魔法使い「え、えろ魔道士です…」

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1: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:09:35.43 ID:pXI/sN9x0
「そんなっ…馬鹿な…」

「これで終わりだ魔王!せめて小生の命と引き換えに貴様を封印する!」

「ふふふっ…いいだろう…だが我はすぐに復活する…」

「我の力の一部を授けし者が、この世に蔓延る限り…」


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:10:30.17 ID:pXI/sN9x0
こうして魔王と私たちの戦いに一時の終焉が訪れた。

人間は良心な亜人種や魔族と手を取り合い再びこの世界は平和となった。

だがその四年後…

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:11:56.66 ID:pXI/sN9x0
王「どうやら魔王の封印が徐々に解けているらしいのじゃ」

魔導師「それは本当ですか!?」

王「そこでじゃ、またお主には女神の加護の元新たに選ばれし勇者と共に魔王の力の一部を受け取ったとされる各地の残党と、まだ魔力が回復しきっておらぬ魔王を叩いてほしい」

王「先代の勇者がその身命を賭して魔力を削ってくれたのだ。次こそは封印ではなく、完璧な消滅までもっていけるであろう」

魔導師(四年前に全ての魔王軍は撲滅されたはず。今いるとされる魔王の残党は元々は魔王軍には関係のない個々の魔族の悪党共で、偶々魔王にその悪行を見出され力を与えられた者共だ)

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:13:17.99 ID:pXI/sN9x0
魔導師(そいつらが魔王の復活に関与し始めているのか?やはり無視できない存在だったか…)

魔導師(…だが)

王「頼んだぞ」

魔導師「すみません国王様…私にはもう魔王討伐の旅に出ることはできませぬ…」

王「なんと!?それはどういうことじゃ!?」

魔導師「……」

『魔導師、この旅が終えたら小生の故郷で共に暮らさないか?』

魔導師「私は…もう耐えられないのです。大切な仲間を失ってしまうのが…」

王「…すまぬ。だがな魔導師よ」

勇者「もういい」

魔導師「!!」

王「どうした新生の勇者」

勇者「残党および魔王討伐は俺一人だけで十分だ。先代の魔導師殿の協力が仰げればもっと楽だったのだが無理だと言うなら仕方ない」

魔導師「勇者殿…」

勇者「王よ、俺はもう出発するぞ」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:14:49.34 ID:pXI/sN9x0
王「む、そうか。じゃがお主を王都に召集したのはお主とお主の旅仲間となる者の合流が目的じゃった。他の仲間を集めたければ酒場を当たるとよい」

勇者「ああ。一応覗いてみるとしよう」

勇者(まぁこの街にいる俺以外の冒険者なぞたかが知れているが…)

俺は城を出ると何を期待するでもなく酒場へと向かった。

俺は幼い頃に魔王軍に家族を殺されそこからあらゆる師にあたり、死にものぐるいで修行し続けた。

そのおかげで剣術の腕には自信がある上に基本程度の回復魔法は扱うことができる。

俺が勇者に選ばれたのは女神の導きだと聞くが…女神は俺に魔王への復讐の機会を与えてくれたのかもしれん。

今日は王都に召集されたが元々一人旅の身だ。

別に一人であることを苦には感じない。
孤独を感じるには、俺は一人でいる時間が長すぎた。

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:15:54.44 ID:pXI/sN9x0
魔導師「なんとたくましい勇者なのだ…」

王「あれだけの精神を持つ者こそ女神の加護を授かるのに相応しい」

王「ふむ、しかしやはり一人となるとどこかで躓くことになるのではないかと少し心配じゃな」

王「お主の弟子はどうじゃろうか。四年前に魔王城の近くで保護したというあのロップイヤーの少女がそうじゃったじゃろ」

王「確か14にしてお主に匹敵するとんでもない魔力を持っているのじゃろう?」

魔導師「あー…あれはですね確かに私が彼女に目をつけて四年間魔法を教えていたのですが…どうにも…」

王「…?」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:17:06.27 ID:pXI/sN9x0
…………

酒場のお姉さん「はいオレンジジュース」

魔法使い「あ、ありがとうございます…」

酒場のお姉さん「で、今日はどうだったんだい?ファングの一体でも倒せたのかい?」

魔法使い「あぅ…今日もダメでした…」

酒場のお姉さん「う~ん。そんだけの魔力があってなんでやろね~」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:18:27.20 ID:pXI/sN9x0
戦士「おっ!魔法使いちゃんじゃないか!どうだ?今日こそ俺とパーティ組んでクエストに行かないか?」

武闘家「あっ!ずりーぞ戦士!俺に決まってんだろ!な?魔法使いちゃん」

魔法使い「あはは…すみません…お誘いは嬉しいのですが…」

戦士「ちぇ、つれないね~」

武闘家「あちゃー。じゃあ今日もむさ苦しいメンバーで行くか~」

ドコドコ

魔法使い「…はぁ」

酒場のお姉さん「今日もモテモテだねぇ。よっ、魔性の女!でもなんでだい?ファングもあいつらに任せときゃ倒せるのにさ」

魔法使い「…男の人って怖いんです。なんか目がギラギラしてて」

魔法使い(本当は他にも理由があるんですけど…)

酒場のお姉さん「あっはっはっ!そりゃそうさ。あんた鏡見たことあんのかい?」

酒場のお姉さん「あんたの格好なんて帽子とマントとスカートがなけりゃその辺のカジノにいるバニーガールと大差ないじゃないか!そりゃそういう目で見るなって方が男共には酷さね」

魔法使い「だ、だって…この格好はお師匠様が私の得意な魔法と一番相性がいい装備だって…」

酒場のお姉さん「ふ~ん。あんたのお師匠様って偉大な方やけんね。あの人がそう言うなら間違いないんやろうけど」

魔法使い「でも最近は本当にこれでいいのかなって思えてきちゃいましたよ…うぅ…」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:20:19.01 ID:pXI/sN9x0
酒場のお姉さん「ん?」

ザワザワ…

「おい、あれってよ…」

「確か新生勇者様だろ?」

酒場のお姉さん「なんやすごいお客さんが来よったな」

魔法使い「ゆーしゃ…さま?」

酒場のお姉さん「何にしましょうか?」

勇者「酒はいい…腕のたつ冒険者を探している。誰かいるか?紹介さえしてくれれば後は俺が魔王討伐に必要な者かどうか判別する」

魔法使い(すごい…かっこいいひとだなぁ…)

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:22:33.04 ID:pXI/sN9x0
酒場のお姉さん「ふむふむ…ならこの娘なんてどうです?」

魔法使い「え、えぇ!?冗談はよしてくださいよ!」

酒場のお姉さん「いししっ…なんや彼堅物っぽいやん?でも彼でもあんたを前にしたら鼻の下伸ばすんやないかって気になってもうてん。もしそうやとしたらおもろいやんけなあ?」ヒソヒソ

勇者「……」

勇者(見た目はその辺にいる年端もいかない少女だが…)

魔法使い「も、もう!何言ってるんですかぁ!!こんなかっこいい人が私なんかに目を向けるわけないじゃないですか!」ヒソヒソ

勇者(だがこいつからはあの魔導師殿に匹敵…いやそれ以上かもしれない魔力を感じる…)

勇者(これ程の奴がまだこの街にいたとはな)

勇者「いいだろう。この女を連れて行くことにする」

酒場のお姉さん「おっ!?」

魔法使い「え、えぇ!?」

酒場のお姉さん「ここに新たな新生勇者パーティの誕生ですやん!この娘も勇者様に拾われてさぞ大喜びでしょう」

魔法使い「ち、ちょっと!」

勇者「では行くぞ。ついて来い」

魔法使い「え!?いや私は…!ああっ!手ぇ引っ張らないでくださいよぉ!ひぃ~」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:24:13.23 ID:pXI/sN9x0
魔導師殿が凄まじい力を持っているのは分かっていたので無理強いはしなかったが、俺以外に無名でこのレベルの奴がいるということに俺は驚きと若干の高揚感を覚えていた。

この魔法使いの魔王討伐へのやる気云々はそっちのけでとりあえず彼女の実力を見てみたくなった。

酒場のお姉さん「すっご~い。本当に魔性の女だわ…」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:24:58.13 ID:pXI/sN9x0
勇者「くるぞ!ファングだ!」

ファング「グルルル…」

魔法使い「あ、あぅぅ…」

ファング「バァウ!」

勇者「遅いな…」

突進してくるファングをするりとかわしわざとファングの対象から自分を外す。

俺に突進を交わされたファングはそのまま俺の後ろにいた魔法使いの元へ全力疾走する。

魔法使い「へっ!?…ひっ、ひぃ!」

勇者(さぁ見せてもらうぞ、お前の実力を…)

魔法使い「ぼ、ぼむふぁいあ~!」

彼女の差し出した手から紅の魔法陣が出現する。

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:26:07.03 ID:pXI/sN9x0
だがその魔法陣は炎を放つことなく水に浮かべた少量の絵の具のようにすぅっと空気中に溶け込んで消えてしまった。

勇者「!?」

魔法使い「ああ~!やっぱり無理でしたぁ!」

ファング「グラァゥ!」

大口を開けたファングはそのまま魔法使いに飛びかかりその鋭い牙と爪で彼女に襲いかかろうとしていた。

勇者「チィッ!」

瞬時に疾風の剣技でその狂犬の身体を切り裂く。

ファング「キャイン!!クゥン…」

切り裂かれたファングは血を吹き出して野原に倒れた。

魔法使い「はぁ…はぁ…すみません。ありがとうございましたぁ…」

勇者「ふざけているのか?」

魔法使い「ふっ、ふざけているわけじゃないんですよぉ!信じてぐださいっ!」

勇者(魔力が高くても詠唱に時間がかかるということか?まぁこの魔力で最速詠唱の魔法が放てるならあの酒場にはいないか…)

勇者「分かった。次こそは頼むぞ…」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:27:17.49 ID:pXI/sN9x0
そして現れた二体目のファング。

相変わらず本能のままに動く知能の低い狂犬は俺に猛進してくる。
今度はそれを交わさずに牙を剣で受け止める。

ファング「ギィ!ガルルル…」

勇者「おい今のうちだ!やれ!」

魔法使い「で、でも危ないじゃないですか!」

勇者「お前が魔法を放った瞬間に俺は退く!大丈夫だ!俺を信じろ!」

魔法使い「え、ええ…どうなってもしりませんよぉ!?ぼ、ぼむふぁいあ~!」

勇者(ふん、いうじゃないか。俺が交わし切れるかどうか分からない程の速度を期待してるぞ)

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:28:15.32 ID:pXI/sN9x0
だがその俺の期待も虚しく彼女の魔法陣はまたも何を放つこともなく空間の中に溶け込んで消えた。

勇者「……」

魔法使い「す、すみません!私実は攻撃魔法使えないんです!」

呆れた。

勇者(無理ならそれを先に言え)

俺はファングの腹に膝蹴りを入れると怯んだファングを一刀両断した。

勇者「補助専門だったか。なぜそれを先に言わない」

魔法使い「あーいえ…補助専門…というのも怪しくて…まぁどちらかと言えばそうなんですけど…」

勇者「お前は魔法使いなのだろ?もしかして僧侶のように回復魔法の方が得意なのか?」

魔法使い「いえいえいえ!それはありえません!回復魔法も全く…」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:28:58.86 ID:pXI/sN9x0
勇者「…とりあえず使える魔法を使ってみろ」

魔法使い「え、今ここでですか…?」

勇者「ああそうだ!悪いが俺はお前には一ミリも興味がない。お前の魔法に興味があるんだ!」

勇者「お前が今使える一番強力な魔法を見せてみろ」

魔法使い(勇者様本気なんだ…私に全く興味がないこの人の前なら使っても大丈夫かな…)

魔法使い「タンターシオン!」

勇者「…?」

勇者「…ぐっ!?」

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:29:58.29 ID:pXI/sN9x0
…………

王「どういうことじゃ?」

魔導師「彼女には攻撃魔法の才能も回復魔法の才能もなかったのです。ましてや強化魔法や戦闘向きの状態異常魔法も使えませぬ」

王「なら何ができるのじゃ?強大な魔力は一体何のために…」

魔導師「ただ彼女はある非戦闘用の状態魔法だけはかなりの腕前と言えます。今までありとあらゆる魔法使いを見てきた私ですがそのようなものに特化した魔法使いを私は彼女以外に知りません」

王「ほう。全く新たな魔道を行く者というわけか。どのような魔道士なのだ?」

魔導師「大変申し上げ難いのですが彼女は…」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:30:56.53 ID:pXI/sN9x0
…………

魔法使い「ひゃっ!」

魔法使い「ゆ、ゆうしゃ…さま?」

なんだこれは…なぜ俺はこの女を押し倒している。
なぜかそうせずにはいられない。

魔法使い「やっ、やっぱりこうなっちゃうんじゃないですかぁ!!だから使いたくなかったのに…うぅ…」

勇者「ハァ…ハァ…くそっ!おいお前俺に何をした!?」

勇者「お前は一体何者なんだ…」

魔法使い「え、ええっと私は…」

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:31:33.27 ID:pXI/sN9x0

「「え、えろ魔道士です」」

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:32:28.17 ID:pXI/sN9x0

第1章
誘惑の呪い

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:33:40.70 ID:pXI/sN9x0
勇者「ビスペル!」

ひとまずギリギリの理性を振り絞り魔法使いの上から退き魔法で状態異常を荒く解呪する。

魔法使い「だ、大丈夫ですか…?注文通り今私が使える中で一番強力な誘惑魔法を使ってしまったので…」

魔法使い「こんなの人に向かって打ったことなかったのに…勇者様なら大丈夫かなって思っちゃったんです…」

勇者「ちっ、安心しろ。お前みたいな王都でぬくぬくと育った小娘の魔法にやられるほど俺はヤワではない」

と、強がってはみるが実は悔しいことにまだ少し頭痛のような感覚がある。

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:34:22.24 ID:pXI/sN9x0
勇者(今日はもう王都の宿に泊まるか。一晩寝れば治るだろう。旅立ちは明日でいい)

魔法使い「そう…ですか…」

勇者「俺は宿に戻る。どうやら俺の勘違いだったようだ。お前に魔王を倒すだけの力はない。面倒なことに付き合わせて悪かったな」

俺は転移魔法を使うとその日はもう寝ることにした。

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:35:07.26 ID:pXI/sN9x0
勇者「…もう朝か」

勇者「ぐっ!」

まだ頭痛が治まらない。

勇者「教会で見てもらうか」

仕方なく教会へ出向くことにした。

神父「かなり強力な魔法がかけられてますな…私どもの祈りではどうにも…」

勇者「何だと!?他に方法はないのか!?」

神父「魔法の使用者に解呪していただくか、もしくは使用者の亡命しかないかと…」

勇者「…分かった」

勇者(あいつはどこだ?酒場へ行けばまた出くわすか?)

勇者(あんな腰抜けしかいなさそうな酒場に二度も出向くことになるとはな)

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:36:20.44 ID:pXI/sN9x0
酒場のお姉さん「魔法使いなら今日はもう出て行きましたよ」

勇者「そうか。情報提供感謝する」

欲しい情報が手に入ったならば長居は不要だ。
直ぐに席を降りてカウンターを背にする。

酒場のお姉さん「あー、もしかして勇者様もあの娘の虜になっちゃいました?」

勇者(馬鹿言え)

勇者「ふっ…なかなか面白い冗談を言う。まぁそうでなければ酒場の看板娘は務まらんか」

勇者「まぁ、ある意味そうかもしれんな。今俺はあいつに殺意という関心がある。俺が魔獣と罪人以外で殺したいと思った奴はあいつが初めてだ」

それだけ言い残して俺は酒場を出て行った。

酒場のお姉さん「え…勇者様ってヤンデレ…?ってかあの子何したのよ」

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:37:20.06 ID:pXI/sN9x0
魔法使い「来ないで~!」

ファング「ガウガウ!」

ザシュン!

ファング「クゥン…」ドサッ

勇者「魔法使いが杖を振り回して戦うとはな。得物を棍棒に持ち替えたらどうだ?」

魔法使い「すみませんありがとうございました…って勇者様!?」

勇者「見つけたぞクソ魔道士。少しでも回復魔法が使えるなら今直ぐ俺に使った魔法を解呪しろ」

魔法使い「で、ですから私は昨日お見せした誘惑系以外の魔法は皆無で…」

勇者「ならしょうがないな」

魔法使い「は、はいすみません…」

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:38:29.73 ID:pXI/sN9x0
勇者「俺は今からお前を斬るとしよう」

魔法使い「ふぇっ!?」

勇者「お前に魔法を使えと言ったのは俺だ。だから自分がどれだけ理不尽なことを言っているかも理解している」

勇者「だがなクソ魔道士よ。俺は全人類と女神から魔王討伐を任された身だ。なんとしてもその使命を果たさなければならん。それにはこの頭痛は重荷になり過ぎる」

勇者「長旅になる。ときにはこれから先あらゆる出来事に躓き、頭を悩ませることもあるだろう。これはその道中の俺の失敗、俺の罪だ。お前は俺の一番最初の難関となったのだ」

勇者「すまんな。俺の罪を許せ。その代わり俺は必ずや魔王を撃ち、全人類とお前たちのような善良な亜人種や魔族に平和をもたらすことを約束しよう」

勇者「ではな」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:39:12.37 ID:pXI/sN9x0
魔法使い「ひぇっ…!ちょっ、ちょちょちょっとまって!」

俺は涙目で命乞いをする魔法使いを無視し問答無用で刃を彼女に振り下ろした…つもりだった。

勇者(!)

また頭痛が強くなった。

手は勝手に刃を振り下ろすのを止めた。

魔法使い「ひっ、ひぇぇ…」

勇者(馬鹿な…この感じ、俺自身がこいつを殺すことを躊躇した?)

勇者(これも呪いの力だと言うのか)

勇者「手がぶれた。次はない」

もう一度剣を上に振り上げたときだった。

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:40:25.99 ID:pXI/sN9x0
魔法使い「ひっ、解きます!解きます!解けるようにしますっ!だっ、だから殺さないで!殺さないでくださぃ!お願いいたします!」

今更何をいっているんだこいつは。

勇者「だがお前は他の魔法は全く使えないのだろう?それともなんだ、自害でもするのか?」

魔法使い「た、旅に同行させてください!ももももしかしたら旅の中で魔法を解く手がかりが見つかるかもしれませんし、勇者様の隣に私を置いておけばいざとなったときいつでも私を殺せるでしょう!?」

魔法使い「だっ、だから、今殺すのは勘弁してくださいぃ…」

勇者「なるほど。だがお前を連れて行って俺に利はあるのか?」

魔法使い「あっ、あります!あります!多分あります!」

勇者「多分?」

魔法使い「す、すみません!絶対いいことあります!ありますからぁっ!」

勇者(必死すぎるだろ…)

勇者「はぁ…分かった」

見事なまでの命乞いだ。
さすがの俺も同情してしまった。

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:41:06.59 ID:pXI/sN9x0
勇者「では、今からもう出発するとしよう。立て」

魔法使い「あ、あのうすみません。一度王都に帰っていいですか?」

勇者「何を言う。俺は一刻も早く魔王を撃たなければ………そうかそういうことか。ここはなんとか凌いでこの俺から逃げようというわけだな?そうはさせんぞ」

魔法使いの手を引いて無理やり立たそうとする。

魔法使い「まっ、まってくださ…い、いやあ…」

立ち上がった魔法使いは俺に引かれていないもう片方の手でスカートを抑えていた。

勇者「……?」

魔法使いの足元を見てみると彼女の座っていた地面だけが水分を吸って黒くなっていた。

勇者「お前もしかして…」

魔法使い「いやぁ…ぐすっ…もぅお嫁に行けませんよぉ…」

勇者「……」

クソ魔道士というのには語弊があったようだ。

クソじゃない方の魔道士の間違いだった。

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:41:58.53 ID:pXI/sN9x0
勇者(結局また一日伸びてしまった)

魔法使い「勇者様~!お待たせしました!」

勇者「遅いぞアホ魔道士」

魔法使い「すみません。お師匠様に挨拶してまして」

勇者「師匠?」

魔導師「まさか本当に私の弟子が駆り出されることになるとは思いませんでした。弟子のことを頼みましたよ。勇者殿」

魔法使いのいた宿から出てきたのはなんと魔導師殿だった。

勇者「これは驚きました。まさかこいつに貴方のような優秀な師がついているとは…」

魔導師「まぁその様子なら勇者殿は魔法使いの毒に当てられることもなさそうで安心です」

勇者「毒?」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:42:45.46 ID:pXI/sN9x0
魔導師「この子は大量の魔力をまだコントロールできていなくて常に垂れ流してる状態なんですけどその魔力一つ一つに誘惑の力が込められているのです」

勇者「は、はぁ…」

勇者(また面倒に巻き込まれそうな体質だな)

魔法使い「すみません…」

勇者「もういい、では出発するぞ垂れ流し魔道士」

魔法使い「変な呼び方いっぱい作らないでくださいよぉ~!それではお師匠様、行ってきます!」

魔導師「達者で」

魔導師(必ずや、生きて私の元に帰ってきてくれ…魔法使い)

魔導師殿は優しい微笑みで俺たちを見送ってくれた。

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/20(土) 05:43:26.44 ID:pXI/sN9x0
魔法使い「い、いざ魔王を倒しに冒険に行くとなるとなんだかドキドキしてきました…」

勇者「この旅は遊びではないぞ」

魔法使い「分かってます!」

魔法使いはフンスと鼻息を出しながら何処かの軍人のような敬礼をして答えた。

旅仲間ができるのなら己が実力を認めた者だけと決めていたがいきなり例外を出してしまうとは…
我ながら情けない。

勇者(いや待て)

旅仲間ではなくかけられた呪いも含めお荷物と考えればノーカンか。

勇者(さっさと何処かで捨てられるといいな)

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:43:19.36 ID:0zMHN2Vm0
旅が始まって一週間ばかり過ぎた。

ファング「グルァ!」

勇者「ふっ!」

俺たちはファングに遭遇し戦闘をしていた。

ファング「グルッ!?」

勇者「鋼の味は美味いか?」

最後の一匹の牙を剣で受け止める。

勇者「今だ!やれ!」

魔法使い「ぼ、ぼむふぁいあ!」

魔法使いが炎の魔法を唱える。

が、

魔法使い「えいっ!えいっ!ああ…ダメダメです…」

相変わらず炎は放たれることなく魔法陣は消え失せた。

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:44:44.80 ID:0zMHN2Vm0
勇者(やはり無理か…)

彼女の攻撃魔法で止めをさすことを諦めた俺はいつものようにファングに蹴りを入れ、真っ二つに切り裂いた。

勇者「…はぁ」

魔法使い「す、すみません」

もう何度目になるか分からない謝罪を回復魔法を使いながら聞き流しす。

勇者「行くぞ」

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:45:50.78 ID:0zMHN2Vm0
…………

勇者「お前は魔導師殿から一体何を教えてもらったんだ」

魔法使い「攻撃魔法とか補助系の魔法とかそれはもういろいろ教えてもらいましたよ」

魔法使い「全部できなかったんですけどね…えへへ」

勇者「よくそれで魔道を志すことをやめなかったな」

魔法使い「ええ、私はお師匠様の側に居なければ生きていけませんでしたから…」

勇者「どういう意味だ?」

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:46:55.37 ID:0zMHN2Vm0
勇者「どういう意味だ?」

魔法使い「私、お師匠様と出会う前の記憶がないんですよね。気がついたときにはもうお師匠様の隣にいて…お師匠様は私の親のような人なんです」

勇者「…お前も本当の親がいないということか」

魔法使い「それすらも分からないんです。私の記憶は10歳からなんでそこまで私を育ててくれた人がいると思うんですけど」

勇者「10とはお前にとってはかなり最近の話だな。なんだどこかで頭を打ったか?そのときに記憶と共に賢さすら失ったか」

魔法使い「酷いこと言いますね…いや確かにそうかもしれませんが!」

勇者(自分が馬鹿だという自覚はあるようだな)

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:48:01.21 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「森の中にいたんです…」

勇者「森の中?」

魔法使い「はい。森の道でただ一人座っていたんです」

魔法使い「そこに涙で目を赤くしたお師匠様と出会って、家とか名前とかいろいろ聞かれたんですけど名前しか答えられなかった私を見てお師匠様は『お前も一人なのか。私も一人になってしまったんだ。よかったら私に付いてこないか』って言ってくれて…」

勇者「今に至るというわけか」

魔法使い「変な話ですよね。でもそこって魔王城の近くだったらしいんですよ。だから勇者様について行こうって決意できたのは実はそこまで行けたら何か思い出せるかなっていうのもあったんです」

勇者「は?」

今聞きづてならないことを聞いてしまった。

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:48:58.99 ID:0zMHN2Vm0
勇者「クソ魔道士、お前魔王城まで付いてくるつもりなのか?」

魔法使い「え?だってそのための旅なんですよね?」

勇者「俺は呪いが解けたらお前を適当なところで捨てるつもりだったんだが…」

魔法使い「えぇ!?そ、そんな…冗談ですよね?」

勇者「悪いが冗談ではない。今は何もできないお前を俺が守りながら戦う形になっているがこの戦い方はあと二つ三つも村や町を抜ければ通用しなくなるはずだ」

勇者「魔王城まで付いてくるつもりならそれまでに攻撃魔法を使えるようにしておけ」

魔法使い「ふぇぇ…四年も修行して無理だったのにそんなの無茶振りですよぉ…」

勇者「口答えするな。俺はお前をここで殺すことだってできるんだぞ?」

剣を抜いて魔法使いに向けてみせる。

魔法使い「ひッ!はひぃ!使えるようにします頑張ります!だからそれだけは…」

勇者(相変わらず必死だな)

勇者「そら、村が見えてきたぞ」

魔法使い「は、はぃ…」

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:49:41.44 ID:0zMHN2Vm0
村に着いて宿を取る。
すると受付の中年の男に妙なことを言われた。

中年「あんたが噂の勇者様か。連れのお嬢ちゃんもお強いのかい?」

魔法使い「わ、私は…」

勇者「まったくの雑魚だ」

魔法使い「あぅ」

中年「そうなのかい。お嬢ちゃん可愛い顔してるし、気をつけろよ」

何をだ?

勇者「……」

魔法使い「?」

横目で魔法使いの方を見るも彼女も何の心当たりもないようで首を傾げていた。

勇者「何の話だ」

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:51:17.53 ID:0zMHN2Vm0
中年「実はな、この辺で最近人喰いの豚の亜人が暴れてるんだ」

勇者「人喰いだと?」

中年「ああ、それも若い女ばかり狙うゲス野郎だ」

魔法使い「ひぇっ」

勇者「なるほどそういうことか」

もしかしたら魔王の力の一部を受け取った残党かもしれん。

勇者「その話、引き受けよう。そいつは俺が斬る」

中年「それは本当かい!?本当は俺からも討伐をお願いしたかったんだが勇者様は先を急ぐ身だ、無理は言えねぇって思ってたんだが…」

勇者「何の罪もない者たちが襲われているのを放ってはおけん」

魔法使い「私も罪はないと思うんですけど~…」

小さな声で魔法使いが横槍をいれた。

勇者「お前は俺に呪いをかけただろ」

魔法使い「うぅ」

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:52:15.93 ID:0zMHN2Vm0
中年「じゃあさっそく今日の夜からお願いするぜ勇者様。あいつは夜に若い女のいる場所に忍び込むんだ」

勇者「ああ分かった。おい呪い魔道士、今のうちに寝て夜に備えておけ」

魔法使い「はい…」

俺は魔法使いに準備を促し、部屋に入った。

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:52:46.94 ID:0zMHN2Vm0

第2章
人喰いの夜

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:53:22.38 ID:0zMHN2Vm0
「…さま」

「…しゃさま」

「ゆーしゃさまぁ…」

勇者「ん、んん…」

大分日も落ちて外も薄暗くなってきたころ、誰かの声で目が覚めた。

勇者「なんだ?」

目を開けるとそこにいたのは枕を抱えた魔法使いだった。

49: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:54:26.59 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「勇者さまぁ…」

勇者「どうした?例の亜人がでたのか?」

魔法使い「そうじゃないんですけど…あの、私も一緒の部屋で寝ていいですか?」

何を言っているんだこいつは。

勇者「お前の部屋は別で取っておいたはずだが?」

魔法使い「だ、だだだだってぇ…怖いじゃないですかぁ。私の部屋にいきなりその亜人が出たら私何もできずに食べられちゃいますよぉ…」

勇者「それはお前が死ぬということか?」

魔法使い「そうですよ死んでしまいますよ」

勇者「それは幸運だな。お前を守りながら戦うこともなく呪いも解けていいことづくめだ」

魔法使い「酷い!」

勇者「だから大人しくあっちの部屋で寝ろ」

魔法使い「お願いします!ここで一緒にいてください!」

ベッドの下で土下座する魔法使い。

勇者(こいつにはプライドというものがないのか?)

50: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:55:21.36 ID:0zMHN2Vm0
ベッドを降りて魔法使いの前にしゃがむ。

魔法使い「実は私寝相には自信がある方なんです!絶対に勇者様の邪魔にはなりませんのでどうか!」

勇者「俺はお前に起こされて目が冴えた。そこで好きなだけ寝てろ」

魔法使い「え!?それじゃあ意味がないじゃないですか!」

勇者「何がだ」

魔法使い「ここにいてくれないと…」

勇者「じゃあお前のアホみたいな寝づらをじっくりと拝んでやるから安心して寝ろ」

魔法使い「うっ、それは恥ずかしいですけど仕方ありませんね。ありがとうございます」

勇者(ここまで俺の前に散々醜態を晒しておいてこれ以上何を恥ずかしがることなんてあるのか?)

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:55:58.36 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「そ、それでは寝ます。お休みなさい…です」

さっきまで俺がいたベッドに上がり布団を被る魔法使い。

そのまま目を瞑るのかと思えば何やらこちらをチラチラ見ている。

勇者「どうした」

魔法使い「あの…あまり寝顔見ないでくださいね?」

勇者「ならこうしておくか?」

掛け布団の上の方を掴んで魔法使いの顔に押し付ける。

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:57:19.37 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「んばっ!んんー!!!!」

魔法使い「や、やめ…!んぐぁ…いいですから!もがっ!…寝顔ガン見してもいいですから!」

勇者「むしろ本音はできるだけ見たくないからこうしてるんだがな」

魔法使い「ほんっとーに!んがぁ!やめっ!いぎでぎなっ…できまぜんっが、らぁ!じぬっ!じぬっ!」

勇者「この程度で死ぬのか。なら死ね」

魔法使い「そ、それいじょ…うんっ…やったら…また魔法…がげぢゃいま、ずよぉ!」

勇者「なっ!」

53: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:58:05.03 ID:0zMHN2Vm0
さすがに手を離す。
ただでさえまだ頭痛が残っているというのにこれ以上の呪いは気が狂いそうだ。

魔法使い「およ?ふふふふ…勇者様の弱点見つけちゃいました」

魔法使いは何故か得意げだ。
少し腹が立った。

勇者「いいだろうその代わりもし本当に俺にもう一度あの魔法を使ったときには問答無用でお前を殺す」

魔法使い「ひぇっ!冗談ですよぉ…」

すぐにいつもの涙目に戻った。
やはりこいつはアホだ。

勇者「もういい。さっさと寝ろ」

魔法使い「ふぁーい…むにゃ…」

その後魔法使いは10分も経たないうちに眠りについた。

54: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 06:59:27.12 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「んー…くぅくぅ…」

勇者(さっきまで怯えてたのが嘘みたいな寝顔だな。連れてかれても食べられるまで起きそうにないな)

魔法使い「ん~…しゃさまぁ…むにゃ…」

勇者「?」

勇者「寝言か…夢の中でまで俺の足を引っ張ってるのか。本当に迷惑な奴だ」

魔法使い「ふにゅ…」

勇者(しかしこうして見ると幼い子供のそれだな。男を魅せる魔性の力と身体を持っていても、所詮中身はまだまだ少女というわけか)

そのまま数時間後…村人たちもみな寝静まりほとんどの家の灯りが消えた。

55: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:00:10.67 ID:0zMHN2Vm0
勇者(そろそろか?)

勇者「おい起きろ、そろそろ外に見張りに出るぞ」

魔法使い「うぅん…にゅー…じゅる…」

ヨダレを垂らしたアホづらのままなかなか起きない。

勇者「おい!」

軽く頬をぺちぺちと叩いてみる。

魔法使い「んにゅ~、やぁ…」

勇者「…駄目か」

勇者(どうせこいつは使えないし一人で出るか)

勇者「子供は寝る時間、だからな」

俺は一人で宿を出て外を見て回ることにした。

56: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:00:48.80 ID:0zMHN2Vm0
勇者「特に異変はないな」

暫く外を歩いてみたが激しい物音も悲鳴一つも聞こえてくることはない。
宿から少し離れた所も見に行ったがそれは変わらなかった。

勇者(今日は偶々現れなかっただけか?)

勇者(随分と宿から離れたところまで来てしまったな。そろそろ戻るか。もしかしたら何処かに潜んで俺がその場所を離れるのを待っていた可能性もある)

引き続き時間を置いた宿の周りを探索しようと戻ったときだった。

57: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:01:56.93 ID:0zMHN2Vm0
勇者「!」

何やら黒い人影が宿の窓を攻撃している。

そしてついに影は窓を叩き割り部屋へ進入した。

勇者「待て!」

俺も急いで宿の入り口から部屋に入る。

人喰い「んぁ?なんだ戻ってきたのかよ」

部屋の扉を開けると、人喰いは寝ている魔法使いに手を伸ばそうとしていた。

勇者「貴様が人喰いか」

見た目は肥満気味な大男といった感じで正に豚のような男だった。

58: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:02:54.10 ID:0zMHN2Vm0
人喰い「なんだ?この女もそうだがお前らは村の人間じゃなさそうだな」

勇者「俺は勇者だ」

人喰い「勇者だと?ということはこっちの女はお前の仲間か」

人喰い「やっぱ村の人間じゃなかったか。だってこの村にはこんないい女いねーもんなぁ!この部屋には何かいい女がいるような気がしたんだよなぁ!」

人喰いは魔法使いを見ながら正に下衆というような表情を浮かべながら舌なめずりした。

勇者(あいつの誘惑の毒は外にまで漏れてるのか?恐ろしいな)

勇者「そいつは仲間じゃなくて荷物だ。間違えてもらっては困る」

人喰い「あーはいはいお前の所有物ってわけか。なら許可取った方がいいか?こいつを俺に譲ってくれよォ!」

勇者「それはどっちでもいいが俺は貴様を斬ることには変わりない」

人喰い「なんだ俺の邪魔するってのか?じゃあお前は殺すとするか。俺は食べる奴以外は殺さないエコな思考なんだがなぁ」

人喰い「止めといと方がいいぜ?俺はその辺の雑魚とはちげぇ。一応魔王様にちょっとだけ力を分けてもらってる身だぜぇ?」

勇者(やはり残党の一人か)

勇者「弱者だけを襲うというわけか。ふん、小物だな」

人喰い「だって男って筋肉質で硬くてあんまりうまくねーんだよ」

人喰い「それに比べて女はよぉ…柔らかくてもう最高よ」

人喰い「それに、食べる以外にも楽しみがあるしなぁ!この女は沢山楽しめそうだぜぇ」

人喰いは魔法使いの太ももを触りながら己の汚れた欲望を語る。

59: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:07:11.49 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「んっ…んぅ…むにゃ…」

少し顔を歪めるも魔法使いはまだ起きそうにない。

勇者(そこまでされてまだ起きないのか。呑気な奴め)

人喰い「あー我慢できなくなってきたぜ…。お前さぁ、さっきこの女のことはどっちでもいいつったよなぁ」

勇者「ああそれはそうだが…」

人喰い「なら闘り合うのは俺が少し楽しんでからでもいいか?まぁ実際に喰うのは少し運動してからのが美味いからお前を始末してからでいいが…ちょっとそこで見てろ。お前の荷物だった奴が乱れていくのをな」

俺を煽っているつもりなのだろうか。別に俺はあの女がどうなろうと知ったことではないというのに。

人喰い「へへっ…たまんねーよこいつぁ…」

俺が黙っているのを良しととったのか人喰いは魔法使いの身体を気持ち悪い手つきで触り始めた。

太ももを撫でた後に、服の中に手を忍びこませ腹をさする。

人喰い「ぐへっ…ぐへへ…」

魔法使い「んっ…んっ…んあっ…」

勇者(あれでも起きないのか。俺があいつの立場なら身体が拒絶反応を起こして飛び起きそうなものだが)

勇者(一見隙だらけだ。後ろから一撃お見舞いしてやってもいいが)

勇者「くっ」

先ほどから妙に頭痛が酷い。
なぜいきなり…。

60: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:09:49.90 ID:0zMHN2Vm0
人喰いが服の中に滑らせた手は腹からみぞおちへ…そして胸へと進もうとしていた…そのときだった。

魔法使い「んはっ…んぁ…くしゅぐったいですよゆーしゃさまぁ…むにゅ…」

勇者「!!」

その寝言を聞いて俺は瞬時に鞘から剣を取り出し人喰いの背を斬りつけようとした。

人喰い「あ?」

それに気がついた人喰いは素早く腰から短刀を引き抜きそれを受け止める。

人喰い「どういう関係かはしらねーが仮にも自分の女がいいようにされるってのに随分と素直だなと思ったらこういうことかい。不意打ちとは女神に選ばれた身にしちゃあセコい真似するじゃねーの勇者さんよぉ」

勇者「気が変わった。どうやらそのアホづら魔道士の夢の中では貴様の気色悪い淫行は全て俺がやってるものに置き換わっているようだ。流石に不愉快極まりない」

人喰い「ちっ、いいとこだったのによぉ。結局こうなっちまうのかい」

人喰いは魔法使いに触れていた手を離し、腰からもう一本の短刀を引き抜くと俺の腹目掛けて一振りする。

勇者(丁度頭痛もおさまったか。なんとか戦えそうだ)

61: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:10:51.56 ID:0zMHN2Vm0
その一撃を距離を取りながら回避し、下から剣を振り上げ片方の短刀を弾く。

人喰い「おっと!」

一度は驚きの表情を見せた人喰いだったが、直ぐに表情を改めまだ持っている方の短刀をこちらに投げつけた。

勇者「ぐぅっ!」

間一髪頭を右に傾けて奇襲を避ける。

俺が怯んだ隙に上に宙を舞う短刀を握りそのまま振り下ろす人喰い。

人喰い「オラァ!」

避けきれず肩をかすめる。

勇者「ちっ!」

人喰い「やるじゃねーか。今のはモロ入ったと思ったんだがな」

勇者「貴様もその巨体にしては軽々と動くな」

人喰い「なんでも見かけで判断しちゃあいけぇねぇよなぁ」

勇者「そうかもしれんな!」

62: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:11:38.95 ID:0zMHN2Vm0
仕切り直しの初撃、真っ向からの一撃はまず受け止められまたも睨み合いに突入する。しかしこの様子なら奴にもう他の短刀はないと見て良さそうだ。

勇者(リーチはこちらの方が長い。そこを上手く生かせれば楽に沈められるはずだ)

一旦離れ、斬ると言うよりは突き気味の攻撃に転じる。

人喰い「よっと、おっと、ほっと!危ない危ない」

人喰いも上手いこと俺の攻撃をかわしているが避けるのに精一杯といった様子でなかなか得意であるはずの間合いには入って来れない。

勇者(確実に押している。こうしている内に体力を削られ何処かでかわし損ねれば…あとは…)

63: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:13:03.86 ID:0zMHN2Vm0
人喰い「あめーな勇者様」

勇者「!」

ニタリと口を緩める人喰い。

勇者(しまった!完全に油断していた)

気づいたときにはもう遅い。

勇者「ぐぁっ!」

肩に投げられた短刀が突き刺さる。

そうなのだ。奴はもう一本を投げれば得物が無くなるというだけで別に投げるという選択肢を失っているわけでは無かった。

人喰い「おらよぉ!」

人喰いは俺が痛みに怯んだ一瞬の隙を逃さず懐に素早く入り込むと拳にこめた渾身の一撃を俺の腹にお見舞いした。

勇者「がはっ!」

64: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:13:49.11 ID:0zMHN2Vm0
勇者「がはっ!」

殴られた勢いでそのまま壁に叩きつけられる。

勇者「ゴホッ!」

剣も手からこぼれザクリと木製の床を貫いた。

人喰い「チェックメイトだな…勇者様よぉ」

最初に投げて壁に突き刺さった短刀を引き抜きとにやけた面の大男は俺の目の前に刃を向けた。

勇者(回復魔法詠唱の隙もないか…万事休すか?)

勇者(クソッ!こんなところで死ぬわけにはいかぬというのに!)

65: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:14:48.38 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「あ、れ?勇者様…?」

人喰いの巨体の後ろに隠れて見えないがどうやら俺が壁に叩きつけられた音で魔法使いが目を覚ましたらしい。

魔法使い「も、もしかして人喰い…ですか?」

人喰い「なんだ起きたのか…丁度よかったぜ、そこで勇者様の首が飛ぶのを見てな!」

魔法使い「ひっ!そ、そんな…!」

人喰いは顔を魔法使いの方に向けて話しているが恐らくこちらへの警戒は怠ってないだろう。
何しろ最初の不意打ちとも言える一撃を受け止めたのだから。
下手に動けば本当に首が飛ぶ。

勇者(何かないのか…?何か…)

人喰い「死ねぇ!」

66: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:15:23.38 ID:0zMHN2Vm0
月明かりを受けギラリと光る鋭さが俺の首目掛けて切り裂かんと振られる。

勇者「くっ!」

魔法使い「タンターシオン!」

勇者「!?」

人喰い「ヌッ!?」

あと少しで俺の首に到達しそうだった短刀の動きが止まった。

人喰い「ハァッ、ハァッ…」

突如狂ったように息を荒げた人喰いは短刀を床に落とし、魔法使いの方を向いた。

人喰い「ヒヒッ…ヒヒヒヒヒ…ウマソウ…うウマソウ!」

67: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:16:11.64 ID:0zMHN2Vm0
人喰い「ウマゾウッ!!!!!」

メスを見つけ発情した獣のごとく人喰いは魔法使いに飛びかかった。

魔法使い「ヒェッ…いやぁっ!ゆ、ゆうしゃさまぁ!!!」

一瞬何が起こったのか理解できず戸惑っていたが魔法使いの声で我にかえる。

勇者(俺は何をしている!?今が好機だ!)

床に突き刺さった剣を取り走る。

勇者「うおおおおおお!!!」

背を向いた人喰いを力任せに斬りつけた。

68: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:16:58.76 ID:0zMHN2Vm0
人喰い「グゥァァァァ!」

大量の血を吹き出しながら巨体が重みのある音をたてて倒れた。

勇者「はぁ、はぁ、はぁ…」

魔法使い「うっ…ひっく…うぇぇ…」

勇者「……」

魔法使い「ゆうしゃさまぁ…うぅっ…」

勇者(間違いない)

今こいつは人喰いの理性を一瞬で破壊した。

69: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:17:48.97 ID:0zMHN2Vm0
勇者(一体どれだけの魔力を込めて撃ったんだ?少なくとも俺に向けて放ったのより二倍…いや三倍近くの魔力…)

勇者「……!!」

自然と身体が震えていた。

勇者(俺の本能が恐怖すら感じている…)

魔法使い「こわかった…ゆうしゃさまが死んで…わたしも殺されちゃうんじゃないかって…こわかったですよぉ…」

魔法使いに抱きつかれた。

勇者(今怖いのはお前の方だ)

だが

勇者(情けない話だが俺はさっき確実にこいつに助けられた)

勇者「まさか泣き虫クソ魔道士に助けられることになるとはな…礼を言うぞ」

魔法使い「うぇぇん…くずっ…ずるずるズッー…」

勇者「…人の服で鼻をかむなクソ魔道士」

何はともあれ、己の力を過信していたが俺もまだまだというわけか。

70: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:18:41.69 ID:0zMHN2Vm0
次の日

中年「本当にありがとうございました勇者様!他の村人たちもお礼を言っていましたぜ」

勇者「礼には及ばない。俺は何もできなかった」

中年「まぁまぁそんなことはないだろう?あそこの部屋はボロボロで暫く使い物にならねぇが別の部屋をタダで貸すから、暫くゆっくりしていってくれよ」

勇者「それはありがたい。お言葉に甘えておこう」

ボロボロになった部屋に戻ると泣き疲れた魔法使いがまだベッドで布団にくるまっていた。

71: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:20:02.38 ID:0zMHN2Vm0
勇者「おい起きろ鼻水魔道士。この部屋は出て行くぞ。別の部屋を貸して貰えることになった。…というよりお前は元の部屋へ帰れ。もういいだろう」

魔法使い「ふぁ~い…」

魔法使いが目を擦りながらゆっくりと身体を起こす。

彼女が起きたのを確認した俺は先に新しく用意された部屋へ移動しようとすると彼女に呼び止められた。

72: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2016/08/21(日) 07:21:02.08 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「あ、すみません少し聞きたいことがあるんですけれど…」

勇者「なんだもう元の部屋の番号を忘れたのか」

魔法使い「そうじゃないんですけど…勇者様、もしかして私が寝ている間にその、私の身体触ってたりとか…してましたか?」

勇者「俺は触ってない。あの人喰いはベタベタと気持ち悪い手つきで触っていたがな」

魔法使い「ひぃっ!?それ本当ですか!?」

勇者「残念だが本当だ」

魔法使い「さ、最悪ですよぉ…私今すぐお風呂入ってきますっ!」

勇者「ああそうしろそうしろ。多分俺でもそうしている」

魔法使い「なんで勇者様じゃないんですかぁ!なんでよりによって…あ、あんな恐ろしい人が…」

勇者「知るか。むしろ俺だったら良かったのか?随分と軽い女だな」

魔法使い「ふぇっ!?いえぇ、けしてそういう意味では…」

魔法使い「あぅ…」

魔法使いは顔を激しく真っ赤にすると妙な様子でドタバタと騒がしく部屋を出て行った。

勇者「…変な奴だな」

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