ぐだ子「ガチャから人類悪が出てきた」 ティアマト「やっほ~」

Fate

アンケートへの回答ありがとうございました。

今後のまとめ記事の参考にさせて頂きます。

要望等あればいつでもご連絡ください。

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 00:04:57.65 ID:/bQX4xEK0

~召喚の間~

マシュ「先輩!無事、石が溜まりました!」

ぐだ子「よーし、これだけの石を捧げれば来てくれるよね」

ぐだ子「念願の山の翁!」

呪腕「いよいよですな、主殿」

ぐだ子「ありゃ、ハサン達どうしたの」

百貌「初代様がいらっしゃるのだろう、我らが出迎えない訳にも行くまい」

静謐「緊張、します」

マシュ「これは……普段は先輩にべったりな静謐のハサンさんまで真面目に待機されています」

ぐだ子「それだけ山の翁が特別なサーヴァントだって事だよね……」

ぐだ子「尚の事、頑張らないと!」フンフン

マシュ「先輩もやる気ですね……!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1485356697


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 00:11:43.78 ID:/bQX4xEK0

ぐだ子「よし!じゃあ石を魔方陣に捧げるよ!」

マシュ「了解です!」

ポイポイポイポイ

マシュ「あれ……先輩、この石」

ぐだ子「ん?どうしたの?」

マシュ「何か黒いのがくっついてるんですけど……」

ぐだ子「ホントだ、何だろ……どっかで土でもついたのかな」ゴシゴシ

マシュ「とれませんね……」

ぐだ子「んー、けど魔翌力反応は問題ないみたいだし、使えるんじゃないかな」

マシャ「はい!じゃあこれも入れますね!」

ポイポイポポイ

ぐだ子「召喚の触媒としてはこれで十分かな……」

ぐだ子「じゃあ、開始するよ~」

 

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 00:23:16.19 ID:/bQX4xEK0

その石に付着した土は、とある存在の亡骸だった。

圧倒的な暴威で古代ウルクを壊滅直前まで追い込んだ存在の亡骸。

その破片だった。

魔力を失いただの土塊と化していたそれは、偶然、カルデアが回収した石に付着した。

そしてこの魔方陣まで運ばれた。

この土塊自体は何の力も持っていない。

生前のように他者へ浸食しアミノギアスで縛るような能力は持ち得ていない。

しかし、それが「彼女の死体の一部」である事に変わりはないのだ。

英霊召喚は触媒によって呼び出されるサーヴァントが確定する。

そして今、彼女を呼び出す為の絶好の触媒が、ここに存在していた。

 

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 00:29:12.17 ID:/bQX4xEK0

魔方陣に描かれた複数の光環が回転する。

英霊召喚が成功した証である。

眩い光環が収束し……。

ぐだ子「山の翁山の翁山の翁、おじいちゃんきてー!」

マシュ「大丈夫です!きっと来てくださいます!」

百貌「おじいちゃんって、失礼だろうが!」

呪腕「なあに、初代様であればその程度でお怒りにはならぬでしょう」

静謐「……」ドキドキ

パシャンッ

臓物が地面に落下したかのような音が、部屋に響いた。

 

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 00:36:40.53 ID:/bQX4xEK0

魔方陣の真ん中に、奇妙な物が召喚されていた。

色は赤。

血のような赤。

ソレは血管が浮き出た皮膜を纏っていた。

その皮膜の中でぐちゃぐちゃと動いていた。

その様子は、まるで人間になり損ねた化け物が無理やり身体を作り直しているかのような。

酷く滑稽で、不気味な光景だった。

ぐだ子「……」

マシュ「……」

呪腕「……」

百貌「……」

静謐「……」

ぐだ子「なに、あれ」

 

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 00:48:22.12 ID:/bQX4xEK0

そう呟いた瞬間、皮膜の中の何かは、グルリとこちらを振り向いた。

見ている。

そいつはこちらを見ている。

眼も口も鼻もない、顔として認識すらできないそれは、明らかにこちらを……。

私を見ている。

思考を先に進める前に、異形から音が漏れだした。

「Aaaaaaa」

……ああ。

それは聞いた事がある「声」だった。

何度も何度も何度も聞いた声だった。

あの黒い海原で。

壊滅した街並みで。

叩き落とした冥府の底で。

彼女には何故かその声の意味が理解できた。

「ミツケタ」

その異形はそう言っていた。

 

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 00:59:10.07 ID:/bQX4xEK0

その後に起こった事を、私は正確に認識していない。

凡そ4秒に起こった出来事だ、認識に不備が出るのは仕方ない。

だから、自分で理解している事のみを記そう。

彼女の声が響いた直後、皮膜が破れ、中から黒い泥が溢れだした。

ドロドロ、ぐちゃりと。

粘性を帯びた黒い泥は、あっと言う間に勢いと量を増し、私達の元に迫ってきた。

まるで波のように。

ここまでで1秒。

 

 

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 01:00:18.81 ID:/bQX4xEK0

私を守るために前に出た百貌のハサンが自己分裂を開始し泥を押しとどめようとした。

けれど、駄目だった。

人間の身体を幾ら100に分裂させようと泥の波を押しとどめられるはずがない。

ああ、けどそんな事は彼女達も理解していたんだ。

だからこそ、静謐のハサンは動いた。

彼女は身体から限界以上の毒液を排出する。

接触により身体が焼け爛れる猛熱を発生させる毒。

その毒は百貌のハサン達の身体に触れ、爆発的な蒸気を発生させた。

それにより、泥の波は一瞬、ほんの一瞬勢いを弱めた。

ここまでで2秒。

 

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 01:07:59.45 ID:/bQX4xEK0

蒸気により百貌のハサンと、静謐のハサンは私の視界から消えた。

私が2人に何か声をかける前に、呪腕のハサンが動いた。

呪腕のハサンは、その右手に魔神の腕を宿している。

条件が整えば相手の心臓を即座に抉り出せる、恐ろしい巨腕だ。

その手を使い彼は……。

私とマシュを泥の及ばぬ場所、廊下へと投げ飛ばした。

壁に叩きつけられた私は、一瞬息ができなくなる。

ここまでで3秒。

 

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/26(木) 01:12:20.96 ID:/bQX4xEK0

「マシュ殿!隔壁を!」

私が視線を部屋に戻した時、呪腕のハサンの背後に、泥の波が迫っていた。

ああ、飲まれてしまう。

彼が、あの泥に。

けれど、私はその瞬間を目にする事は出来なかった。

その前にマシュが隔壁を緊急閉鎖したからだ。

大きな音と共に隔壁が閉まり、廊下は、静寂に包まれた。

ここまでで4秒。

 

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/27(金) 03:00:43.02 ID:14rDmhvu0

マシュ「……」ハァハァ

ぐだ子「……」

マシュ「……せ、先輩!大丈夫ですか!?」

ぐだ子「……私は、大丈夫」

マシュ「あれは、あの泥は……先輩、あの泥は」

ぐだ子「……うん、あれは」

混沌の海。

侵食海洋。

ケイオスタイド。

古代都市ウルクを飲み込んだモノ。

触れた物をアミノギアスで縛り人類の敵に作り替えるモノ。

私達が第六特異点で遭遇した「彼女」が持つ権能。

だったら、だったらやっぱり、あの異形は。

 

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/27(金) 03:07:15.94 ID:14rDmhvu0

マシュ「ハサンさん達は……ハサンさん達はどうなったのでしょうか……」

ぐだ子「……」

私達は確かに「彼女」と戦い勝利を得る事が出来た。

その過程でケイオスタイドへの対策もある程度立ててある。

泥に接触する面を最小限にし、そこに魔力障壁を張る事で、海域に触れずに移動する事が可能だったのだ。

もしかしたらハサン達もそれに倣い、泥の波の第一波を凌げたかもしれない。

けれど。

……けれど、もし泥が隔壁の中を埋め尽くしたのなら。

ハサン達はもう。

ぐだ子「……そうだ、報告を」

ぐだ子「ダヴィンチちゃん達に子の事を知らせて、対策を練らないと……」

 

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/27(金) 03:11:51.88 ID:14rDmhvu0

「その必要はないよ、状況はモニタしていた」

「ハサン達の話はまた後だ」

「ぐだ子ちゃん、マシュ、今すぐそこを離れて」

「そこはまだ安全圏じゃない」

「隔壁内部の圧力が急激に増加している……」

「もうすぐあふれ出るぞ!」

ダヴィンチちゃんからの通信が入ると同時に、ピシリという音が廊下に響いた。

隔壁を見ると、僅かだが漏れていた。

黒い、黒い泥が。

トロトロと。

隔壁の継ぎ目から。

 

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/27(金) 03:24:32.81 ID:14rDmhvu0

マシュ「先輩!」

ぐだ子「う、うん、マシュ走るよ!」

廊下の端、次の隔壁まで少し距離がある。

私とマシュは走った。

後ろから音が聞こえる。

ピシリ、ピシリと。

隔壁の隙間が広がる音が。

泥が浸食してくる音が。

けれど後ろは振り向かなかった。

そんな余裕はない。

その甲斐あって、私とマシュは隔壁を通過できた。

隔壁の自動閉鎖機能が働いたのを見て、私はようやく後ろを振り返る。

……そして私は見た。

見てしまった。

閉まりつつある隔壁の向こう。

召喚の間から溢れ出る泥。

その泥の中に立つ。

2つの人影。

さっきまで私のそばにいてくれた、彼女達の姿を。

彼女達は私を見つめると、にたりと笑った。

 

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/27(金) 03:31:03.72 ID:14rDmhvu0

「……は、いらない」

「……だけで、いい」

「イらない」

「いらナイ」

「もう……イラナイ」

「ヒツヨウない」

「だから」

「だからワタシは」

ダヴィンチ「ぐだ子ちゃん、大丈夫?」

ぐだ子「……え?」

ダヴィンチ「心ここにあらずという感じだったからさ」

マシュ「ダヴィンチちゃん、やはり先輩は休んでもらった方が……」

ぐだ子「い、いや大丈夫、今後の作戦会議でしょ?いけるよ」

マシュ「しかし……」

ぐだ子「もう、マシュ過保護すぎだって」

ぐだ子「それに、休んでられる状況じゃないでしょ」

マシュ「それは……そうですが……」

ダヴィンチ「じゃあお浚いの意味も込めてもう一度状況を説明するよ」

 

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/27(金) 03:47:00.11 ID:14rDmhvu0

「30分前、召喚の間にて異形の存在が確認された」

「霊基の分析情報から、異形を人類悪……ビーストⅡに連なる存在だと認定」

「彼女はケイオスタイドを放出し召喚の間を制圧」

「カルデア側は隔壁閉鎖による封じ込めを試みるも失敗」

「召喚の間から流れ出たケイオスタイドは廊下を通りカルデア各所に浸食」

「現状で、半分のエリアは彼女の汚染を受けている」

「残り半分はまだ隔壁が生きているが……これも何時までもつかわからないね」

「尚、ケイオスタイドに浸食されたエリアに住んでいたサーヴァント達とは連絡が取れなくなっている」

「浸食を受けたか、何処かに立てこもっているかは不明だ」

「現段階でカルデア側の戦力として保証できるのは……」

「ぐだ子ちゃんとマシュと私」

「他にサーヴァントが数名」

「あとは……種火狩りの為にレイシフトしてる部隊がいるけど……」

「今、向こうへカルデアの座標情報を送れなくなってるから、あの子達は当分戻ってこれないと思う」

「こんな所かね」

 

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 21:13:05.52 ID:JtVFU86c0

ぐだ子「ダヴィンチちゃん、今の彼女の魔力って、何処から供給されてるのかな」

ダヴィンチ「そりゃあ、カルデアからだよ」

ダヴィンチ「今回の彼女はあくまでサーヴァントとして召喚された個体にすぎないからね」

ダヴィンチ「以前のような単独権限能力は無くなってると考えていい」

ぐだ子「そっか、じゃあ今の所はカルデアが破壊される心配はないのかな」

ダヴィンチ「そうだね、このカルデアは彼女にとっての生命線だ、制圧はしても破壊はないと考えていいと思う」

ぐだ子「なら、魔力供給を停止すれば……」

ダヴィンチ「それも試したんだけど……どうやらカルデアの魔力回路の一部が浸食を受けてるみたいなんだ」

ダヴィンチ「だから魔力を断って自滅を誘う作戦も、今のままだとちょっと難しい」

ぐだ子「ううーん……」

 

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 21:29:24.56 ID:JtVFU86c0

ダヴィンチ「けどね、方法がないわけでもないんだ」

ぐだ子「方法?」

ダヴィンチ「そう、魔力供給を断つ方法だよ」

ダヴィンチ「彼女はケイオスタイドによりカルデアに寄生する形で強制的に魔力を得ている」

ダヴィンチ「けど、彼女がサーヴァントである以上、覆せない法則が存在するんだ」

ぐだ子「……あ、そっか」

ダヴィンチ「そう、令呪だよ」

ダヴィンチ「令呪による強制停止命令を直接彼女に叩きこめば……彼女の能力を剥がせるはずさ」

ダヴィンチ「ぐだ子ちゃん、令呪は幾つ残ってるかな?」

ぐだ子「3つちゃんと揃ってるよ」

ダヴィンチ「宜しい」

ダヴィンチ「ただ今のままでは、彼女の強大な意志力に令呪が弾かれる可能性もある」

ダヴィンチ「だから、私の方で令呪を補佐する礼装を用意しよう」

ダヴィンチ「ぐだ子ちゃんは、礼装が完成するまでの間、ちょっと仲間探しをしてもらうよ」

ぐだ子「判った、ケイオスタイドの浸食を受けてない区画に、まだ無事なサーヴァントがいるかもしれないしね」」

ぐだ子「戦力を集めつつ礼装の完成を待って、総力戦で彼女の本体を叩く……」

ぐだ子「作戦はそんな感じかな」

ダヴィンチ「その通り、では行動開始だ!」

ぐだ子「了解!」

 

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 21:44:35.86 ID:JtVFU86c0

~ケイオスタイド領域~

~隔壁内~

式「よりによって、またお前と一緒かよ、ハサミ男」

メフィスト「ええ、ええ、まあ腐れ縁というやつですねえ、ふふふふ」

メフィスト「けれど、ワタクシは、ワタクシ、メフィストフェレスは?」

メフィスト「そんな縁を大事にしていきたいと感じる悪魔ですから?」

メフィスト「ですから、こんな絶望的な状況にも喜びを感じてしまうのでして」

メフィスト「だって人は絶望から逃れる為に醜く足掻き、最終的には悪魔に頼る生き物ですので」

メフィスト「我らにとっては人間と取引する絶好の好機という訳なんですねえ、はい、はい」

式「五月蠅い、本当に口を縫いつけるぞお前」

メフィスト「五月蠅いのはワタクシよりもあちらだと思いますよぉ」

ガンッ

ガンッガンッ

ガンッ

式「はあ、まあ、あっちも五月蠅いよな、誰だ外から隔壁叩いてるの」

式「ハサミ男、お前取引したいって言うならあっちとしてくれば?」

式「あのドロドロの化け物たち、お前の親戚みたいなもんなんだろ?」

 

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 21:55:27.78 ID:JtVFU86c0

メフィスト「おや、おやおや、おやおやおや、それは心外です、撤回してもらいたいものです」

式「何でだよ、あっちに居るのは前にマシュ達が言ってた古代の神の馴れの果てだろ?」

式「人類世界を滅ぼすもの、人類悪、だったらお前と似たようなもんじゃないか」

メフィスト「はあ、悲しい、ワタクシは悲しいです、あんなものと同じにされるなんて」

メフィスト「今まで努力してきた事をすべて台無しにされた気分です、はい、はい」

式「努力って……」

メフィスト「はい、努力です」

メフィスト「確かに?ワタクシ達悪魔は?世界を滅ぼす勢力に手を貸したりもしました」

メフィスト「けれど、本当に世界が滅びるとなるとまた話は別なのですよ?」

メフィスト「だって取引相手が居なくなりますから?」

メフィスト「新たな人類とか言う意味のわからない種族に取引が通用するとは思えませんし?」

メフィスト「そうなると悪魔の存在意義は限りなく薄れてしまうでしょう」

メフィスト「もし、仮に世界が、人類が滅びてしまうとしても?」

メフィスト「それは欺瞞と策略と権謀と疑心暗鬼と人間不信で彩られた物でなくては」

メフィスト「納得できません許容できません気持ちよくイケません」

メフィスト「たった一人の意志で何の感慨もなくあっさり世界を滅ぼしてしまうような存在は」

メフィスト「ワタクシ、虫唾が走る以外の感情は湧きません」

 

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:00:23.17 ID:JtVFU86c0

式「もういい、判ったから口を閉じててくれ」

式「お前と話すると、何時もこうだからな、話が長すぎる」

メフィスト「いえいえ、これでも話を短く簡潔にしたつもりで……」

バキリ

ドロリ

式「……!」

メフィスト「あら」

式「おい、泥が入ってきたぞ」

メフィスト「そのようですねえ、はい、はい」

式「はあ、面倒くさい……何であんな汚い泥の相手しなくちゃならないんだ」

式「そもそも、あんなの相手にしたら……服が汚れる」

メフィスト「何でも聞いた話では、足の裏に魔力を集中しておけば泥の上を歩けるらしいですよ」

メフィスト「まるでアメンボウみたいに、エリマキトカゲみたいに、ふふふ、楽しそうですねえ」

式「……それはいい事を聞いた」

 

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:17:25.69 ID:JtVFU86c0

バキリ、バキリと隔壁に亀裂が入る。

だが、侵入してくる泥の量はそれほどではなかった。

水位は精々、膝の上まで。

けれど、泥の代わりに、別の物が入ってきた。

隔壁の隙間をこじ開けながら、入ってきた。

2体の巨漢を伴ったその人物は……。

式「ん、あいつ、前に食堂で見た事がある気がする」

メフィスト「あれは、百貌のハサンさんですねえ」

メフィスト「1つの身体に100の人格を宿した多重人格者です」

式「100!?嘘だろ?」

メフィスト「いえいえ、これが嘘のような本当の話でして」

メフィスト「彼女の主人格は、なんと、恐ろしい事に」

メフィスト「それらの人格を全て完全に掌握しているらしいのです」

式「……おいおい、それは本当に、何というか、すごいな、こっちは2つでも持て余してるってのに」

式「出来れば話を聞きたかったもんだが……」

百貌「……」ブツブツ

メフィスト「どうやら、会話ができる状態ではないようですねえ」

メフィスト「まあ、泥の中を臆面もなく進んできたのですから、彼女は既に犯されているのでしょう」

メフィスト「見た所、百貌のハサンさんの後ろに居る巨漢のお2人も、彼女の人格が実体化したものかと」

 

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:27:17.35 ID:JtVFU86c0

式「はあ、それにしても……100かぁ、100ねぇ」

式「何というか、世界は広いな」

メフィスト「ええ、ええ、世界は広いのです、そして素晴らしく絶望的で素晴らしく醜い」

メフィスト「だからこそ、だからこそ、ワタクシ達が存在する価値があるのです!」

式「まあ、その存在も風前の灯だけどな」

メフィスト「おや、おやおや、ひょっとして、もしかして?」

メフィスト「諦めてらっしゃいますか、絶望してらっしゃいますか、取引が必要ですか」

式「誰が諦めるか」

式「確かに100の人格は驚異的だろう」

式「けど、だからって個の性能で劣ってる訳じゃない」

式「何人だろうが何百人だろうが」

式「生きているなら、殺して見せるさ」

 

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:28:37.43 ID:JtVFU86c0

メフィスト「ふふふ、なら競争してみましょうか、競争」

メフィスト「どちらが多く倒して見せるか、競争です、ええ、楽しいですねえ」

式「どちらが多くって……お前は爆弾を使うんだろう?」

式「こっちはナイフ1本なんだが」

メフィスト「……そうでした、このメフィスト、思慮足らずでした」

メフィスト「確かにナイフ1本で爆弾に勝てるはずはありません、ああ、悲しい」

式「いや、別に勝てるはずないとか言ってないからな」

メフィスト「いいのです、いいのです、ここはハンデを用意すべきです、公平に、公平に?」

式「……カチーンと来た、判った、50体以上殺せばいいんだろ、お前の爆弾より早く」

式「ああ、やってやるさ、やってやるよ、うん、出来る気がしてきた」

式「さあ、始めようじゃないか」

メフィスト「ああ、気の早いお方ですね、けど嫌いじゃありませんよ、貴女みたいな存在は」

 

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:47:45.41 ID:JtVFU86c0

百貌のハサンは、ケイオスタイドと相性が良くなかった。

彼女が持つ多重人格の実体化能力は、ケイオスタイドが元々持っていた能力「個体増殖」の下位互換だからだ。

「個体増殖」には、百貌のハサンのような「数の制限」は存在しない。

だからこそ、彼女は人類悪サイドでは最弱の存在となってしまった。

そんな百貌のハサンの前に、2人のサーヴァントが対峙していた。

ナイフを手にした1人は、海面を蹴り超高速でこちらに迫り。

道化師の恰好をしたもう1人は、自らの周辺に複数の爆弾を実体化させ。

百貌のハサンは、すでに実体化していた人格2体と共に、分裂を開始した。

「3人が、9人」

 

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:48:30.65 ID:JtVFU86c0

少女のナイフが巨漢を切り裂いた。

驚くべき事に、巨漢は一撃で存在消滅を起こす。

直後、道化師の爆弾が百貌のハサン達に殺到し、3体が消し炭になる。

残る百貌のハサンは5体。

「5人が、25人」

 

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:49:07.94 ID:JtVFU86c0

増殖した百貌のハサンに包囲される前に、ナイフを持った少女が後退する。

恐るべき事に、後退しながら5体を切り裂いて見せる。

切られた分身は、先ほどと同じく存在消滅を起こす。

その隙に迫っていた道化師が、2体の分身の首を切り裂いた。

残る百貌のハサンは18体。

「18人が、324人」

 

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:50:11.95 ID:JtVFU86c0

急激に数を増した分身にナイフの少女が飲まれる。

と、同時に彼女の周囲を覆っていた分身のうち10体が消滅。

だが、空いた穴は即座に他の分身で埋められた。

少女の血が周囲に飛び散る。

道化師は宙を舞い、新たな爆弾を生み出し。

ナイフの少女を覆う分身群にそれを投擲しようとして。

少し躊躇する。

残る百貌のハサンは314体。

「314人が」

 

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:51:14.07 ID:JtVFU86c0

「98596人」

 

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 22:54:21.83 ID:JtVFU86c0

百貌のハサンは、人類悪サイドで最弱である。

彼女の分裂上限はケイオスタイドの改造を受けて尚、1億程度。

そこまでしか分裂できない。

それだけしか分裂できない。

それが限界。

それが故に、彼女は名は既に百貌のハサンではなく。

億貌のハサン。

同族からは、そう呼ばれている。

 

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 23:18:38.06 ID:JtVFU86c0

「ああ、ああ、これは何と絶望的なんでしょう」

「この区画が全て、全て、ハサンさんで埋まってしまいました」

「いえいえ、そんな気はしていたのです、だってハサンさん」

「倍々ゲームで増えていっていましたし?」

「叩いたら増えるクッキーみたいな感じで?」

「あの状況で、私が爆弾を投下しても、戦況は変わらなかったと思います」

「だから、あの時躊躇したのは、彼女を巻き込むかもしれないって判断であった訳はありません」

「決してありませんよ、ええ、ええ」

「そんな選択をしてしまったのならば、ワタクシは悪魔として失格でございます」

「首を吊らなくてはならなくなります」

「おっと、そろそろ幕が下りる時間でございますね」

「正直、あの連中に取り込まれると思うとうんざりするのですけれど」

「まあ、長い人生、そんな経験を積んでおくのも、良い事なのかもしれません」

「では、では、みなさま」

「また会う日まで」

「お相手は、メフィスト・フェレスでございました」

 

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 23:33:39.40 ID:JtVFU86c0

~ケイオスタイド領域内~

~通路・隔壁内~

エリザ「ああ、もう、やんなっちゃうわ、こんな所に閉じ込められるなんて」

エリザ「そう思わない?緑」

ロビン「はいはい、同意見ですよ、お嬢」

エリザ「さっさとこんな所、抜け出してぐだ子達に合流しましょ」

ロビン「今隔壁の魔力回路に侵入してるんだから、あんま声かけないでくれますかねぇ」

エリザ「はぁ、まだ終わんないの?」

ロビン「10秒おきに口はさまれてたら、終わるもんも終わらねえっての」

エリザ「だって……喋ってないと不安で」

ロビン「おや、お嬢からそんな言葉が出るなんて珍しい」

ロビン「怖いのかい」

エリザ「べ、別に怖くは無いわよ、それに……」

エリザ「仮に怖くても、我慢は出来るもの」

ロビン「じゃあ、何が不安なんだ」

エリザ「ほら、あの子達よ、ネロやニトクリス、それに茨木童子」

ロビン「へえ?」

 

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 23:44:52.80 ID:JtVFU86c0

エリザ「ニトクリスはね、ちょっとおっちょこちょいな所があるけど」

エリザ「基本的には理知的だから、大丈夫だと思う」

エリザ「茨木は、熱くなると周囲が見えなくなる所があるけど」

エリザ「けど、あの子は強いし、そうそう負けないと思う」

エリザ「ネロも、私のライバルだし、多少の事で挫けたりしないでしょうね」

ロビン「じゃあ、まあ大丈夫なんじゃねえの」

エリザ「……けど、けど心配なのよ」

エリザ「もし、あの子達が戦いに負けて、あの泥に触れちゃったら、私の事とか忘れちゃうのかなって」

エリザ「もし覚えてても、どうでもよくなっちゃうのかなって」

エリザ「それが……心配で……」

 

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/29(日) 23:49:13.07 ID:JtVFU86c0

ロビン「……ぷはっ」

エリザ「……何がおかしいのよ」

ロビン「いや、あのエリザベート・バートリーがこんなにしおらしくなるなんて、思ってなかったんで」

エリザ「……殺すわよ」

ロビン「すまねえ、別に馬鹿にしてる訳じゃないんだって」

ロビン「ただ、まあ、お嬢も成長してるんだなって、ちょっと感慨深かっただけさ」

エリザ「成長?そりゃ、毎日アイドルとして努力してるし、当然でしょ?」

ロビン「いやいや、そんな話じゃなくってですねぇ」

カチンッ

ロビン「お、隔壁の開放回路発見……」

ロビン「これで何時でも隔壁を開けられるが……どうする?」

エリザ「当然、開けるわ」

ロビン「いやいや、もしかしたら向こうは泥の海かもしれねえよ?」

エリザ「いいから開けなさい、私の勘が、この先が正しい道だって言ってるから」

ロビン「はいはい、わかりやしたよ、お嬢」ハァ

 

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/30(月) 00:05:01.09 ID:VB6crxkn0

ガコンと音を立てて隔壁が開く。

その奥には通路が続いている。

幸い、ケイオスタイドの浸食は受けていないようだ。

そして、その通路に、1つの人影があった。

エリザ「ネロ、ネロじゃない!」

ネロ「む、お主は……エリザーベート、無事であったか」

エリザ「ええ、無事にきまってるじゃない、私よ?私なのよ?」

ネロ「ふははは、そうであったな、我がライバルがそう簡単に倒れる訳はなかった!」

ネロ「喜ばしい!喜ばしいぞ!」

エリザ「もう、子供みたいに喜んじゃって、仕方ないわねえ」フッ

ロビン「お嬢も相当な喜びようでしたけどねぇ」

エリザ「緑、五月蠅い」

ネロ「ほう、緑の狩人、そなたもいるのか」

エリザ「ええ、隔壁に一緒に閉じ込められちゃったのよ」

エリザ「けど、こいつは中々役に立つしね?見捨てないで連れて来てあげたわ」

 

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/30(月) 00:29:32.36 ID:VB6crxkn0

ネロ「そうかそうか、うむ、仲間は多い方がよいからのう」

ネロ「流石は我がライバル、先見の明がある」

エリザ「も、もう、褒めすぎよ」

ロビン「折角の再開に水を差すようで何だが、これからどうするんだい」

ロビン「この先にも隔壁があるみたいだけど」

ネロ「うむ、確かにここの隔壁は厄介じゃな、何とか突破してカルデアに合流する術を探さぬと」

エリザ「緑なら隔壁を開けられるわよ?少し時間がかかるけどね」

ネロ「ほう、ロビン・フットは罠の設置だけでなく、盗賊の真似事も得意なのか」

ロビン「まあ、裏方くらいしかできねえですからねぇ」

 

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/30(月) 00:47:17.76 ID:VB6crxkn0

ロビン「じゃ、まあ次の隔壁を開けてみますかね」

エリザ「ええ、急いでね?」

ロビン「はいはい……」

ネロ「所で2人とも、腹は空かぬか」

エリザ「そういえば、少しお腹が減ったかしら」

ロビン「カルデアからの魔力供給量が減ってるみたいだな」

ロビン「向こうも向こうで、色々大変そうだ」

ネロ「うむ、腹が減っては戦が出来ぬと言うからな」

ネロ「何より、惨めな気分になってしまう」

ネロ「そこでじゃ、エリザベート、そなたに頼みたい事がある」

エリザ「え、私?私の料理に期待されてる?けど流石に食材がないと……」

ネロ「いやいや、あるではないか、そこに」

エリザ「そこって……え、これ私の尻尾よ」

ネロ「うむ、余は前から思っておった、その尻尾は美味そうだなと」

エリザ「だ、駄目だからね!?これは私のチャームポイントなの!」

 

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/30(月) 00:51:59.25 ID:VB6crxkn0

ネロ「そうか、残念じゃ……」

エリザ「もう、そんな冗談言ってる場合じゃないでしょうに」ハァ

ネロ「では、その右手はどうじゃ」

エリザ「は?」

ネロ「勿論、左手でもかまわんぞ、右足もいいな、左足も」

エリザ「……ネロ?」

ネロ「目玉もいいな、エリザベートの身体はどれも一級品じゃ、迷ってしまう」

ネロ「耳も、唇も、皮膚も、血液も、心臓も、腎臓も、腸も、脳も」

ネロ「おっとそこまでやるとエリサベートが死んでしまう」

ネロ「いかんいかん、脳だけは残しておかないと」

ネロ「しかし、他の部分は大丈夫じゃろ」

ネロ「何といってもそなたは」

ネロ「吸血鬼なのだから」

 

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/30(月) 00:55:34.79 ID:VB6crxkn0

ネロ「吸血鬼の身体は不死だと聞いた」

ネロ「頭を潰すか、心臓を杭で貫かぬ限り死ぬ事は無いと」

ネロ「便利な身体じゃ、うん、正直羨ましい」

ネロ「しかし、余はまだその様子を見た事がない」

ネロ「いい機会じゃから、見させて貰ってもかまわんか」

ネロ「なあに、少し身体を真っ二つにするだけじゃ」

ネロ「縦ではないぞ、横じゃ」

ネロ「なあ、エリザベート・バートリー」

ネロ「我らはライバル同士、いや」

ネロ「トモダチであろう?」

ネロ「それくらい構わぬよな」

 

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/30(月) 00:59:18.56 ID:VB6crxkn0

何時もと変わらぬ笑顔でそう言ってくるネロ。

思わず私は「いいわよ」と応えそうになった。

だから、反応が遅れた。

気がつくとネロは目の前に居て。

彼女の持つ真紅の剣が。

私のお腹に。

 

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/30(月) 01:07:31.76 ID:VB6crxkn0

ドスンッ

何かが何かを貫く音がした。

思わず目を瞑ってしまう。

痛い。

痛い。

きっと痛い。

あら、けど。

痛くないわね。

目を開けると、ネロは少し離れた場所に居た。

その足元に、血の跡が、ポツポツと。

怪我、してる?

ネロがこちらに顔を向けた時。

その理由がわかった。

ネロの眼に。

ネロの左目に。

深々と小さな矢が突き刺さっていた。

ああ、痛そう。

凄く痛そう。

なんで、どうして。

そう混乱する中、廊下にネロの笑い声が響いた。

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」

「冗談じゃ冗談じゃ!そう怖い顔をするな緑の狩人!あははははははははははははははははははは!」

 

70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 02:46:50.11 ID:JJzD8pQD0

ロビン「冗談には見えなかったけどな」

ロビン「アンタの眼、昔よく見た事があるぜ」

ロビン「自分以外のすべてを餌にしか思ってない、腐った為政者の眼だ」

ロビン「少し前のアンタだったら、そんな目はしてなかったはずだ」

ロビン「って事は……」

ネロ「く、くくく、くははははは」

ロビン「アンタ、泥に触れたな?」

ネロ「ふはははははははははははははははははははははははははははは!!」

 

71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 02:55:25.76 ID:JJzD8pQD0

ネロ「そう、そう、確かに余は触れた、触れたぞ!」

ネロ「余の寝室に侵入してきた、あの泥に!」

ネロ「しかしな、あの泥は我らが思っていたようなものではなかったのだ」

ネロ「あれは、我らを受け入れる物だったのだ」

ネロ「余の全てを、愛を、憎しみを、施しを、欲望を、喜びを、悲しみを、希望を、絶望を、罪を、罰を」

ネロ「全て、全て受け入れてくれたのだ」

ネロ「全て許してくれた、それで良しと」

ネロ「余は余のままでいいと、言ってくれたのだ」

ネロ「ああ、素晴らしい、あんな気持ちになれるとは」

ネロ「晴れやかだ、頭の痛みも、もう感じぬほどにな!」

ネロ「あはははははははははははははははははははははははははははははは!!」

 

72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 03:15:19.20 ID:JJzD8pQD0

ロビン「……その様子だと、打ち込んだ毒も効果なかったみたいだな」

ネロ「毒、毒か、うむ、先ほどの矢は毒矢だったか」

ネロ「余はつくづく毒に縁があると見える」

ネロ「生前は余を毒殺しようとした者は誰であれ始末していたのだぞ」

ネロ「それが身内であろうと、だ」

ネロ「……だが安心せよ、我が陣営には優秀な毒師がおるからな」

ネロ「その影響下にある余には、あらゆる毒は効かぬのだ」

ネロ「故に緑の狩人よ、そなたを殺すのはやめておこう」

ネロ「四肢を捥いで吊るしておく程度に留めておくとしよう」

ネロ「寛大な余に感謝するがいい」

ネロ「なあ、エリザベート、お主も、そういうのが好きだったであろう?」

ネロ「共に楽しもうではないか、ふ、ふふふははははははははははははは!」

 

73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 03:20:55.17 ID:JJzD8pQD0

エリザ「うそ、嘘よ、こんなのがネロである訳ないわ」

エリザ「そ、そうよ、偽物よ、きっとそう、私を騙そうったってそうはいかないんだから!」

ネロ「むう、赤ランサーよ、悲しい事を言うな」

ネロ「余とそなたはライバルであろう、本物かどうかなど見ただけで判ってほしいものだ」

ネロ「……いや、これは挑戦か?」

ネロ「余が余である証を示せと、そう言っているのだな?」

ネロ「余が新たに作り上げた劇場の存在を感じ取っているのだな?」

ネロ「流石は我がライバル!ならば、余もその期待に応えねばならぬ!」

ロビン「お嬢!下がれ!」グイッ

エリザ「ふえっ!?」

 

74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 03:32:22.04 ID:JJzD8pQD0

「築かれよ我が摩天、ここに至高の光を示せ!」

「我が才を見よ、万雷の喝采を聞け!」

「インペリウムの誉れをここに!」

ネロを中心に魔力が渦巻く。

それはエリザベートとロビンの周囲にまで及び。

廊下の上に、別の存在が具現化していく。

絢爛な建築物、真紅の天幕。

「咲き誇る花のごとく」

その黄金の劇場は。

「開け! 真紅の劇場よ!!」

赤い血に塗れていた。

 

75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 03:39:58.99 ID:JJzD8pQD0

天幕からドロリ、と血が滴る。

絨毯からは鉄分を含んだ匂いが漂い。

シャンデリアには、首の無い死体が吊るされている。

あそこにも。

ここにも。

向こうにも。

何人もの死体が。

死体が。

まるで劇場を飾る装飾品のように。

この劇場は、ネロ・クラウディウスの記憶が産んだものだ。

彼女が実際に見て、強く記憶した姿が具現化されている。

つまり。

彼女は、この劇場を。

この真紅の劇場を、実際に見た事があるという事になる。

 

76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 03:43:53.45 ID:JJzD8pQD0

ロビン「くっ、これは……流石に見ていて気分がいいもんじゃねえな」

エリザ「……」

ロビン「おい、お嬢、気を確かに持て」

ロビン「俺達はこの擬似固有結界に閉じ込められた、何とか抜け出す方法を探さないと……」

エリザ「ねえ、緑、どうしよう……」

ロビン「だから、今それを考えて……」

エリザ「どうしよう、どうしたらいい、ねえ、緑」

ロビン「……お嬢?」

エリザ「私、どうしたらいいかしら、ああ、止まらない、止まらないの」

 

77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 03:49:55.57 ID:JJzD8pQD0

「だって、だって、私にはこの劇場が凄く美しく映るの」

「あの血、あの死体、この匂い、全て、全てが」

「ああ、凄く興奮する、いい、いいわ、いいわよこれ」

「私の好みにドンピシャよ」

「これよ、私はこれを求めていたの」

「流石よ、流石は私のライバル!」

「こんな光景を生み出せるなんて!」

「感動する、心が動く、自然と涙が出てくる!」

「私の中の何かが、この光景を肯定しろと訴えかけてくる!」

「そうよ、そうなのよ、これが、これが私なの!」

「これを美しいと思えるのが私なの!」

「そうなのよ!ずっと忘れていた!思い出したわ!」

 

78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 03:50:24.57 ID:JJzD8pQD0

「こんなものが、私なんだってことを」

 

79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 04:01:33.70 ID:JJzD8pQD0

Fate


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