLINEの通知が来ていた。

そこに表記されているのは由比ヶ浜のアカウント名。

おおー、これアイコンをスライドさせると直接アプリに行くのか。便利だな。

to:由比ヶ浜

由比ヶ浜【やっはろー!】

由比ヶ浜【LINEどう?楽しい?(≧∇≦)b】

由比ヶ浜【あれ?もしかして寝ちゃってる?(゜ロ゜;ノ)ノ】

由比ヶ浜【ヒッキー?】

由比ヶ浜【ホントは起きてるんでしょ?】

由比ヶ浜【ねえ】

由比ヶ浜【返してよ】

八幡「おおう……」

こえぇよ。あと怖い。

 

41: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/05(火) 23:04:12.08 ID:C89s8Gfo0

あいつ、なんでLINEだとこんなにヤンデレっぽくなってるの?

送られてきた時刻は大体10時半頃。こんなのリアルタイムで見てたら寝れなくなるわ!

まあこんなにヤンデレっぽくなったのは、あいつが絵文字を使ってないからだろう。

メールの時に俺が絵文字について文句ばっかり言ってたから、LINEじゃ自重したんだと思われる。

……それが原因だよね?素とかじゃないよね?

とりあえず【悪い、寝てた】とだけ返しておき、ケータイをベッドに置いた。

そのまま重い体を無理矢理動かして一階へと進んでゆく。ヤンデレヶ浜のせいで二度寝する気にもなれない。

長い一日になりそうだ……。

 

42: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/05(火) 23:13:23.31 ID:C89s8Gfo0

今日はここまでです。

fromとtoを間違えた気がしますがそこは目を瞑っておいてください。恥ずかしいから。
気になるようなら次から変えます。

あと短編の地の文が無い理由は、短編は軽い雰囲気でやりたいからです。
軽いのは台本形式の方が個人的にやりやすい。

 

49: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/06(水) 20:58:44.04 ID:41CZZVtm0

結衣「…………おはよ」

八幡「おう……」

学校に着くやいなや、下駄箱で急にローテンションな挨拶をされた。誰かと思い振り向けば、そこにいたのはヤンデレヶ浜こと由比ヶ浜結衣だった。

どんだけテンション低いんだよ。俺かよ。

ここで『どうした?』とでも聞けば由比ヶ浜が俺に不満をぶつけるのは確実だ。ならば平和的に済ませる方法は一つ。話をずらすことだけ。

八幡「そういえば──」

結衣「昨日!なんで返してくれなかったのさ!」

俺の華麗なる争い回避術はいともたやすく破られてしまう。

そうやって避けられる争いにぶつかっていくから戦争はなくならないんだよ。ちゃんと逃げようぜ、争いからも現実からも。

八幡「だから寝てたって返しただろ」

結衣「あのヒッキーがあんなに早く寝るはずないし!」

八幡「俺は意外と早寝するタイプなんだぞ」

俺のカミングアウトにポカンとした表情をする由比ヶ浜。そこまで驚くほどでもないだろ。

結衣「早く寝てるのにそんなに目が腐ってるの……?」

八幡「お前本当は俺のこと嫌いだろ……」

確かにこの腐った目は寝不足だと説明するのが一番しっくりくるとは思うが、だからってそこまで驚くなよ。傷ついちゃうだろうが。

結衣「べ、別に嫌いじゃないし……うー」

八幡「なに唸ってんだよ。でもまあ、昨日は確かにいつもよりは寝る時間が早かったな」

結衣「じゃ、じゃあ今日は……してくれる?」

……一瞬脳内がピンク色になりました。

こいつなんなの?上目遣いしながら男にそんなこと言うとかビッチなの?うっかり好きになっちゃったらどうするんだよ。

 

52: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/06(水) 21:32:06.98 ID:41CZZVtm0

八幡「ね、寝てなかったらな」

なんとか動揺を隠して答える。目が泳いでしまっているが、割といつものことなので不審がられたりはしないだろう。

結衣「ちゃんと起きててね!……でもなんで昨日は早く寝ちゃったの?」

八幡「LINEしてたら向こうが寝たから俺も寝たんだよ。やっぱ慣れないことすると疲れるな」

昨日戸塚とずっとしてたおかげでだいぶ慣れることはできた。多分今日由比ヶ浜からLINEが来ても疲れることなくできるだろう。

え?相手が戸塚なのに疲れるなんて俺らしくない?

ばっかお前、文字だけで意志疎通しようとすると誤解されたり嫌な気持ちにさせることが多いんだ。ソースは俺。

だからこそ戸塚みたいな天使とLINEをするときは、『本当にこの言葉を使っていいのか』とか『変な誤解されて嫌われないか』って不安を抱えながらやるからかなり疲れるんだよ!

相手が戸塚だからこそ疲れる……それがLINEの運命。

 

56: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/06(水) 22:11:03.54 ID:41CZZVtm0

……あれ、俺今けっこう長い間考え事してたぞ?なのになんで由比ヶ浜に声をかけられたりしないんだ?

疑問に思い意識を思考から現実へと引き戻す。

目の前にいる由比ヶ浜は、戸惑いとショックの入り混じったような目で俺のことを見ていた。

八幡「ど、どうした?」

思わず心配してしまった。それほどまでに由比ヶ浜の表情はいつもと違うものへとなっていたのだ。

俺の言葉を聞くやいなや、由比ヶ浜は俺から視線を逸らした。

結衣「あー、その……あ、あはは。ちょっと意外だったから」

八幡「? 何がだ?」

結衣「二人がそんなすぐにLINEし始めるなんて……」

八幡「別にそこまでじゃないと思うが」

戸塚と俺がLINEするのはそんなに変だろうか?しっくりくるとまではいかないが、さっきみたいな目をするほど意外とは思えない。

ん?俺こいつにLINEの相手が戸塚だって言ったっけ?

八幡「由比ヶ浜、お前もしかして──」

結衣「べ、別に気にしたりしてないから!二人が仲良くしてくれるのはあたしも嬉しいし?」

なんで疑問系なんだよ。つーか目を見て話せ。

なにか勘違いをされている気がしてならなったが、俺から逃げるように由比ヶ浜が部室へ行ってしまったためそれを確認することはできなかった。

また面倒なことになってる気が……。

 

61: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/07(木) 06:24:07.55 ID:PQldT76G0

短編一個だけ投下しますー

今日はもう更新しないかも

 

62: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/07(木) 06:26:12.33 ID:PQldT76G0

「ヘタレ2」

八幡(戸塚と友だちか……なんかもうそれだけで飯三杯くらいいけそうだ)

八幡(じゃあ残るは小町だけか)

八幡(……他にも何人か表示されてるのいるんだけど気にしない方がいいのか、これ)

八幡(これが電話番号の使い回しによる全く知らない人間だったならまだいいが)

八幡(なんで電話番号教えてない知り合いがいるんだよ……ストーカーかよ……)

八幡(……こいつらのことは一旦置いておこう)

八幡(小町どうするかな……)

八幡(別に申請したところで何もないだろ)

八幡(……いや待て)

八幡(小町くらいの年代の女子は普通なら反抗期真っ盛りだよな……?)

八幡(もし心の中で気持ち悪がられてたら……)

八幡(そそそそんなことないよな!小町的にポイント高いんだから大丈夫だよな!)

八幡(いや……でも……もしかしたら……きっと……)

ブツブツブツブツブツブツブツブツ……

ドアガチャッ

小町「お兄ちゃん、さっきLINEの友だち申請したから見といてねー」

八幡「こ゛ま゛ち゛いいいいいい!!!」

小町「え!?なに!なんで泣きながら迫ってくるの!?気持ち悪い!!お兄ちゃんが気持ち悪いよぉぉぉおおお!!」

 

66: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/07(木) 22:15:24.17 ID:sp6im/Td0

やっはろー!1です

本編の書き溜めが少なくて投下できないので、お詫びに短編一個投下しますー。

短編はこれからも書いていきたいのでリクエスト書いてもらえると嬉しいです。

 

70: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/07(木) 22:25:48.80 ID:sp6im/Td0

「画面の向こう」

平塚【久しぶりですね。冬休みなので会う機会がありませんでしたがお元気でしたか?常々不安だったので、あなたがこのように安否を確認できるツールを使い始めてくれてとても安心しています(笑)】

八幡【先生】

八幡【長いです】

平塚【そうですね(笑)】

平塚【メールのように一度に全てを送らなくていいんですから、長くする必要はないですよね(笑)】

平塚【それにしても、比企谷くんがLINEを始めるとは思いませんでした】

八幡【由比ヶ浜に誘われたんですよ】

平塚【なるほど】

平塚【比企谷くんは彼女に弱いですね(笑)】

八幡【そんなんじゃないです】

八幡【俺としては先生がLINEやってる方が意外でしたよ】

平塚【そうですか?】

八幡【だって先生がLINEやっても友だちになってくれる人いなさそうですから(笑)】

平塚【私の目の前にいなくて良かったですね】

八幡【そうですね、目の前にいたら確実にファーストブリット打ち込まれてるはずですし】

平塚【そうではなくて】

平塚【アラサーの泣き顔なんて見るはめにならず良かったですねという意味ですよ(笑)】

八幡【ごめんなさい!!】

八幡(それだけ打ち込んでから、俺は平塚先生をそっと友だちに追加しておいた)

八幡(早く!早く誰か貰ってあげて!じゃないと俺が友だちから夫にランクアップしちゃいそうだから!)

 

82: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 21:07:34.13 ID:a4vWzAoY0
言うの忘れた
本編投下しますー

 

81: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 20:47:10.97 ID:a4vWzAoY0

鼻腔をくすぐる紅茶の香りを楽しみながら、いつも通り各々がやりたいことをやっていた。

俺と雪ノ下は読書。由比ヶ浜はケータイをポチポチとしながら俺や雪ノ下をチラチラ見てくる。

だから人のことをチラチラ見るなよ。過去のトラウマが蘇っちゃうだろ。

八幡「はあ……どうした由比ヶ浜」

視線が気になって話しかけたのであって、別に不安そうにしてる由比ヶ浜が気になっちゃったからとかじゃないから。本当だから。

結衣「べ、別になんでもないし……」

八幡「…………」

問い詰めるべきか引くべきか。

俺と由比ヶ浜の距離感を掴めていないため、どちらを選択するべきか分からない。

適当に納得したようなことを言って引いてしまおうと決意したその矢先、雪ノ下が口を開いた。

雪乃「なにか言いたいことがあるのなら言いなさい。でないとその男はセクハラをやめないわよ」

八幡「なんで俺がセクハラしてるの前提なんだよ」

雪乃「いつも由比ヶ浜さんのことをジロジロ見ているじゃない」

結衣「ヒッキーマジきもい!」

なんで由比ヶ浜に質問しただけでここまで言われなきゃならないんだ。口開いただけで罵倒されるとかもはや人権侵害だろ。

八幡「俺の話は置いておくとして、今は由比ヶ浜の視線がうざったいって話だろ」

雪乃「うざったいとまでは言っていないけれど……」

雪ノ下の遠慮がちなフォローは逆効果だったのだろう。由比ヶ浜は髪をわしゃわしゃとさせて悩んでいた。

 

85: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 21:40:15.37 ID:+LqTPPeL0

しばらくそのままで放置しておくと、覚悟を決めたように大きく深呼吸をしてから小さい声で言った。

結衣「だってさ……あたしとのLINEには二人とも全然返してくれないのに……二人は仲良くLINEしてるんだもん。それがなんか……」

八幡「気に入らないのか?」

結衣「気に入らないっていうか……寂しい?みたいな」

つまり仲間外れにしないで、ってことか。気持ちは分かる。数年前までは俺もよく同じことを考えていた。

一人ぼっちは寂しいもんな……。

事態が飲み込めず困惑してる雪ノ下に代わり、俺が由比ヶ浜にフォローを入れる。

いやフォローっつうか、この早とちりさんの勘違いを解くだけなんだが。

八幡「由比ヶ浜、言っとくが俺は雪ノ下とLINEなんてしてないぞ」

結衣「……へ?」

八幡「俺がLINEしてたの戸塚だ。そもそも雪ノ下は友だちの中にすらいねえよ」

結衣「え……えぇ!?」

突然の大声に俺と雪ノ下の肩がびくりと震える。俺にその場面を見られたのが恥ずかしいのか、咳払いをしてから雪ノ下が由比ヶ浜に向けて話し始める。

雪乃「なぜ私がこの男とLINEなんてしなければならないのよ。どうしたらそんな勘違いをするのかしら」

結衣「だ、だってヒッキーの友だちってあたしとゆきのんだけだと思ってたから……それよりまだ友だちじゃないってどういうこと!?昨日申請したんじゃないの!?」

無事誤解は解けたが由比ヶ浜はまた違うところに食いついてきた。

少し顔が赤いところを見ると、もしかしたら自分が変な妄想をしてしまっていたことを誤魔化すために話題をすり替えたのかもしれない。

俺が言葉足らずだったのがこの状況を作り上げた一因であるっぽいし……俺もその話題に乗ってやるか。

 

87: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 22:20:53.20 ID:+LqTPPeL0

八幡「よく考えろ由比ヶ浜。LINEで友だちの欄に表示されるのはどんなやつだ?」

結衣「えーっと……電話番号を知ってる人?」

八幡「そうだ。ならお互いの電話番号を知らない俺達が友だちになってるわけないだろ」

俺達が電話番号を交換していないというのは全員が知っていることだと思っていたが、どうやら由比ヶ浜にとってこの常識は常識ではなかったらしい。呆然とした表情をしてからまた大声を出した。

結衣「ちょ、ちょっと!それLINE始めた意味ないじゃん!」

雪乃「それはそうなのだけれど……」

珍しく雪ノ下の歯切れが悪い。いつもは必要以上にスパッと言い切ってしまうというのに。むしろ俺に関しては言い斬られてるまである。

 

88: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 22:23:25.02 ID:+LqTPPeL0

結衣「電話番号交換とまでは言わないけど……せめてLINEくらいはちゃんとしようよー」

ただでさえ劣勢っぽかった雪ノ下に追い討ちをかけるかのように由比ヶ浜が抱きつき攻撃を開始する。

もうこうなれば雪ノ下に勝ち目はない。

雪乃「分かったわ。分かったから抱きつかないでちょうだい」

結衣「やったー!」

喜びを体全体で表現する由比ヶ浜に対し、雪ノ下は背筋の凍るような視線を俺に向けていた。

八幡「な、なんだよ……」

雪乃「……なんでもないわ。ほら、早くケータイを出しなさい」

命令口調で指示を出されるとやる気なくなるよね。だからもうケータイ出さなくていいんじゃね。

と思ったりもしたが、雪ノ下の放つ冬の北海道以上の冷気がそれを許さない。北海道行ったことないけど。

八幡「はあ……分かったよ」

カバンからケータイを取り出す。アプリを起動してなんかそれっぽいことを適当にやっているとQRコードを取る画面まで来た。

そこからまた適当に操作していくこと数分。慣れないことをしたせいで予想よりも時間をくったが、無事俺は雪ノ下と友だちになった。

雪ノ下と友だち……か。変な感じだな。

雪乃「これでいいかしら?」

結衣「うん!これで三人とも友だちだね!」

八幡「そうだな」

俺の友だちは雪ノ下、由比ヶ浜、戸塚、小町……あ、あと平塚先生の五人だ。多分現実の友達より多い気がする。

由比ヶ浜は俺とは比べものにならないほど多いのだろう。

そして雪ノ下はおそらく俺と由比ヶ浜の二人だけ。

だがしかし友だちの数が一体なんだというのだろう。

LINEでの繋がりなどただの偽りだ。そんなものの数で何が分かる。例えLINEでの友だちが100人を超えていたとしても、それが本物だとは──

おっと、これ以上考えるのはよそう。俺の黒歴史を掘り返してしまいそうだ。

今の俺にとって『本物』というのはNGワードだ。その単語を聞く度にあのシーンを思い出してしまい、無性に叫びたくなってしまう。

俺の思考が黒歴史の渦に飲み込まれるその直前、由比ヶ浜の元気すぎる声が響いた。

結衣「これでみんなでおしゃべりできるね!」

八幡「業務連絡で使うんだろ」

結衣「す、少しくらいならいいじゃん!」

八幡「……まあ、少しだけならな」

こうして俺たちは三人ともにLINEの友だちになった。

正直、どうせすぐ飽きてアプリを開くことすらしなくなるのだろうと思っていた。

けれどケータイの画面を見る雪ノ下の表情は、あまりにも儚げで。

それだけが俺の心に漠然とした予感を残していた。

 

91: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 23:03:31.43 ID:+LqTPPeL0

2今日も由比ヶ浜結衣はアホっている 終

正直少し寝てた。
今日は眠気がやばいからもう少し投下したら寝る……。

先に言っておく、おやすみなさい。

 

92: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 23:05:21.04 ID:+LqTPPeL0

八幡「んー……」

翌日の夜。俺は真っ暗なケータイの画面を見ながら一人でうなっていた。

俺は明日、部活を休まなければならない。

一応言っておくがサボタージュではなくちゃんとした用事である。具体的には冬期講習に行くためだ。

さて、たかだか冬休みの部活を休むだけでなぜこんなに悩んでいるのかといえば……それはずばり誰に業務連絡をすればいいか分からないからだ。

普通なら由比ヶ浜にすればいいのだが、俺の中に微かに眠っていた好奇心という名の悪魔がひそひそと囁きかけてくる。

もう一人の方にしろ、と。

どちらにしたところで結果は大して変わりはしない。結果が変わらないのならどちらでもいいが……うーむ。

こんな時奉仕部のグループでもあれば楽なんだろうが、雪ノ下も由比ヶ浜も忘れているようだし俺から言うのはなんとなく嫌だ。

八幡「……よし」

悩んでも答えが出ないなら運に任せればいい。

部屋の片隅に投げ捨てられていた通学用のカバンから財布を見つけ、その中にあるピカピカの十円玉を取り出す。

ポケモンで言っていた。迷ったときにはコイントスだと。

 

93: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/09(土) 23:10:44.64 ID:+LqTPPeL0

表が出たら雪ノ下、裏なら由比ヶ浜。

ちなみに知ってるやつも多いと思うが、十円玉の表は平等院鳳凰堂がある方だ。10の字がある方ではない。

八幡「よっと」

某超電磁砲を意識しながら親指で十円玉を弾く。くるくると回転しながら落ちてくる十円玉に向かって右手を出した。

ガッ。

八幡「痛っ」

タイミングが少し早かったせいで人差し指の付け根の骨にぶつかってから十円玉はあっけなく床に落下してしまった。

痛いよう……地味に痛い……あとダサい……。

憎しみを込めて十円玉を睨みつける。床に落ちている十円玉が出した結果は……。

八幡「表……」

つまり雪ノ下だ。

もう一回やり直そうかとも思ったが、それをするといよいよ答えを出せなくなる気がする。

俺はもはや半ばヤケになりながらアプリを呼び出し、雪ノ下とのトーク画面に移動した。

つい先日友だち登録したばかりのあいつとは、もちろん一度もLINEを使った会話などしていない。今もトーク画面には空の背景しか映し出されていない。

空って言っても敗北の二文字が存在しない方じゃなくてスカイの方な。

今からその空の背景に会話を打ち込んでいかなきゃならんわけだが……。

なんて打てばいい?

あえてフレンドリーに『よう雪乃』とでも打つか?いやそんなことしたら別の物語が始まってしまいそうだ。

なら『やっはろー』か?いやそれもない。それを使ったら負けだ。何と勝負してるのかは知らん。

……普通にいくか。

 

96: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/10(日) 08:47:16.52 ID:qV20A/sP0

to:雪ノ下

八幡【よう】 既読10:40

雪乃【なにかしら】 10:41

思ってたより返信早いな……。どうせ由比ヶ浜とLINEしてたからケータイが手元にあっただけなんだろうが。

それでもこいつのことだし、既読スルーとか普通にしてくると思ってたわ。

なんにせよ、早く反応してくれる分には文句はない。俺はできるだけ簡潔に明日部活を休む旨を書き込んだ。

雪乃【そう】

雪乃【分かったわ】

八幡【やけにあっさり了承してくれるんだな】

八幡【少し意外だ】

雪乃【引き留めてもらいたかったのかしら、ナル谷君】

八幡【お前のことだから文句の一つでも言うんじゃないかと思っただけだ】

八幡【あとナル谷はやめろ】

八幡【トラウマが蘇る】

返事を打ち込んでから気づく。あれ、話ずれてきてないか?

俺としては休むことを伝えたら即寝る予定だったため、普通に会話している自分に少し驚いてしまう。

上手く会話を終わらせる方法を模索しようとするが、ちょうどそのタイミングで雪ノ下から返答が来てしまった。

 

99: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/10(日) 09:16:57.42 ID:qV20A/sP0

雪乃【安心なさい】

雪乃【文句なら明後日言うわ】

雪乃【それとあなたの数え切れないトラウマなんて一々気にして会話なんてしていたら】

雪乃【何も言えなくなってしまうわよ】

八幡【なんで明後日言っちゃうんだよ】

八幡【そのまま忘れて言わないままでいいだろ】

八幡【あと俺のトラウマは会話を禁止しなきゃいけないほど大量には無い】

八幡【無いよな?】

……あー、やばい。これやばいフラグだ。

由比ヶ浜とメールをしている時にたまにある現象が今も起きている。

それは会話の分裂だ。

 

101: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/10(日) 09:19:19.26 ID:qV20A/sP0

一つの話題が二つに、二つの話題が三つへと増えていく。その結果、どれか一つの会話を終わらせても他の会話が残っているせいで、会話そのものを終わらせることができなくなってしまう。

最悪、残った会話がまた分裂し始めるしな。

終わりの見えない会話は『ちょっと親に呼ばれたわー』とか『もう寝るー』とか適当な理由をつけて強制終了してしまうのが得策だ。

しかしそれは逆に言えば、理由を見つけなければ終わらせられないということになる。

俺の場合はメールを無視して返信しないという、リア充どもには真似できない方法で終わらしているわけだが。

次の日由比ヶ浜が凄く不機嫌になるからあんまり乱用はできないけどな。

雪乃【あなたに言いたいことなんて忘れてもまた出てきてしまうのよ】

雪乃【そんなものを我慢していたら体に悪影響を及ぼしてしまうわ】

雪乃【あなたのトラウマの数なんて知らないわ】

……この会話終わらせられるのか……?

不安で目が覚めてしまった俺は、そのままもう少しだけ雪ノ下との会話を続けることにした。

もう少し、あとちょっとだけ、キリのいいところまで。

やめようと思えばいつでもやめられたと思う。だが俺は様々な理由を見つけて誤魔化し、気づけば時間を忘れてLINEに没頭してしまっていた。

 

102: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/10(日) 09:23:13.89 ID:qV20A/sP0

八幡「ふああ……今何時だ……」

誰に話しかけているわけでもないのに、つい思考がそのまま口から出てしまう。この癖そろそろどうにかしなければなるまい。

俺は時間を確認するために雪ノ下からの返答に目を向ける。

雪乃【そうね、あなたと同等に扱うなんてマントヒヒに失礼だったわ】3:56

……我ながらなんの話をしてるんだとは思う。だがそれ以上に気にしなければならないことを発見した。

3時?いやあと少ししたら4時じゃねえか。通りで眠いわけだ。

八幡【おい雪ノ下】

八幡【時間見てみろ】

今までポンポンとリズム良く来ていた返答が少しの間来なくなる。

いつもより数テンポ遅れて来た返答はとてもシンプルでかつ分かりやすいものだった。

雪乃【おやすみなさい】

それを合図に雪ノ下とのLINE、別名未知との遭遇は終わりを告げた。

計約五時間。お互いにその間一度も時間を見ずに没頭してしまっていた。

すごいな、まるでラブラブのカップルみたいだ。

八幡「……はっ」

自分の考えをつい鼻で笑ってしまう。こんなことを考えてしまうあたり、よっぽど眠いんだろうな俺。

寝るか。

電気を消してベッドの上に横になる。途端にすさまじい眠気に襲われるが、その前に一つやるべきことを忘れていた。

八幡【おやすみ】

既読がつかないことを確認してから、俺は睡魔に従って深い眠りに落ちていった。

 

105: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/10(日) 09:37:41.56 ID:qV20A/sP0

3このように雪ノ下雪乃は変わりつつある 終

キリがいいのでここで終わりー

お盆に免許取りに行かなきゃならないから、その勉強のために更新できなくなるかもしれないです。

本編は更新一切できないかもしれないんで、頑張って短編は書くつもりです。

 

127: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 21:19:13.50 ID:3G3RJw1f0

小町「あ、お兄ちゃんおはよー。昼食はテーブルに置いてあるよー」

目が覚めたときにはすでに正午を過ぎていた。小町の用意してくれた昼食を少し急いで胃に入れていく。ゆっくり食べてると予備校に遅刻してしまいそうだ。

受験生である小町に料理させて俺は昼まで寝てるとか、そろそろ救いようがない気もする。

今日の夜ご飯は俺が作らないとな。

八幡「ふああ……」

小町「お兄ちゃん、冬休みだからって夜更かしするのは健康によくないよ。目も腐るし」

八幡「それ長期休暇の度に言われるんだが……」

今年の夏休みにも全く同じことを何度も言われた記憶がある。そして必ず目のことを言及される。

だから睡眠不足と目の腐敗は関係ないんだよ。多分。

小町「それだけお兄ちゃんの生活リズムがボロボロなの。そんな生活して体調壊してほしくないんだよ。あ、今の小町的にポイント高いっ!」

八幡「はいはい」

最後のだけなかったら本当に可愛いんだが……。まああっても可愛いがな!

 

128: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 21:22:07.69 ID:3G3RJw1f0

小町「それで昨日はなにして夜更かししてたの?読書?ゲーム?本棚の後ろにある壁の中に上手く隠されたDVDの鑑賞?」

八幡「……おい、ちょっと待て」

小町「ん?」

怖いよこの子!なんで当たり前みたいに俺のプライバシー知り尽くしてるの?ストーカーなの?

八幡「な、なんでもない。それのどれでもねえよ。っていうかDVDとか知らねえし」

小町「ふーん……まあいいけど。どれでもないなら……あ!LINEとか!」

八幡「…………」

いきなり図星を言い当てられて思わず黙ってしまう。その反応から何かを察したのか、小町の目がキュピーン!と光った。

小町「ほうほう……お兄ちゃんがLINEで夜更かし……」

八幡「何を勘ぐってんだか知らないが、相手は戸塚だからな」

最もあり得る答えを提示してこの話題を終わらせようとしたのだが、なぜか小町の瞳に宿る光がさらに強くなったように見えた。

小町「……本当に戸塚さん?」

八幡「ああ、他に誰がいるんだよ」

小町「ふーん、へえー、ほおー」

八幡「うぜえ……」

小町はニヤニヤとした表情をしながら、しかし何かを言うでもなくずっと俺のことを生暖かい目で見ている。

だがそのことについて聞く時間は俺にはなさそうだ。時計を見れば意外と時間が過ぎている。急いで予備校に行く準備をしなければならない。

皿に乗っていた食べ物を大急ぎで口の中にかきこみ、そのままコーヒーで押し流す。ごちそうさまと小町に言ってから部屋に戻り、俺は支度をものの一分程度で終わらせた。

このまま自転車で飛ばせば間に合うな。

……寒い。家から出たくないな……はあ……。

 

129: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 21:26:24.85 ID:3G3RJw1f0

八幡「じゃあ行ってくる……」

部屋から玄関までの短い距離を、足を引きずりながら歩き靴を履く。

ドアに手をかけようとしたその時、いつもはリビングから手を振るくらいしかしない小町がわざわざ玄関まで見送りに来てくれた。

なんだ、デレ期か?

不思議に思わなくもなかったが、別に悪い気はしないしむしろ嬉しい。

少し上機嫌で扉を開ける俺に、さらに上機嫌な小町の声が届いた。

小町「戸塚さんは部活がある日もない日も早寝するタイプだから、夜遅くまでLINEなんてしないんだよー。それじゃあ行ってらっしゃい!」

俺の心臓が一際大きく脈打つのと、扉の閉まる音が聞こえたのはほぼ同時だった。

八幡「お、俺の妹がこんなに怖いわけがない……」

意識したわけでもなく口からそんな言葉がでてきてしまう。すれ違った主婦に気持ち悪そうに見られたが、もはやそんなことはどうでもいい。

きっと今頃小町は俺のLINEの相手を楽しそうに探しているのだろう。あいつのことだし、相手が雪ノ下だなんてすぐに分かってしまうはずだ。

そして帰ってから質問責めにあい、明日は奉仕部で雪ノ下に散々に言われる、と。

こんな嫌な未来を正確に予知できる能力なんていらねえ……。どうせなら宝くじの当選番号予知してくれよ。

そんな気持ちを振り切るために俺は自転車を漕ぎ始めた。

 

130: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 21:39:25.71 ID:3G3RJw1f0

風に立ち向かいながら自転車を漕ぐこと十数分。なんとか時間までに予備校に着くことができた。

こういう建物に入るとき、つい学校の癖で下駄箱探しちゃうんだよな……。

周りを見渡せば俺と同じような行動を取っているような人間がもう一人いた。

ポニーテールを揺らしながら周囲を見回し、何かに気づいたように動きを止める。

まさに俺と同じ動きだ。案外あいつとは気が合うのかもな。いやないか。

俺と気が合うということは、逆に言えば世界と合わないということだ。そんな奴は間違いなくぼっちである。

……そういえば、あの後ろ姿どっかで見たことあるな……。

誰だっけ……か、川……川越……?

八幡「あ、川崎か」

川崎「ふぇっ!?」

目の前で俺と同じ動きをしていた女子がこちらを勢いよく振り向いた。

誰かと思ったら川崎本人じゃねえか。

……え?じゃあ今の『ふぇっ!?』ってこいつが言ったの?なにそれ可愛い。

 

131: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 21:57:17.54 ID:3G3RJw1f0

川崎「な、なんであんたがここに……!」

八幡「こんなとこに勉強以外でなんの用があるんだよ」

俺の冷静な返しを受けて川崎もいつもの調子に戻る。若干の気まずさを残したままつかず離れずの微妙な距離感を保って、同じ部屋に向かって歩いていった。

八幡「……そういや、生徒会選挙の時ありがとな」

言いそびれていた礼を言っておいた。ただそれだけだというのに、川崎は頬を赤く染めて視線を逸らしてしまう。

そういう反応やめてくれない?勘違いしそうになるだろ。

川崎「別にあんたのためにやったわけじゃないし……」

典型的なツンデレセリフもこいつが言うと、すんなりと本心だと思えてしまう。

ならなんで手伝ってくれたのかとは思うが、そこまでぐいぐい聞くのは失礼だよな。

だから失礼じゃない礼をしよう。

八幡「それでも本当に助かった。この礼は今度何かで返す」

川崎「何かって?」

八幡「……決めてない」

女子への礼をそんなにすぐ思いつけるほど俺の男子力は高くないんだよ。

いや男子力ってなんだ。

川崎「……その礼って、あたしが決めてもいいの?」

八幡「ああ、むしろそっちの方が俺としてはありがたい……あ、痛みを伴うのはやめてくれよ?」

川崎「あんたはあたしをどう見てるのさ……」

 

132: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 22:22:40.67 ID:3G3RJw1f0

不良もどきですけど?とは口が裂けても言えない。その瞬間俺の体まで裂けてしまいそうだ。

だとすると不良もどき以外でのこいつへの印象……。

八幡「ブラコンだな」

川崎「あ?」

八幡「あ、いえなんでもないです」

何今の声!どこから声出したらそうなるの!?

ドスの利いた声を出した川崎だったが、なぜかその直後に視線を泳がせてしまう。

その行動の意味が分からず首を傾げていると、川崎はいつもより小さめな声で言った。

川崎「あたしへの礼はいいからさ……大志の勉強見てやって欲しいんだ」

明後日の方向を向きながら言われた言葉は実にブラコンチックなお願いだった。

……そら目を逸らすわな。ブラコンって言われたすぐ後に弟のこと話し出すんだから。

重症すぎるだろ、俺ですらそこまでじゃ……ないはず。

八幡「そんくらいなら別に構わんが、それじゃあお前への礼は……」

川崎「あたしはいいよ。スカラシップの時のでおあいこでしょ」

八幡「ま、まあそうだが……」

川崎「……あんたって意外と律儀だよね」

やっと視線を戻した川崎は優しい笑顔を浮かべている。

その表情は、俺の視線を釘付けにするには充分すぎるほど魅力的だった。

 

133: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 22:29:46.24 ID:3G3RJw1f0

川崎「……なに?」

八幡「……へ?あ、ああ、なんでもない。そうだぞ、俺はこう見えて律儀なんだ。借りはだいたい返すし貸しは絶対返してもらう」

川崎「それ律儀って言わないから」

その表情からはすでにさきほどの笑顔消えており、代わりに呆れた表情をされていた。

まさかさっきの笑顔をもう一度見せてくれなどと言えるはずもなく、少し残念に思いながらも俺は会話を続ける。

八幡「俺が教えるのはいいんだが……言っとくが国語以外は人に教えられるほどできないぞ?数学なんてむしろ教えてほしいレベル」

川崎「そういうのは期待してないよ。ただほら、この前みたいにモチベーションを上げてほしいっていうか……」

八幡「ああ……いやそれでも俺でいいのか?俺よりそういうのが得意なやつなんていくらでも……」

そこまで言って気づく。そうだ、この子も俺と同じぼっちだった。

俺に頼りたいのではなく、俺くらいしか頼れるやつがいない。

俺を選んだのではなく、俺しか選択肢が与えられていないのだ。

ぼっちは人間関係が狭い。むしろ人間関係なんてものが存在してないことすらある。だからこそ、選べる選択肢は限られている。

俺のように。

そう俺は予測し、こいつからの要望を飲もうとしたのだが、俺の考えは少し違っていたようだ。

川崎「あたしは他のやつよりあんたがいいと思ったから頼んでるだけ。大志はあんたのこと凄く気に入ってるし、あたしも……あんたになら大志のこと任せられると思ってる。……少し不安だけど」

八幡「任せられても困るんだが……まあその、そこまで言ってもらって断ることはできないな」

川崎「じゃあ頼める?」

八幡「ああ、引き受けた」

 

134: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/19(火) 22:46:33.31 ID:3G3RJw1f0

そこでちょうど俺たちの行くべき教室が見えてきた。一人で行くのに比べ随分と時間がかかったのは、それだけ会話に集中してしまっていたからだろう。

川崎「あ、そうだ。これLINEのID」

八幡「は?」

そう言って彼女が差し出したのは、英数字の書かれたメモ紙だった。

川崎「あんたも始めたんでしょ?ならこれの方が簡単に連絡できるし」

八幡「え、お、おう……」

女の子からLINEのIDもらった!八幡はリア充度が2上がった!

おっと、いかん。あまりの驚きで脳内がポケットなモンスターのようになってしまった。

ニヤニヤしそうになる顔を全力で引き締め、メモに手を伸ばす。だがその手はプルプルと震えていて我ながら無様だった。

川崎「あっ……」

受け取った時、俺と川崎の手が触れてしまった。俺が紙を掴んだと見るやいなや、ものすごい勢いで手を引いてしまう。

女の子から気持ち悪がられた!八幡はリア充度が5下がった!

八幡「わ、悪い」

何が悪いのかよく分からないまま謝ってしまう。だって川崎の顔真っ赤なんだもの、すごく申し訳ないんだもの。

川崎「いやっ、べ、別に……」

川崎は裏返った声でそういうと、スタスタと教室の中に進んでしまった。

残された俺は少しだけメモ帳を見つめてから、ゆっくりと教室の中へと入っていった。

 

145: ◆0NaiNtVZPPaZ 2014/08/23(土) 23:24:37.61 ID:MxoZufLw0

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