【艦これ】加賀「……文化的生活?」

艦隊これくしょん -艦これ-

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1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:50:51.34 ID:BgcXyfkQ0
注意
・設定などの知識不足があると思います。
・オリジナル設定が少なからずあります。
・初投稿です。
よろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1468813851


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:51:52.43 ID:BgcXyfkQ0
鎮守府が見渡せる丘

加賀「……なぜ私がこんな場所に……」

加賀「ついこの間まで最前線の真っ只中でバッタバッタと深海棲艦をなぎ倒す活躍をしていたはず……」

加賀「それが、少し意見を述べただけでこんな辺鄙な鎮守府に飛ばされるなんて……」

加賀「不幸だわ……」

加賀「……いえ加賀、こんな所でも私の実力出せば評価されるはず、前線の鎮守府に舞い戻ることだってまだ夢ではない」

加賀「正当に評価をされさえすれば私はこんな所にいる艦娘ではないんだから」グッ

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:52:49.53 ID:BgcXyfkQ0
パシャッ

加賀「……なに?」

男性「いやー、珍しいね。こんな別嬪さんがこんなところに」

加賀「……あなた、民間の方かしら。軍部施設の周辺に近づくのは誉められることじゃないわよ」

男性「え? ああ、大丈夫大丈夫、俺、ちゃんと許可貰ってる人だから」

加賀「許可を貰ってるからって……いえ、もういいわ勝手にして」

男性「……じゃああんたはどうなんだよ」

加賀「私?」

男性「あんたみたいな別嬪さんが軍部施設になんのようなんだ?」

加賀「……私は艦娘よ。今日からここに所属するの」

男性「へぇ、艦娘か。じゃあ、今日からって時に、何でそんな辛気くさい顔してんのよ」

加賀「……来たくなかったのよ、こんな所には」

男性「……へぇ」

加賀「ここの鎮守府は、ロクな戦績も残せないくらい出撃も敵勢力もいないような土地なの。艦娘にとっては左遷よ」

男性「なるほど、俺はいいとこだと思うんだけどね。ここは」

男性「緑も豊かだし、海も穏やかだし、平和だし」

加賀「民間人にとってそうかもしれないけど、艦娘として生きる私にとっては戦わなければ生きる意味すら危うい土地よ」

男性「生きる意味ねぇ」

加賀「ここで意地でも功績を上げて、また前線に戻ってやるのよ。絶対に……」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:53:44.09 ID:BgcXyfkQ0
男性「……ふぅん」

加賀「……こんなこと、あなたに話す事じゃなかったわね」

男性「いや、いいのいいの。つまり、早くこんな辺鄙な鎮守府から出て行きたいってこったろ?」

加賀「ええそうよ。……一航戦の誇りのために」

男性「……まっ、どんな気持ちにしたって今日が門出だろ。一枚撮ってもいいかい?」

加賀「……別にいいけど、悪用しないでしょうね」

男性「しないしない。じゃあ、海をバックにして撮ろうか、ポーズは何でも構わないから」

加賀「なんでもいいから撮るなら撮りなさい」

男性「……そんな仏頂面でいいの?」

加賀「いつもこんな顔よ」

男性「まぁいいか……」

パシャッ

加賀「満足かしら。じゃあ私は行くから、さようなら」スタスタ

男性「写真はどうする? 鎮守府に届けようか」

加賀「いらないわ」スタスタ…

男性「あっそ」

男性「……なるほどね、あれが加賀か。また厄介そうなのが来たもんだね」

…………

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:54:47.00 ID:BgcXyfkQ0
鎮守府内

大淀「……いつもは普通に執務室にお連れしまして提督にご挨拶と業務連絡を行うのですが」

加賀「……どういうこと?」

大淀「いえ、その、なんと言いますか……」

加賀「歯切れが悪いわね。あなた秘書艦でしょう、もっとしっかりして欲しいのだけれど」

大淀「すみません。……えっと、つまり、ここの鎮守府はたぶんこれまで加賀さんがいらっしゃった鎮守府とかなり……というか全く違うというか」

加賀「鎮守府によって業務形態が異なることなんて承知しているわ」

大淀「いえ、業務形態どころか、その……ここはとにかく特殊でして、全体的に緩い……と言いますか自由といいますか……」

大淀「提督も自由な方でして……たびたびどこかにふらっと消えてしまいまして……。いまもまだ戻られていないのですが」

加賀(前の鎮守府ではここのことを『艦娘の墓場』とか呼んでいたけど、本当に相当酷いみたいね)

大淀「もちろん! お仕事はキチンとする方なんですよ! それは安心してください!」

加賀(ふらっとどこかへ消える人が『お仕事はキチンとする方』なわけがないわ)

加賀「……はあ」

加賀「ねえ、ここは本当に鎮守府として機能しているの?」

大淀「えっ! も、もちろんですよ! すこーし特殊ですが、艦娘の仲もいいですし、提督はお優しい方ですし……」

加賀「私が前にいた鎮守府は艦娘の仲はそれほど良くなかったし、提督も優しくはなかった、けど戦果はここの比にならないくらいあげていたわ」

大淀「ああ、たしか加賀さんの前の所属は前線のエリート鎮守府でしたね……」

加賀「この国のために働いているのだから、仲良くおてて繋いでというのも結構だけれど、戦果をキチンとあげることこそ鎮守府としては重要なことだと思うけれどね」

大淀「……す、すみません」

加賀「いいのよ、私は。どんなに緩くても、ここの提督が私を正当に評価してくれればまた前線へと戻れるのだろうし」

大淀「そ、そうですか」

加賀「……」

大淀「えーと……、あっ、そしたら提督を待つ間に鎮守府の中を案内しますね」

加賀「ええ、このまま待っているのも時間の無駄だし、そうするわ」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:55:52.79 ID:BgcXyfkQ0
スタスタ

加賀「……」

大淀「……」

加賀「ねえ」

大淀「は、はい!」

加賀「……歩いていて目にはいるのだけれど、美術品が多くないかしら、ここ」

大淀「あー……、そうかもしれませんね」

加賀「額に入った立派な絵画とか、陶磁器とか……提督の趣味かしら」

大淀「提督の趣味、かもしれませんが……」

加賀「『かも』?」

大淀「提督はここの艦娘全員のことを気遣ってくれていますから、飾っているのでしょう」

加賀「……そう」

加賀(芸術鑑賞でも推進してるのかしら。……平和ボケしてるわね、艦娘も提督も)

スタスタ

大淀「この先にあるのが食堂です。調理場も食堂のものを使ってもかまいませんよ」

……

大淀「あそこが訓練場と、弓道場です。その近くには運動場もあります」

……

大淀「こちらは修理ドッグになります。隣接する大浴場は六時から二十二時までになりますので気をつけてください」

……

大淀「工廠は少し離れたところにありますので、また改めて利用する際に案内しますね」

加賀「……私はとくに工廠へ行く用はないのだけれど」

大淀「あら、そうですか? 結構たくさんの娘が使ってますから、勝手によく使う施設だと思ってしまいました。すみません」

加賀「いいけど」

加賀(工廠をたくさんの娘が使う? 明石とか夕張がたくさんいるのかしら、ここ)

……

大淀「これくらいですね。もっと細かく案内するのはまた時間があるときの方がよさそうですね」

加賀「……」

加賀(まだなにがあるって言うのよ。というか、案内された場所もそこまで重要な場所と感じないのだけれど)

大淀「それでは、提督が戻られたという連絡がありましたので、早速執務室に行きましょう」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:56:41.08 ID:BgcXyfkQ0
加賀「……」

スタスタ…

加賀(ここがどんな場所であろうと提督には好印象を与えないと。とにかく不満は漏らさないように……)

加賀(この鎮守府がどんなに糞でも、それを出してはダメ。提督に気に入られないと……私は一航戦として前線へ舞い戻るのよ)

コンコン
大淀「大淀です。加賀さんを連れてきました」

??「おっ、来たね」ガチャッ

大淀「わっ、提督! なんでそちらから開けるんですか!」

??「いやね、そろそろだと思って扉の前で待ってたんだ」

大淀「ビックリさせないでください! 加賀さんもいるんですから!」

加賀「」

大淀「……加賀さん?」

加賀「……えっ」

男性「ん? ああ、さっきぶりだね加賀さん」

加賀「な、なんで、あなたが……」

提督「私がここの鎮守府を治めています、提督です。どうぞ、今後よろしく」

………

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 12:57:32.71 ID:BgcXyfkQ0
執務室

提督「……連絡事項は以上だ。なにか質問はあるか?」

加賀「……なんで、先程は民間人の振りをしていたんでしょうか」

提督「いや、あれは加賀さんが勝手に勘違いしただけでしょ」

加賀「……」

提督「それに、俺はあそこで趣味の写真撮影をするって許可を大淀にとってたし、嘘は吐いてないぞ」

加賀「くっ」

提督「……『提督に悪印象を与えた、もうキャリアアップの道はない』って顔してるね」

加賀「……ええ、あの丘で正直な気持ちを話してしまいましたから」

提督「へっへっへっ、まあそうだよな」

大淀「て、提督、そんな意地悪やめてください」コソコソ

提督「おっと失礼」

提督「まあ加賀さん、実際は正直に話してくれて嬉しかったし、それで加賀さんに悪い印象を抱いたとかはないから安心してよ」

加賀「……」

提督「まったく信用してない顔だな」

加賀「……前の鎮守府でも、正直な意見をそこの提督に述べました。その結果、いまここにいます」

提督「なるほどね」

提督「なんだっけ、加賀さんは『戦いこそが艦娘の生きる意味』って考えてるんだよね」

加賀「はい。私たちは深海棲艦と戦うために生まれた兵器です。戦うことこそが生きる意味であり、義務であると考えています」

提督「……そうか」

大淀「……」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:00:04.25 ID:BgcXyfkQ0
提督「まあ、その考えも否定はしないよ俺は。軍人としては正しいとも思う」

提督「でも、俺はここで、ここの鎮守府で一つの方針を持って運営させてもらってる」

提督「君たち艦娘に『文化的生活』を送ってもらいたい、ということだ」

加賀「文化的生活?」

提督「ああ。君は先程自分のことを『兵器』だと言ったけどね、俺は君たちを俺と同じ『人間』だと思ってる」

加賀「……」

提督「艦娘だって色々なことを感じて、考えて、発信する力を持っているんだ。なのに戦いだけに明け暮れてしまうというのは勿体ないと思う」

加賀「……ですが、私たちが戦わなければだれが戦うというんですか? それでは人間は深海棲艦に侵略されてしまいますよね。人間では深海棲艦に太刀打ちできない、だからこそ艦娘は戦わなければならない」

提督「もちろんそうだな」

提督「だが俺は艦娘にも、戦い以外にも生きがいを探して欲しいと考えている。そんな『戦うことこそが生きる意味』というのは、人間として悲しすぎる」

加賀「ですから、そんな甘い考えでは人間は滅びてしまうと言っているのです」

提督「それはそうだ。だから、戦うことは俺以外に任せるって言ってんだ」

加賀「……ふざけてるんですか?」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:01:02.81 ID:BgcXyfkQ0
提督「いや」

提督「君が前にいた鎮守府を筆頭に、全国には深海棲艦を殲滅してやろうと躍起になっている鎮守府なんてごまんとある。だから無理して戦う仕事はそっちに任せちまう」

提督「ここの鎮守府の仕事は国を守ることじゃない。深海棲艦を滅ぼすことでもない。ただ、ここの鎮守府を守ることだけだ」

加賀「そんなの……軍としてあるまじき」

提督「だが、ここがあるおかげでここら一帯の地域は深海棲艦の脅威から守られていることになっている。だからこそ軍はここを手放さない」

提督「それに、もともとそこまで敵が多い地域でもない、だから俺は望んでここに来た。そしてここに来た艦娘の事だけを考えてる」

加賀「そんな姿勢、軍人として恥ずかしくないの?」

提督「恥ずかしくないさ。少し前までに別の場所でもう嫌と言うほど戦ったからな、いまは好きなことやらせてもらう」

提督「それに、この世の全ての艦娘を導こうなんざ考えてないさ。俺一人にそんな力はないよ」

提督「俺の手が届くだけ、この鎮守府だけ、俺は艦娘たちに戦い以外の生きがいを見つけてもらおうとしてる」

加賀「国費を犠牲にしたエゴだわそんなの、許されることじゃない」

提督「国費は国民に使うべきだろう? 俺にとっては艦娘だって国民だ」

加賀「……なるほど。だから、ここは『艦娘の墓場』なのね」

加賀「ここは戦いから逃げた、腑抜けた艦娘にお似合いの場所だわ」

大淀「加賀さんっ!!」バンッ!

提督「大淀」

大淀「っ!! ……失礼、いたしました」

提督「すまんね。加賀さん」

加賀「……いえ、私も口が過ぎました」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:02:47.04 ID:BgcXyfkQ0
加賀「でも、私はここにいるべき艦娘ではない、それはわかったでしょう」

提督「ああ、そうかもしれない。だが君は現在、一年間はこの鎮守府に所属することになっている」

提督「だから一年、いや半年でもいい、実際にここにいてくれないか。それでも君の意志がいまと変わらない物だったら、その時は俺が大本営へと推薦状を書こう」

加賀「……そんなこといいのかしら」

提督「それなりに上へは顔が利く。君を再び前線へと戻れるようにしよう」

加賀「……わかったわ」

提督「よし」

加賀「でも、私がここにいる限り深海棲艦との戦いに手を抜くつもりはないから」

提督「……了解した」

提督「だが、加賀さん」

加賀「……何かしら」

提督「この鎮守府にいる限り、君もなにか戦い以外に『やりたいこと』を見つけるようにしてくれ。意識するだけでもいい」

提督「戦うためだけに生まれたなんてこと、言うな」

加賀「……善処するわ」

………

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:05:12.67 ID:BgcXyfkQ0
加賀「失礼します」

提督「ああ。そうだ、加賀さんの部屋まで案内しよう」

加賀「別にそんな――」

ガチャッ
パシャッ

加賀「きゃっ」

青葉「どうもー!」

提督「おお、青葉か」

青葉「新しい方が来たとのことでしたので、これは激写するしかないと思いましてね」パシャッパシャッ

加賀「な、なに。なんですか!?」

提督「青葉、加賀が困ってるぞ」

青葉「あっ、ごめんなさい。ちょっとふざけようと思っただけですので」ペコリ

提督「それにな青葉、もう俺がちゃーんと加賀さんの写真は撮ったから大丈夫だ」

青葉「えーっ、どこでですか!? ていうかどのタイミングで!?」

提督「加賀さんがここにくる前に、裏の丘のところで」

青葉「おー! いいロケーションじゃないですか! あとで見せてくださいね!」

提督「もちろんだ」

青葉「楽しみにしてますからねー。あっそうそう、はい提督、この前の写真現像したの持ってきましたよ」スッ

提督「ああ、いつもありがとうな」

青葉「いえいえ。それでは用もすみましたので、青葉失礼します」ビシッ

青葉「あっ、加賀さん、これからよろしくお願いしますね、あと先ほどは失礼いたしました」

加賀「え、ええ」

青葉「それでは!」タッタッタッタ…

……

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:06:06.45 ID:BgcXyfkQ0
加賀「……なんだか台風みたいね」

提督「ああ、青葉な。アイツは元気だからな。いつもあっちこっち走り回って写真撮ってるんだ」

加賀「……そう」

提督「もともと俺も趣味でカメラいじってたけど、少し青葉に勧めてみたら俺よりハマりやがった」

加賀「……」

提督「ここでの行事の写真撮ったりもしてくれるけど、風景写真とかも上手でな」

提督「ふと『撮りたいっ!』って思って撮ったらしい風景写真とか……あっほら、この写真だ」

加賀「……この写真」

加賀(廊下に飾ってある写真はあの娘が撮った物だったのね……)

提督「これ、新聞社の写真コンテストに初めて出して銀賞とってよ、新聞にも小さくだけど載ったんだぜ」

加賀「……そう。別に興味ないわ」スタスタ

提督「そっか、あっじゃあこれはどうだ」スタスタ

加賀「……これ?」

提督「ああ、この絵、まるで売り物みたいだろ」

加賀「そう、ね」

加賀(高価な絵画かと思ってたのだけれど)

提督「これは駆逐艦の時雨が描いたんだ。執務室から見た海らしい」

加賀「これは、たしかに見事ね」

提督「さっき青葉に貰った写真な。先月、この絵の授賞式に出席した時のなんだ」

提督「時雨と俺と記録係の青葉とで行って、久々に晴れ着着てさ。時雨と青葉も綺麗なドレス着てな」

提督「時雨もなんか偉い美術家の人と話したりしてて、俺なんか蚊帳の外よ」

加賀「へぇ……」

提督「時雨は結構絵画コンテストの常連だったりするから、色々注目されてるらしい」

加賀「……それで、その時雨の練度はいくつなのかしら?」

提督「……絵の練度は155だ」

加賀「戦力としては?」

提督「……この間やっと20になったくらい」

……

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:07:11.64 ID:BgcXyfkQ0
スタスタ

加賀「確かにすごいと思うわ。私には出来ないことをしていると思う」

加賀「でも、私の物差しは戦うことなの。戦力として使い物にならなければ、艦娘としては必要ないわ」

提督「……手厳しいね、加賀さんは」

加賀「先ほどから思ってはいたけど、ここは出撃はちゃんとしているの? 遠征は?」

提督「最低限はしてるね。加賀さんには耐えられないかもしれないけど」

加賀「そう、しているという事実があるならいいわ」

提督「加賀さん、絵とか興味ある?」

加賀「あると思うの?」

提督「さあ、それはやってみなくちゃ分からないだろ」

加賀「はあ……。ないわよ、全然」

加賀「見るのは楽だけど、描きたいとは毛ほどにも思いません」

提督「残念、まあそんな簡単に生きがいが見つかるとは俺も思ってはいないけどね」

加賀「何のために生きるか、なんてあなたに決められたくないわ」

提督「俺は決めないさ。決められるように選択肢を増やしてやるのが俺の仕事」

加賀「……そう」

提督「あれ、『あなたの仕事は戦う事でしょ』とか言わないのか」

加賀「……そういうことは思っても口に出さないものよ

提督「おっと、すまない」

提督「っと、加賀。ここがお前の部屋だ」

加賀「案内、ありがとうございました」

提督「ここら一角は正規空母の部屋がだから、もし分からないことでもあればお隣さんにでもきいてくれ。それがダメなら俺とか大淀にきけ」

加賀「はい」

提督「あと、仕事してるとき以外は基本的に自由時間だから、謀反以外なら鎮守府で何してもいいからな」

加賀「はい」

提督「それじゃあ」

加賀「……提督」

提督「ん?」

加賀「半年間、よろしくお願いします」

提督「……ああ、これからよろしく」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:07:55.12 ID:BgcXyfkQ0
賀の自室

加賀「……はあ」

加賀「……一人一部屋なのね」

加賀(前の鎮守府じゃ他の艦娘と相部屋だったわよね、たぶん。誰と一緒だったかは覚えてないけれど)

ポスッ

加賀「ベッドにただただ寝転がるなんて、久々な気がする……」

加賀(部屋なんて出撃と入渠の合間に使った覚えしかないわ……)

加賀「部屋というより、ただ睡眠をとる場所でしかなかったわね」

加賀「……こんな広い部屋を貰っても、どう使えばいいかも分からないわ……」

加賀「……生きがい、ってやつに使えばいいのかしら」

加賀「……」

加賀「艦載機でも置けばいいのかしら」

加賀「……」

加賀「……馬鹿らしい」

コンコンッ

加賀「誰?」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:08:47.81 ID:BgcXyfkQ0
??「あ、あの! 隣の部屋の翔鶴です! 挨拶をと思いまして」

加賀「……ふぅ」

ガチャッ

翔鶴「あっ、始めまして。同じ正規空母……ですよね? 翔鶴型一番艦の翔鶴と申します。こんな所なので色々慣れないことも多くなると思いますが、分からないことがあればなんでも聞いてください!」

加賀「……加賀型一番艦の加賀よ。よろしく」

翔鶴「……」

加賀「……」

翔鶴「……えっと」

加賀「別に無理して話題を探さなくてもいいのよ」

翔鶴「そ、そんな! その、私、加賀さんとお話ししてみたいと思っていたんです!」

加賀「……はあ。それで、何を話すの」

翔鶴「えっと……あの、あっ!」

翔鶴「か、加賀さんは、甘い物は好きですか?」

加賀「ええ、嫌いではないわ」

翔鶴「よかった!」ニコ-!

翔鶴「私、お菓子づくりが好きで……これ、パウンドケーキ作ったんです! お近づきの印にどうぞ!」ニコニコ

加賀「えっ、ええ、ありがとう……。これ一個丸々……頂いていいのかしら」

翔鶴「もちろんです! 加賀さんのために作ったんですから!」

加賀(一人で食べるには多いわね……)

翔鶴「あっ、もしよろしければ今度感想を教えてくれれば嬉しいです! まだまだ修行中ですので!」

加賀「……」

加賀「ねえ、私も一つ聞きたいのだけれど」

翔鶴「? はい」

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:09:14.64 ID:BgcXyfkQ0
加賀「……その、お菓子づくりは、あなたにとっての生きがいなのかしら」

翔鶴「えっ。んーっと、そうですね……生きがい、とまで言うのはオーバーかも知れないのですが……」

翔鶴「……でも、きっと、お菓子づくりが出来なくなったら、すごく悲しいかなと思いますね」

加賀「……そう」

翔鶴「えっと、今のでちゃんと答えになりましたか?」

加賀「ええ、十分よ」

翔鶴「ふぅ、よかった」

加賀「あと、もう一つ聞きたいのだけれど。その、赤城はこの鎮守府にいるかしら」

翔鶴「赤城さんですか? ええ、いらっしゃいますよ。お部屋はここの斜め向かいの所にありますけど」

翔鶴「いまでしたらたぶん、弓道場にいらっしゃるかと」

加賀「……そう。ありがとうね。翔鶴」

翔鶴「いえいえ」

加賀「今日からよろしく。あと、ケーキごちそうさま」

翔鶴「はい! それでは」

バタンッ

加賀「……」

加賀「何もないところからパウンドケーキが生まれたわ……」

加賀「……弓道場、行ってみましょう」

加賀(赤城さん。『ここの赤城さん』はどんな方なんでしょう)

…………

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:10:05.23 ID:BgcXyfkQ0
弓道場

キ-…ヒュッ  パンッ!

赤城「……」

スッ

赤城「……ふぅ」

赤城「あら?」

加賀「……赤城さん」

赤城「あなたが今日着任した加賀さんね。提督から話は聞いてるわ」

加賀「はい。前線の鎮守府から転任しました」

赤城「よろしくお願いしますね、加賀さん」ニコッ

加賀「こたらこそ、よろしくお願いします」ペコリ

赤城「どうですか? この鎮守府は、面白い所でしょう? ふふっ」

加賀「……ええ、これまでの経験も殆ど役に立たなそうです」

赤城「そうですか。……ところで」クンクン

赤城「翔鶴さんのケーキですかぁ……美味しいんですよねぇ」

加賀「……食べますか?」

赤城「あらあら、なんだか催促してしまったみたいですみません」

加賀(してると思うのですが)

赤城「……私の部屋で食べましょうか。金剛さんから頂いた美味しい紅茶もありますし」

赤城「そこでお話、しましょう」ニコッ

加賀「……はい」

赤城「少し待っててください。着替えてきます」テクテクテク

加賀「……どこでもあまり変わらないわね。赤城さんは」

加賀「食いしん坊な所は」

…………

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:10:46.38 ID:BgcXyfkQ0
赤城の自室

パクッ モキュモキュ ゴクン
赤城「ふわぁ……、やっぱり練習後の甘い物は格別ですねぇ!」ピカー!

加賀「赤城さんが輝いている……」

赤城「それも翔鶴さんお手製が味わえるなんて、幸運ですぅ」モキュモキュ

加賀「……確かに美味しいですね。気分が高揚するのも頷けます」

赤城「そうですねぇ」モムモム ピカーッ

加賀「バナナの風味とクルミの食感……と、この香りは僅かにシナモンでしょうか」

赤城「おいひいですねぇ」モムモム

加賀「紅茶も、美味しいです」

赤城「おいしいケーキにおいしい紅茶……犯罪的です」

加賀「……ふぅ」ピカーッ

赤城「うふふ、加賀さんも食べることが好きなんですねぇ」

加賀「そうですね……補給は大切ですから」

赤城「こんな補給だったら私、いつでも大歓迎ですよ。加賀さん!」

加賀「え、ええ、そうですね」

加賀(「また貰ったら一緒に食べましょう!」という目だわ。明らかな要求と欲望の目……)

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:11:19.52 ID:BgcXyfkQ0
赤城「ふぅ……。それで、加賀さんは何が聞きたいんですか?」

加賀「え?」

赤城「着任してすぐに、わざわざ弓道場にまで来て……それこそ翔鶴さんにでも聞いたんですよね。私ならあそこにいるって」

加賀「……はい」

赤城「あんまり弓道場なんて使う艦娘はいませんからね」

加賀「えっと、他の空母の方は使わないんですか?」

赤城「空母の発艦訓練は大体訓練場か、演習場を使いますよ」

加賀「へぇ、そうなんで……」チラッ

加賀「……」

加賀「ああ……なるほど」

赤城「あら、わかりましたか?」

赤城「こほん」

赤城「えー、あちらに見えますのは『全日本弓道大会』成人の部、三位入賞の賞状でございます」

加賀「……」

赤城「えー、窓際に見えますのは『元日、近所の神社で流鏑馬の騎手を勤めた際に提督と撮った写真』でございます」

赤城「そしてあちらが……」

加賀「弓道、ですか」

赤城「……何がです?」

加賀「赤城さんは」

赤城「私は弓道じゃないですよ。赤城さんですよ?」

加賀「……」

赤城「……冗談ですよ?」

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:11:55.09 ID:BgcXyfkQ0
加賀「それで、赤城さんは弓道が『生きがい』なのかしら」

赤城「うーん、そうですねぇ。生きがい、というのも少し仰々しいですねぇ」

加賀「……でも、それは戦うことよりも大切なんですよね。その、赤城さんにとって」

赤城「そう、ですねぇ……」

赤城「……加賀さんは、何が大切なの?」

加賀「私は、ただ戦うだけです」

赤城「そう」ニコッ

赤城「……」

加賀「……」

赤城「……」

加賀「……あの」

赤城「私もね、加賀さんとたぶん同じ。他の鎮守府からここへ来て、当時は戦うことこそ全てだと思っていました」

赤城「艦娘は、戦いにこそ己あり。ってところですかね」

加賀「私と同じ、です」

赤城「ええ」ニコッ

赤城「でも、ここに……この鎮守府に来た理由はきっと、加賀さんとは違います」

加賀「それは、どういういことですか」

赤城「ふふっ……」

赤城「……不良品なんですよ、私」

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:12:41.18 ID:BgcXyfkQ0
加賀「そんな……。赤城さんは、私なんかよりも」

赤城「……それは、前の鎮守府にいた赤城さんですよね?」

加賀「それ、は」

赤城「加賀さん、これだけは覚えておいてください」

赤城「艦娘も十人十色、いろいろな方がいるんです。それは艦種だけではなく個性という部分で、ね」

加賀「……」

赤城「私は、確かに戦うことに存在意義を見いだしていました。ですが、それは理想、戦いたくても戦えない艦娘なんです。私」

加賀「意味がわかりません。私達には戦う術が備わっています。それに軍が兵器である私たちを使わないはずがない。そうですよね?」

加賀「弓道で、これだけ力が発揮できるんです。そんな、赤城さん……いえ、あなたが、戦えないなんて」

赤城「……私は攻撃することができないんです。敵に」

加賀「そんな」

赤城「いえ、それでは語弊がありますね」

赤城「生き物に攻撃することが、恐ろしいんです」

加賀「深海棲艦は敵です。それに、アレを生き物と言えるかどうか」

赤城「信じられないと思います」

赤城「でも、生まれてからずっとです。生き物と認識してしまうと、もう……」

赤城「手も足も……震えてしまって、頭も真っ白になって……。全く動けなくなってしまうんです」

加賀「それでは、あなたは本当に」

赤城「役立たず、ですよ」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:13:26.79 ID:BgcXyfkQ0
加賀「……」

赤城「……戦いこそ己の存在意義。なのに、戦うことができない。できることは一部の遠征のみです。こんな不良債権、置きたい鎮守府なんてありません」

加賀「……解体とか、考えなかったんですか?」

赤城「ふふっ、やっぱり加賀さんと私、考え方が似てるのかもしれませんね」

赤城「左遷されたとき、『なんでこんな自分を解体しないのか』『早く解体して欲しい』……そう思っていました」

赤城「戦いを求める心と、戦えない体……もうそのズレで、私の精神は参っていたんです」

加賀「では、今のあなたがあるのは……」

加賀「提督、ですか」

赤城「……はい」ニコッ

赤城「提督は、私のこの『ズレ』を個性だと仰ってくれました」

赤城「そして、どんなことがあろうと私を解体しないと」

赤城「……それに」チラッ

加賀「なるほど……それで弓道ですか」

赤城「はい」

赤城「あの方は、精神的にボロボロで、無気力だった私のために尽くしてくれました」

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:14:31.15 ID:BgcXyfkQ0
…………

提督『赤城、芸術系はどうだ!? なんだか惹かれるものなんか感じないか?』

赤城『……』

提督『そしたらゲームはどうだ! これだったら擬似的に戦うことだって』

赤城『……ごめんなさい』

提督『そっ、かぁ……まぁ、気長に探そう! お前の好きなこと』

赤城『……提督』

提督『赤城! スポーツだ! お前は運動神経はいいんだからスポーツだったらできるかもしれない!!』

赤城『スポーツ、ですか……?』

提督『おっ、良い反応だな。種類も沢山あるし、赤城がハマるのもあるかもしれない』

赤城『そう、でしょうか……』

提督『とりあえずやれるものからやっていこう。琴線に触れなくても、やってみることは無駄なことじゃない』

赤城『……はい』

赤城『てい、とく……』

提督『……凄いじゃないか、赤城』

赤城『これが、弓道ですか……』

提督『どうだ?』

赤城『わかり、ません』

赤城『でも……なんだかいい感じです』

提督『そうか……。よし! 鎮守府に弓道場を造るか』

赤城『えっ! そんな、私なんかのために。というか、まだ続けたいと思ったわけでは……』

提督『じゃあ、他のものにチャレンジすればいい。だが、弓道場は建てる』

赤城『えっ、ええっ!』

提督『これから来る娘の中にも弓道が好きな娘がいるかもしれないだろ。先行投資だよ先行投資!』

赤城『そ、それって……その弓道場って! 私も使っていいんですよね!?』

提督『ふぅん』ニヤニヤ

提督『ふっ、もちろんだよ』

赤城『……やった』

…………

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:16:07.47 ID:BgcXyfkQ0

赤城「弓道をやっている自分と、そんな私を楽しそうに見ている提督と……。なんだか不思議な、でも心地良い時間でした」

赤城「それにあれからずっと私は、弓道という拠り所を見つけてから生きるのが楽しいんです」

加賀「……そういう物なのでしょうか」

赤城「それは、分からない」

加賀「……」

赤城「でも私は、弓道をしている時間が好き、弓道をしているときの自分も好き、それに弓道に出会ってからの自分が好き……」

赤城「何もできないボンクラの人生を、かけがえのないものにしてくれたのは弓道と、提督なの」

加賀「……羨ましい、かもしれません」

赤城「そう?」

加賀「はい……。でも、今の私は『戦い』こそが生きがいです。その気持ちは今でも変わりません」

赤城「……ふふっ」

赤城「良いと思うわ。それでも」

赤城「だって、それは加賀さんだけの物だもの」

加賀「あの、あなたが当初持っていた『戦い』への気持ちは、どうなったのでしょうか」

赤城「んー……そうですねぇ」

加賀「……捨てる、のですか?」

赤城「……そんなことはないわ」

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:17:03.50 ID:BgcXyfkQ0
赤城「私だって、弓道の大会に出たいと思ったし、他の人と競いたいとも思った」

赤城「負けたくないとも思ったし、……三位で終わってしまった時は悔しいとも思ったわ」

赤城「私は『戦い』を諦めるつもりもない、その志を捨てるつもりも」

赤城「ただ『戦い』が生きる意味とは思わない」

赤城「私にとって弓道と生きる中で『戦い』があるの」

加賀「弓道と生きる中での『戦い』、ですか」

赤城「他者との戦い、自分との戦い……私は負けたくないわ」

赤城「私は、理想を抱きながらも海で戦えなかった自分に、負けない生き方をしたい」

赤城「私がどんなに艦娘として出来損ないでも、何もできない過去の自分よりも、人間として誇りを持った生き方をしていきたい」

赤城「そう、思っているわ」

加賀「……」

赤城「……ごめんなさいね。なんだか、熱くなってしまって……」

加賀「いえ……」

加賀「個人的には、あなたは良い生き方をしている、と思います」

赤城「な、なんだか恥ずかしいですけど……あ、ありがとうございます、加賀さん」

加賀「やはり、どんなに違っていても……赤城さんは、赤城さんです」

加賀「……前の鎮守府の赤城さんは、私より練度も高かったのですが」

赤城「あ、あはは……それは、許してくださいよ。加賀さん」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:17:39.16 ID:BgcXyfkQ0
加賀「……そろそろ部屋に戻って休むわ。貴重なお話、ありがとうございます」

赤城「いえ、いいんですよ。またいつでも来てください。部屋か弓道場にいつもいますから……えっと遠征中以外」

加賀「……ふふっ、わかりました。赤城さん」

赤城「ああっ、老婆心ながら一言アドバイスを」

加賀「はい?」

赤城「……無理して見つけなくてもいいんですよ。『戦い』が生きがいでも、それは加賀さんが決めることです。私や提督が決めることではありません」

赤城「たとえあなたがこの鎮守府を去ってしまうことになったとしても、それが間違っているわけではありません」

赤城「加賀さんは私とは違うんですから。……ここでしか生きていけない訳ではないんです」

赤城「あなたは私の生き方を羨ましいと言ってくれましたが、過去の私にとっては加賀さんのほうが羨ましかったと思います」

赤城「私は、加賀さんが納得できる選択ができることを願ってます……」ペコッ

加賀「……ありがとうございます、赤城さん」

ガチャ…
バタン

赤城「私ことを羨ましいって……」

赤城「加賀さん、あなたは……」

…………

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:18:16.83 ID:BgcXyfkQ0
加賀の自室

加賀「赤城さん……。赤城さんに頼ってよかった。やはり、彼女はいつも的確なアドバイスをくれる」

加賀「……いえ、いくら同じ『赤城』でも、重ねてしまうのは良くないわ」

加賀「ここの赤城さんも優しくてよかった」

ポスッ

加賀「……ベッド、やけに柔らかい気がする」

加賀(なんでかしら。ベッドの感触なんて、これまで一度も考えたことなんてなかったのに……)

加賀「何か、変わっているのかしら。私も」

……
赤城『……無理して見つけなくてもいいんですよ。『戦い』が生きがいでも、それは加賀さんが決めることです。私や提督が決めることではありません』

赤城『私は、加賀さんが納得できる選択ができることを願ってます……』
……

加賀「……私は、艦娘です。艦娘は、戦うために生まれた。それは覆しがたい事実であり、義務なんです」ボソッ

加賀「……今日は色々なことがありすぎたわ……少し、休んで……ふわぁ」

加賀「……スー…スー…」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:18:46.49 ID:BgcXyfkQ0
…………

次の日

大淀「昨日は案内できませんでしたが、ここが談話室になります」

加賀「談話室……一体、何のための場所なの?」

大淀「あれ? 他の鎮守府にはないんですか?」

加賀「たぶん。前の鎮守府には無かったか、ほとんど利用されなかったか、どちらかね」

大淀「へぇ、そうなんですか……。いい部屋だと思うんですけど」

加賀「それで、何をする場所なの?」

大淀「あっ、失礼しました」

大淀「そうですね、具体的な用途は説明し辛いのですが……あっ」

龍驤「おー、大淀さんに……えっと、だれや?」

大淀「昨日来た加賀さんです」

龍驤「ほー、加賀やんかー……。またけったいな体つきしてんなぁ」

加賀「けったい?」

龍驤「あーええのええの、気にせんといて」テクテク

龍驤「あっ、大淀さん、テレビみてもええ?」

大淀「大丈夫ですよ」

龍驤「ほな、遠慮なく」ピッ

大淀「龍驤さん、いま加賀さんに談話室の説明をしていたんですけど、その、なんて説明すれば良いか分からなくて……」

龍驤「えっ、あー、そなんや」

龍驤「えーっと、加賀やん。談話室っちゅーのは、謀反以外ならなんでもしてもええっちゅー部屋や」

龍驤「これで分かるやろ」

大淀「少し大雑把過ぎると思いますが」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:19:33.83 ID:BgcXyfkQ0
加賀「……昨日、提督も同じことを言ってたわ。『謀反以外なら~』と」

龍驤「あら、ウチが提督のネタパクったのバレてしもた」

大淀「まあ、えーっと、複数人でお話ししたり、テレビを見たりする場所、という認識でいいですかね」

加賀「……いつも誰かがいる場所って事ね」

大淀「まあ、そうですね。特にする事のない方は大体ここにいるという感じです」

加賀(いつも誰かが暇している鎮守府というのもどうかと思うけどね)

龍驤「そんな難しい顔すなや」

加賀「……えっ?」

龍驤「この鎮守府はよくも悪くも特殊や。それに艦娘同士のつながりも強い、って趣味仲間みたいなものも多いけどな」

龍驤「そういうのの交流の場としてここがあるんよ」

大淀「……確かに、そうですね」

龍驤「ここで『ああ、あいつあんな趣味があるんやなー』とか『あいつら仲ええんやー』とか、発見もあってつながりも増えてくって感じやな」

加賀「……作戦会議とかにも使うのかしら」

龍驤「ぷっ、加賀やん真面目すぎ」

龍驤「そんなん会議室でも使ったらええて。ここでの会話なんて世間話みたいなもんばっかや」

龍驤「……ま、そういう話をする人がおってもええと思うで。なに話してもええんやからな」

加賀「……そう」

龍驤「……ここでみーんなが仲良くする姿を見るのが、うちの生きがいや」

加賀「……」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:20:49.65 ID:BgcXyfkQ0
大淀「確かに、龍驤さんは大体ここにいらっしゃいますね。いっそのこと談話室の責任者になるのはどうでしょう」

龍驤「アホ。こういうのは責任が伴わないのがええんや」

大淀「はあ、そういうものですか」

龍驤「そういうもんや」

龍驤「うちはみんなと同じ目線で、みんなと一緒に楽しみたいんや」

加賀「……龍驤、あなたは艦娘として何をしているの?」

龍驤「おっ? なんやなんや、喧嘩腰やなぁ」

加賀「艦娘なのに平和ボケして、本分を忘れているわけではないわよね」

龍驤「平和ボケって……随分な言い草やな」

加賀「でもそうでしょう? あなたは何のために存在しているというの? 私から見ると、ろくな生きがいもなくフラフラと無責任な生活を送っているように見えるのだけれど」

龍驤「うっ……本当のことやから言い返せへん」

加賀「赤城さんは生きがいを見つけて、今も自分を高め続けているわ」

加賀「あのような方のためこの鎮守府があるのだと、思っていたのだけれど」

龍驤「まー、せやな」

加賀「……ねえ、あなたは何をしているの?」

龍驤「……」

大淀「オロオロ」

大淀「あ、あの」オロオロ

大淀「か、加賀さん」ヒソヒソ

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:21:39.52 ID:BgcXyfkQ0
加賀「何かしら、私はいま龍驤と」

大淀「その、龍驤さんはなんですけど……」ヒソヒソ

加賀「ただの惰性で鎮守府にいるとしか思えないわ」

大淀「あの、何もしていないわけではなくてですね」ヒソヒソ

加賀「……はっきり言ったらどうなの?」

大淀「す、すみません……。それで加賀さん、龍驤さんはですね」ヒソヒソ

加賀「ええ」

大淀「提督と一緒に、一からこの鎮守府を支えてくれている方なんです」ヒソヒソ

大淀「それに他の鎮守府から艦娘をスカウトしているのも、主に龍驤さんです」

加賀「なるほど、つまり」

加賀「えっ」ピタッ

大淀「この鎮守府の艦娘事情が成り立っているのは龍驤さんのお力も大きいんです」ヒソヒソ

龍驤「……あー、なんか水戸黄門が正体を明かした時みたいやな、たははは……」

加賀「……えっと」

龍驤「はは……はぁ」

龍驤「まあ、そういうこっちゃ、加賀やん」

龍驤「加賀やんの言うとこの、ウチの『生きがい』っちゅーのは、まあ赤城みたいなどーしよもなくなってしもた艦娘をここに連れてきてやることかな」

加賀「そ、そう……」

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:22:42.42 ID:BgcXyfkQ0
龍驤「どや、加賀やんの思う生きがいとして立派なもんやろ?」

加賀「……ええ。うん……十分」

加賀「ごめんなさい。何も聞かずに責めてしまって」

龍驤「あー、ええんやええんや。ウチかて加賀やんと同じ艦娘や。そんな畏まらんといてぇな」

加賀「……そうね」

龍驤「切り替えはやっ!」

龍驤「もうちょい遠慮とかあってもええと思うんやけどなぁ」ボソボソ

加賀「ねえ、龍驤」

龍驤「あん? なんや?」

加賀「私は、『戦い』こそが艦娘の存在意義だと思っているわ。それに対して、あなたはどう思うかしら」

龍驤「知るかっ!」

加賀「えっ」

龍驤「そんな存在意義とか、そんなん個人の勝手や。ウチが口出しすることやない」

龍驤「別に『戦い』こそが生きがいでも、それはええと思うわ」

加賀「そう、ですか」

龍驤「……でも、一つ言っとくけどな。ウチ自身はそんなこと全く思ってへんよ」

龍驤「艦娘だって、やりたいことをやってええと思う。まあウチらの場合は最初っからやらなあかん仕事は決まってるけどな」

龍驤「それでも人間と同じ。仕事とプライベートは分けたらええんや」

龍驤「仕事人間なんて性に合わへんから、ウチはプライベートの方を大切にしとる。それだけ」

加賀「なるほど、私の考えには否定的なのね」

龍驤「加賀やんを否定するわけやないで。ウチの信条が加賀やんの考えと逆ってだけや」

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:23:12.52 ID:BgcXyfkQ0
加賀「龍驤、あなたはハッキリしてるのね」

龍驤「……別に、アホやから深く考えられないだけや」

龍驤「うちの考え方って、艦娘として生まれた時から変わってたみたいで」

龍驤「いつの間にか他の艦娘からハブにされてたところを、提督に引っ張り出されただけや」

龍驤「一から支えたいうても、ウチはただ最初からここにいたってだけ……」

加賀「そうかもしれないわね」

龍驤「慰めるくらいしてや、加賀やん」

加賀「ただ、あなたみたいに考え方が良くも悪くもブレないのは、いいと思うわ」

龍驤「……そうかな」

加賀「ええ」

龍驤「……って、なに新入りに励まされてんねん!!」

大淀「龍驤さん!?」

龍驤「なんか知らんけど腹立ってきたわ。ほれ、シッシッシ、これからウチのプライベートタイムや、邪魔せんといて」

大淀「えっと、行きましょうか、加賀さん」

加賀「ええ」

龍驤「あっ、加賀やん!」

加賀「……なにかしら」

龍驤「あんたのその仏頂面、この鎮守府にいる間に治るとええなぁ!」

加賀「……余計なお世話」

龍驤「アホ! ここはそんな余計なお世話でできてる鎮守府や! 逃げられると思わんようにな」

加賀「……ふふ」

大淀「ふふっ」ニコッ

龍驤「せいぜい楽しむことやな、ここの生活を」

加賀「……そうね」

…………

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:23:52.72 ID:BgcXyfkQ0
…………

数ヶ月後

加賀「……提督、今度の出撃の事ですけど」

提督「ん? ああ」

加賀「ここの方針として、出撃の目的は迎撃が主になっています」

加賀「しかし、それではキリがありません。少し無理をしてでも先に進めた方が」

提督「……」

加賀「? 提督?」

提督「……いや、ここに来てからしばらく経つけど、加賀さんは変わんないねぇ」

加賀「……そうかしら、それなりにここの鎮守府にも慣れたと思うのだけど」

提督「数ヶ月間、毎度毎度出撃について話をしてくる艦娘なんて、ここじゃ加賀さんだけだしなぁ」

加賀「ここの鎮守府が異常なのよ」

加賀「それに、私にとって出撃し、敵を倒すことが生きがいだから」

提督「……そう言って、他の何にもチャレンジしないじゃない」

加賀「疑いない生きがいが『戦う』ということなの」

提督「……ふぅん」

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:24:21.33 ID:BgcXyfkQ0
加賀(私は、逃げたのかもしれない)

加賀(自分が変わってしまう可能性から)

加賀(新たな生きがいを見つけることから)

加賀(何も考えずに戦ってさえいれば、私は前にいた前線の鎮守府へ戻れる)

加賀(あそこへ戻れば再び自分は戦うことこそが必要になる)

加賀(私を私たらしめるのは『戦うこと』)

加賀(戦い、戦果を挙げることが私の生きがいなのだ)

加賀(私の中心は戦うことでなくてはならない)

加賀(そうしないと、私は変わらなくてはいけなくなる)

加賀(変わることは、怖い)

…………

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:39:43.11 ID:BgcXyfkQ0
弓道場

赤城「加賀さん、肩の力を抜いて、矢と的だけに集中してください」

赤城「精神を落ち着かせて、自分の中で調和を保つんです」

加賀(赤城さんの指導はやや抽象的です)

赤城「心の中の海を凪の状態にするんです。そうすれば自ずと無駄な力が抜けます」

赤城「周囲を無視するんです。世界を自分と的以外消し去るつもりで」

赤城「息を軽く吸って……緊張しないように」

ヒュッ パンッ

赤城「わぁ、やっぱり上手です。加賀さん」

加賀「赤城さんの指導のおかげですよ」

加賀(嘘です。なんとなく発艦するときと同じ感覚でやりました)

赤城「……加賀さん嘘吐かなくていいんですよ」

加賀「えっ」

赤城「この前、第六駆逐艦隊の子達にも教えたのですけど……」

赤城「指導が抽象的すぎて分からない、と……」

加賀「……はぁ」

加賀「仕方がないですよ。赤城さんの弓道の腕は先天的なものですから」

赤城「ううっ、すみません。役立たずで」

加賀「……」

加賀(赤城さんの弓道のセンスは物凄い。一度訓練場で発艦訓練をしたときは他を抜いて圧倒的だった)

加賀(出撃にも演習にも生かせないのですが)

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:41:37.39 ID:BgcXyfkQ0
加賀「赤城さんはこれからどうしますか」

赤城「んーっと、そうですね……少し練習していこうと思っていたのですけど」

加賀「鳳翔さんの所に行きませんか?」

赤城「あっ、行きます!」

加賀「じゃあ、着替えてから行きましょう」

赤城「はい!」

…………

食堂

鳳翔「それで、どうですか、調子の方は」

加賀「……相変わらずです」

鳳翔「そうですか」

加賀(鳳翔さんの生きがいは料理らしい。彼女はここの鎮守府で建造され、そのままここで働いている)

加賀「食堂に来て、鳳翔さんの料理が出てくると安心します」

鳳翔「あら、ありがとうございます」

赤城「ここには優秀な調理師がいてくれてとっても嬉しいです!」モグモグ

鳳翔「そうだ、また新しい料理を作ってみたので、食べてみてくれませんか?」

加賀「……さすがです」

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 13:42:54.98 ID:BgcXyfkQ0
赤城「この前、レシピ本出版してましたよね?」

鳳翔「そうなんですが……こう、インスピレーションが止まらなくて……うふふ」

加賀「……」

赤城「凄いですねぇ。私は食べることしかできないですが、その分野に関してなら鳳翔さんのお力になりたいと常々思ってます」フンスッ

加賀「……やっぱり食いしん坊ですね」

鳳翔「クスクス、また作りすぎてしまったときは呼びますからね」

赤城「まかせてください!」

加賀(『また』?)

鳳翔「ふんふんふーん♪」トントントントン

加賀「……鳳翔さんの手際を見ていると、いつも感心してしまいます」

鳳翔「あら、ありがとうございます。でも、慣れれば加賀さんだってこれくらい出来るようになると思うわ」

加賀「……いえ、私も食べるの専門なので」

鳳翔「あらあら、それは残念」ニコニコ

加賀「……鳳翔さんは出撃するときとか、何を考えていますか?」

鳳翔「そうですね……今晩の食事はどうしようとか、ふと新しいレシピを思いついたりとか……ですかね」

加賀「ふふっ、どうなんでしょうねそれは」

鳳翔「そうですね、戦っているときは大体集中しますけど、それ以外ははもっぱらそんな感じです。不真面目ですよね」クスクス

赤城「……」モグモグ

加賀「あっ、ごめんなさい」

赤城「いえいえ、別にもう気にしてませんから」

赤城「前はそういうお話は苦手でしたけど、今は全く平気ですので」ニコッ

加賀「そう」ニコッ

鳳翔「ふふっ、仲良しですね。お二人とも」

赤城「勿論ですよ!」

加賀「あ、赤城さん……」

鳳翔「羨ましいです」

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